『Just Because!』8話のリアル度合い

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目を見張ったのはモノレール内でのワンシーン。カメラは固定で被写体を動かすため前景をスライドさせたり、距離感を出したり、車内のパーツが車体の傾きに合わせ動いたりととても細かいことをやっているように見えますが、それに合わせ三人の身体も若干揺らしていたあたりには特にこの作品の強い拘りが滲み出ていたように感じました。おそらくこの動かし方はLive2Dだと思うのですが、通常枠のTVアニメでこういった使い方は余り観たことがなかったので驚きました。

 

生活の中にある動きや、感情的すぎない表情の変化にこれまで拘ってきたこの作品らしい動きのつけ方で、 こういったところでも日常的な風景を映し出そうとするのはさすがです。実写感の強い背景をベースにフル・ロングショットと実在感を持たせるレイアウトを要所で活かしながら、生活に寄り添った動きをつけよりリアリティの度合いを上げていく。そういった本作のスタンスはこのカットからも強く感じ取れるのではと思います。

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またそういったカットは他にも散見されました。以前から全身を映しての歩き作画が多かった本作ですが、今回の話でも見ることができました。特にこの二つのカットは間や映し方が良くて、こういうカットの存在が本作の生っぽさを支えているのだなと改めて感じました。

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こういったロングショットも良いです。撮影による質感や、派手めな色味を持たないのも相まっていますが、風景にとけ込んでいます。この実在感がこの作品を観ていて一番良いなと感じるポイントです。共にアバン、Bパート初めと導入部分のカットですが、こういうショットをすっと隙間に入れてくるのが巧いです。劇伴との兼ね合い、間の持たせ方、どこで間を作るのか。時間の省略や場面をスキップするようなカッティングは出来るだけ避ける。そういったことの積み重ねがまた一層、この作品のリアリティの度合いを引き上げているのだと思います。

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表情に関しても同様です。こういうドキッとするような影のつけ方が作品の雰囲気にマッチしていていいなと思います。原案である比村さんの表情に関する描き方は二次元的な風合いが強くそこまで立体的ではない絵柄。それが可愛らしく味だと思ってはいるのですが、この作風ではそれだと少し画面からは浮いてしまうのかも知れません。だから時折り影を入れ立体的にする。鼻や耳、頭部の立体感を出すことで、また少し作品世界に現実感を足す。それはこれまでのレイアウトや景観と被写体の合わせ方、間や芝居の描き方などと同じように、すべては本作のリアルさの度合いを引き上げるための工夫であり、拘りなのでしょう。そういった一つ一つのセクションにおける拘りが『Just Because!』の面白さとこの質感をつくり上げているのだと改めて思えた話でした。