『ご注文はうさぎですか?』の手の表情が素晴らしい

この作品に対する第一印象はとにかく手先の描写への気配りと、その素晴らしさだったように記憶しています。特に素晴らしかった1話以降もそれらの描写が荒削りになっていくことなどなく、終始この作品はそういった指先、手先の表現と表情にとても拘っていたように感じられます。またそういった繊細な描写について「率直に考えれば指を見せたいってことなんだけど、もうちょっと大きな意図もありそうな気もする。まだ言語化できないけど。まぁそれはそれとして、きれいな指はいいですね」*1と纏められている方がいて、強く共感したこともありました。

1話に関しては、特にこういったカットに拘りが強く宿っていたなと思います。“少女を可愛く描く”ということを指先からきっちり再現していこうという気概が感じられてくるようで、つい触れてしまいたいと思うような可愛らしさと美しさがあります。爪の付け根は色トレスで、こちらもアクセントとしては可愛さがます作画。特に左のカットでは爪半月(付け根の白いとこ)の再現までしている上、爪先の塩梅までとても綺麗に描いています。コーヒーショップの店員という役割柄からしても、この清潔感はプラスαな表現として、よりこの作品の世界観の構築に役立っていると思います。


正直、こういった身体的な細部の表現にはデフォルメとリアル度合いの微妙な境界が存在すると思うのですが、それをこうも巧く捌いてくると感嘆の声しか出てきません。引いたカットとアップのカットではその描き方も変わってくるわけですが、どの程度引いて映した場合にはこの程度のデフォルメで、またアップで映した場合にはこのぐらい繊細な描き分けでと、もしかすればそんな作画の方向性をスタッフの方々も共有しているのかも知れません。

加えて、爪に色を入れるため描くことの出来るハイライト。そのちょっとした手先・指先の表情の付加が与える印象はやはり段違いで、コーヒー牛乳の蓋を押し込むシーンのアップ*2からは 「これぞ、ごちうさだ」と膝を叩く思いでした。


また手は温かみの象徴でもあります。誰かの頬へと手が添えられた時、誰かの頭を手で撫でた時、そして誰かの手を誰かの手が掴んだ時。そこには必然と優しさや温もりが宿り、その手先の動きや表情の細やかさ次第ではそういった感覚って何倍にも膨れ上がるものだと思います。だからこそ手先や指先に徹底した拘りを込めている作品を観ると、それだけで強い良さを感じてしまいます。なんとかは細部に宿る、なんて言葉もありますが、それこそ細部に何かを宿した作品はそれそのものが作品全体の雰囲気をも良くしてしまうことだってあるのだなと、改めてこの作品に気づかされたような気がしています。可愛い女の子たちの掛け合いと仕草が可愛い『ご注文はうさぎですか?』。コメディなやり取りや間の遣い方も素晴らしく、毎回毎回が凄く丁寧に作られている印象ですが、その礎も彼女たちの手先を見れば納得のはず。手を握りたくなる(身を委ねたくなる)アニメだなと思います。素敵です。