『少女終末旅行』5話の音と演出について

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ファーストカットで描かれた波紋、そして落ちる水滴。原作が好きなことと、今回のサブタイトルに『雨音』が含まれていたことから、このカットが演出的な伏線になっているのだろうと思えたことは幸運でした。音響への拘りもさることながらイメージとしてこういうカットを入れてくれたことで、始めから劇伴や演出面を含めた “音” に執着して観ることが出来たからです。これまでの挿話でも素晴らしい劇伴と効果的な環境音、ともすれば無音であることが世界観を彩る劇伴にさえなっていた本作ですが、冒頭一番でこういった映像を挟むからこそ、より今回の音への印象は強いものになったのだろうと思います。

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また『雨音』へエピソードが移り、ヘルメットへ雨が落ちた瞬間に鳴った音の心地よさは筆舌に尽くせないものがありました。描かれる波紋と弾け飛ぶ水滴はよりそういった音・事象の連なりを確かなものとして認識させるために描かれたカットでもあったのだと思います。なにより、冒頭のカットも原作には存在せず波紋を直接的に描いたコマがそもそもほとんど原作にはないなか*1、ここまで波紋などの事象に執着したコンテワークであったのは、アニメーションになることで付加される “音” をより美しく、センチメンタルに映すためでもあったはずです。スローモーションを非常に効果的に使っていたのもおそらくはその延長。アニメだからこそ表現の出来る間、時間の作り方。そして音。波紋のカットを含め、そこに今回の肝はあったはずです。

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結果、本話は言葉では形容できないほど素敵なエンドロールを迎えることが出来たように思います。引きの絵を再度映し流れる『雨だれの歌』、エモーショナルで美しい原作の見開きをベースに描かれたこのシーンは、アニメであることの意義を携え生涯私の心に残るであろうワンシーンになりました。これまで本作が徹底して大切にしてきたであろう、余韻の一つの到達点。そう言っても決して過言ではなく、エンディングへの入りからエンドロール、そしてCパートとその全てがこの作品と世界観を象徴するシークエンスになっていたように感じます。

 

薄暗い終末を感じさせる撮影効果が雨止みとともに少し晴れ、淡い光が差してくるのもとても美的。例え終わった世界であっても、見方ひとつで世界はこんなにも美しく輝くのだと語るような幕の引き方が本当に素敵でした。楽曲も非常に良く、今はリピートして聴いています。ここまで4話分コンテを切り、高いレベルでフィルムコントロールし続けている尾崎隆晴監督初め、スタッフの方々には惜しみない拍手を。以降の話も楽しみです。

*1:雨が止んだ後に「ピチョン」と一滴分の波紋が描かれるだけ