桜庭ローラというアイドルの像と轍(かたちとわだち)、『アイカツスターズ!』86話について

『涙の数だけ』。このサブタイトルが示していた通り今回もローラにとっては厳しい結果となったアイドルフェス。決して順風満帆とは言えない彼女のアイカツ人生には辛く険しい道のりも多く、ここぞという場面で勝者の後塵を喫してきたその軌跡が度々涙に濡れてしまうことは少なくありませんでした。

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もちろん元来、彼女は強い人なんです。「面白いじゃない!」なんて言葉を発破に気持ちを上げることのできる人柄や熱意もありますし、これまでと同じ様に今回だって最終トーナメントに残るため勝負を賭けていたわけです。けれど計り知れない壁が相手となれば怯んでしまうのも仕方がなく、エルザがフェスに参加することを知るや否や彼女の熱とそれを捉えていた画面はすっと輝きを失ってしまったようでした。それも熱意が失われていくが如くローラの高揚を映し出していた光は消え、彼女に当てられていたスポットライトはその所在をも隠してしまった。迷いや、惑い。「なんでまた私が」。そんな思いすら感じさせる表情も垣間見れ、もはや「またか」という思いが去来してしまうのは仕方のないことだったのでしょう。

 

またローラは負けるのか。またローラが辛い思いをしなければいけないのか。そんな鬱屈とした感情がシーンを覆い、彼女の行く末を分からなくさせてしまう。たったワンシーンではありますが、それほどまでに真昼がローラにエルザの参加を伝えた際の空気感には残酷でいて、とても冷たい印象があったのです。

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でも、先程も言ったように彼女は本当に強い人なんです。精一杯悔しがれて、精一杯足掻くことだって出来る。そんな弱さを跳ね除ける強さを彼女は持っているんです。だからこそ、時折り悩み立ち止まることはあっても、彼女は今の自分になにが必要なのかということに気づくことが出来る。

 

今回の話で言えばそれは「逃げない」ということであり、「弱い自分に勝つ」ということでした。そしてそこに辿り着くまで彼女はがむしゃらに走り続けた。「負けたくない」ということが原動力ではあったけれど、それが出会いに繋がり、共感に繋がり、気づきにまで繋がった。なにより、それはローラがあの日、あの時、あの瞬間に走ることを止めない選択を取ったからこその結果に他ならなかったはずです。誰かの言葉を介して手に入れた “自分自身に負けないように” という気づき”ではあったけれど、それは他でもない彼女だから手に入れることのできた応えであり目標そのもの。まただからこそ、そんな軌跡の途中に輝きは再度点在していたのでしょう。失われたはずの陽の光、熱意が再燃していくように逆光で彩られる彼女たちの姿はまさに彼女の目指すべき光とその灯(ともしび)を象徴していたように思います。

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そしてその光は “自分自身に負けなかった” 彼女への祝福へとやがて姿を変え、再びアイドルとして立つ桜庭ローラを照らしてくれました。ステージで正々堂々とぶつかり輝いた彼女の元へ送られたスポットライト。悔しいと泣ける心をまるで美しいと形容するように背を照らす光、逆光、透過光。精一杯足掻くことも、精一杯泣けることも強さなのだと語るように。そしてこれこそが桜庭ローラというアイドルの像(かたち) なのだと、その全てを映し込むように。

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また、そんな彼女の姿勢やアイドルとしての強さを好きだと言ってくれる人がいる。励まされていると語ってくれる人が居る。それは紛れもなく、ローラ自身が歩んできた道のりとアイドル活動の賜物に他なりません。だから彼女をまた応援したいと思えるし、こんなにも桜庭ローラというアイドルのことを好きになれる。ゆめがローラを傍で支え続けたのもおそらくはそういうことなのだと思いますし、なによりそれは、彼女のアイドルとして辿ってきた軌跡が私たちファンの心に轍(わだち)となって残っている、ということでもあるのだと思います。弱さも強さも、全部含めて。

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そして、最後にローラはこう言ってくれました。「でも、これが最後じゃない。まだまだもっと先がある。私がアイドルである限り」。その横顔はまるで綾乃さんのように輝いていて、先を見据えていて、真っ直ぐ前を見つめていました。私もローラがステージを降りるまではずっとその姿を見届けていたいなと、そう改めて思えましたし、今後の物語でもまだまだアイドル『桜庭ローラ』に轍を残してもらえるんだと思えたことに強い嬉しさを感じられた話だったと思います。

 

演出は安藤尚也さん。62話といい、ローラのキーエピソードを続けて担当して下さったことに感謝したいです。光と陰、レイアウト。本当に素晴らしい演出だったと思います。あと『Miracle Force Magic』は本当に良い楽曲ですね。ローラが歌っていることも含め、大好きです。

TVアニメ/データカードダス『アイカツスターズ!』挿入歌シングル1「ハルコレ」

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