『漁港の肉子ちゃん』の芝居・身体性について

冒頭で描かれた肉子ちゃん、波乱万丈の半生。そういった物語とは打って変わり、本編で描かれたのは徹底した生活風景とその中で巻き起こる感情の起伏、そして関係の変化でした。特に多かったのは船内での母子生活。寝転んだり、料理をしたり、食べたり、トイ…

『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』6話の芝居、家族について

全編に渡り芝居づけや表情などの作画、演出が素晴らしかった本話。観ていて本当に良いなと思えるシーン・カットばかりだったのですが、その中でも特に気になったものについてふれていきます。まずはこのカット。最初の手の芝居がとても好きで、何度も繰り返…

最近観たアニメの気になったこととか5

*1 『Vivy -Fluorite Eye’s Song-』1話。AIであるヴィヴィと人との違いを感じさせない芝居。序盤のシーンではありますが、ここでこの芝居が描かれる意味って自分の中では凄く大きかったなと思います。人の感情と呼べるものに対しまだ鈍い反応をみせる彼女で…

最近観たアニメの気になったこととか4

『やくならマグカップも』3話。全体的にシリアスな空気感の中で話が進んでいく回でしたが、こういったロングショットで登場人物たちの中に流れている時間を共有させてくれたのが凄く良いな、と感じました。奥から手前に歩いてくる二人、他愛もない会話。緊張…

『ワンダーエッグ・プライオリティ』3話の演出について

3話のAパート、個人的に特に印象に残っていたのがリカの入浴シーンで描かれた蛇口から流れ出る水*1の描写でした。2カットに渡り執拗に描かれていたうえ、いずれもナメ構図を使っていた点からも、少なからずここにスポットを当てていたことがわかります。ポー…

アニメにおけるFIX・長回しの芝居について

先日『のんのんびより のんすとっぷ』1話のアバンを観返していて、この間の持たせ方とか雰囲気の出し方って、この作品の特別な色にすらなってるよなとか、そんなことを考えていたんですが、改めて1期や2期を振り返っても記憶にあるのはやはり同様のFIX(カメ…

『約束のネバーランド season2』のEDについて

本編の映像的な暗さ、暗澹たるストーリーラインを打ち消すよう描かれた今回のエンディング。壁の外へ希望を見出したエマたちと同様、格子の向こうに光をみるファーストカットから紡がれていくカットの多くは、そんな希望的観測に満ち溢れた質感を携えていま…

話数単位で選ぶ、2020年TVアニメ10選

今年のアニメを振り返る意味も兼ね、今回もこちらの企画に参加させて頂きます。 ・2020年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。 ・1作品につき上限1話。 ・順位は付けない。 集計ブログ様:ANINADO-「話数単位で選ぶ、2020年T…

テレビアニメED10選 2020

今年もこの企画に参加させて頂きます。放映季順、他順不同、他意はありません。敬称略含む。視聴した作品からのみの選出で、選出基準はいつもと同様 「とにかく好きなED」 です。 恋する小惑星 / 夜空 アンニュイな表情、些細な仕草。そのすべてが感傷的で少女…

テレビアニメOP10選 2020

今年もこの企画に参加させて頂きます。放映季順、他順不同、他意はありません。敬称略含む。視聴した作品からのみの選出で、選出基準はいつもと同様 「とにかく好きなOP」 です。 恋する小惑星 / 歩いていこう! それぞれの道、目標、夢。そういったものを幾重…

最近観たアニメの気になったこととか3

*1 もはや最近とは、という感じではありますが前回の記事から今までの間に観たアニメについて。まずは『虹ヶ咲学園』6話。侑の言葉に璃奈が反応したカット。「璃奈ちゃんのライブが観たい」「今はまだ出来ないことがあってもいいんじゃない?」と言われたこ…

『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』5話の演出について

あまりに印象的であり、引き込まれてしまった影中のファーストカットからの導入。振り返れば「誰かの心をぽかぽかさせることの出来るスクールアイドルになりたい」と日本にやってきたエマの心情が鮮明に映し出されたシーンでした。それも "ぽかぽか"という言…

『呪いのワンピース』と『響け!ユーフォニアム』8話について

一度着てしまうとその身に不幸をもたらすワンピース。そんな代物に心奪われてしまう少女たちの群像劇を描いた作品が『呪いのワンピース』でした。今年になってようやく配信が開始された作品であり、監督・作画監督を木上益治さんが担当されていることを知っ…

最近観たアニメの気になったこととか2

*1 前回の続き。『薄明の翼』7話。1話のリフレイン的な導入からさらにその先へ進んでいくようなイメージショットの数々。その中で、一番印象に残ったのがこのカットでした。これまで『薄明の翼』では光と影の境を穿つようなレイアウト、ライティングが強く生…

最近観たアニメの気になったこととか1

『彼女、お借りします』3話。すごく良い表情芝居とか感情がダイレクトに出る感じがとても好きな作品なんですが、3話のこの表情が本編を通して一番好きでした。主人公の和也って原作だと話が進むにつれこういう表情をよくするようになるんですが、それが垣間…

『薄明の翼』6話の演出について

月夜のファーストカットで始まった今回の話でしたが、オニオンが月を見上げるカットほどから、今話では意図的に月を前景で隠しているような印象を受けました。怪しさを醸し出す雲隠れから一転、手前の木の葉で月を覆ってしまうレイアウトに対しては、かなり…

『イエスタデイをうたって』3話ラストシーンの演出について

雨降りしきる中の喧騒から一転、少し落ち着きを取り戻した晴の心情を汲み取ったかのよう快晴から始まるラストシーンがとても情緒的に映りました。特に二輪車に跨り走る彼女の背を捉えたカットは素晴らしく、空へ抜けていく画の良さには強く胸を打たれました…

ブログ10年目

自分から新番を調べたり録画したり。そうやって能動的にアニメを観始めてから既に約10年が経っていたわけですが、先日調べたところちょうど今日がアニメ感想ブログを始めてから10年目になるそうです。なんとなく他人事なのは余りそういう実感がないからなん…

『イエスタデイをうたって』2話の境界、演出について

遠望する視線、伏し目がちな表情、逆光から浮かぶその姿へ視線を誘導するレイアウト。陸生から告白された前回から一転、それぞれのその後の生活を描くにあたり、榀子に関しては非常に情感の強いカットが冒頭から描かれ続けていました。同僚や生徒たちと接す…

新海誠作品の記憶と、アルバム

昨日公開された新海誠監督のインタビュー動画。Macの広告動画として投稿されたものではありますが、その中で語られた新海監督の作品に寄せる想いなどはとても貴重なものとなっていました。 特に冒頭で語られた「自分で今好きだった風景が変わってしまう前に…

青空の似合う貴方へ――『22/7』7話の演出について

これまでの話とは違い、フィルムの質感が一変したのはジュンが建物の裏手に入ったシーンからでした。影中にスッと入っていく彼女の姿と、それを暗喩的に捉えるレイアウトはまだ見ぬ彼女の心根にそっと触れるような感触を与えてくれました。しかし、彼女はい…

『電脳天使ジブリール』OPについて

空中幼彩さん、渡辺明夫さん、URAさん、そしてUさんの歌声。彼らが織りなす化学反応と言えばもはや振り返るほどに懐かしい約10年前の映像が思い出されます。それが『魔界天使ジブリ―ル4』OP。女の子らしいまるっとしたデザインと、可愛いらしく大胆な動き、…

『恋する小惑星』のEDについて

感傷が染みわたるような映像と楽曲。物想いに耽る少女たちの表情を一枚一枚切り取り、じっくりと見せていく構成には情感がたっぷりと乗っていました。1話を観てもみらとあおの関係性が物語の軸になっているのは間違いないのだと思いますが、その物語の中で出…

話数単位で選ぶ、2019年TVアニメ10選

今年のアニメを振り返る意味も兼ね、今回もこちらの企画に参加させて頂きます。 ・2019年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。 ・1作品につき上限1話。 ・順位は付けない。 集計ブログ様:「話数単位で選ぶ、2019年TVアニメ1…

テレビアニメED10選 2019

今年もこの企画に参加させて頂きます。放映季順、他順不同、他意はありません。敬称略含む。視聴した作品からのみの選出で、選出基準はいつもと同様 「とにかく好きなED」 です。 ぱすてるメモリーズ / Sparkle☆Power 遊び心のあるトランジションにふくよかな…

テレビアニメOP10選 2019

今年もこの企画に参加させて頂きます。放映季順、他順不同、他意はありません。敬称略含む。視聴した作品からのみの選出で、選出基準はいつもと同様 「とにかく好きなOP」 です。 私に天使が舞い降りた! / 気ままな天使たち 観ているとこちらまで踊りたくなっ…

『空の青さを知る人よ』の演出と青さについて

長井龍雪監督作品におけるパキっとした影づけ、目にかかる影、影中の表現。それは往年の作品から続く “長井監督らしさ” でありながら、その中で描き続けてきた物語の象徴としてもその存在を印象づけてきました。鬱屈した感情、心に溜まるもの。それらをライ…

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』10話の演出について

振り返れば強烈なファーストカットだったと思わずにはいられない枯れ木のイメージショット。以降、度々インサートされる落ち葉のモチーフは小説『最後の一葉』を連想させ、余命幾ばくもない母親の現状を静かに捉えていました。なにより、落ち葉でおままごと…

『22/7「あの日の彼女たち」』day01 滝川みうの演出、芝居について

先日、久しぶりに『あの日の彼女たち』を観返したわけですが、映像から溢れ、受け取れるものの多さに改めて感動させられました。環境音を使いBGMをなくすことで、そのシーンを特定の感情へ誘い込むことをしない。けれど、BGMがないからこそ受け手へ緊張感が…

走り続けた貴方達へ贈る、祝福のダイアローグ――『天気の子』を観て

先日公開された新海誠監督最新作、『天気の子』。これまで新海監督が手掛けられてきた作品群と違っていたのは、まるでどこまでも走り抜けていくような迷いのなさでした。想いの変遷、機微、物語の転換ーー。その都度で描かれた雨粒の音、波紋の違いが差し示…