話数単位で選ぶ、2018年TVアニメ10選

今年のアニメを振り返る意味も兼ね、今回もこちらの企画に参加させて頂きます。

・2018年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。

・1作品につき上限1話。

・順位は付けない。

集計ブログ様話数単位で選ぶ、2018年TVアニメ10選: 新米小僧の見習日記

選出基準は例年と同じく特に面白かったもの、感動させてくれた話を選定させて頂きました。それ以外は上記のルール通り、放映季順、他選出順等に他意はありません。敬称略で表記している箇所もありますが、その辺りはご容赦を。

 

ヴァイオレット・エヴァーガーデン 6話 「どこかの星空の下で」

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脚本:浦畑達彦 絵コンテ:三好一郎 演出:三好一郎 作画監督:角田有希

 

少年リオンが道しるべ足る少女に出会うまでの物語。雲を越える山岳地のロケーションが素晴らしく映える一方で、屋内を活かした陰影の表現がとてもエモーショナルに映ります。二人の立ち位置を意識したレイアウトも冴え、画面の余白と表情から生み落とされる情感が彼らの関係性と内面の変化を寡黙に伝えてくれるようでした。星に近い場所でヴァイオレットの心の奥底にあった感情に名前がつく、というのもロマンチックであり、悲劇的。けれど「その別離は悲劇に非ず」と作中で詠まれたことが本作においては一つテーマになっていたはずです。エンディングとの親和性も高く、今回のサブタイトル表示の直後に星空を追う定点観測のカットが映されたのは本当に鮮烈で、その美しさに息を飲みました。コミカルな演出からシリアスな演出まで幅広く、けれどフィルムは見事に収束し “二人の物語” を描き切った素晴らしい挿話です。

参考:『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』6話の演出について - Paradism

 

宇宙よりも遠い場所 5話 「Dear my friend

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脚本:花田十輝 絵コンテ:澤井幸次 演出:澤井幸次 作画監督:日向正樹

 

どの話数から選ぶべきか物凄く悩みましたが、物語を振り返ればやはりこの挿話は私にとって一際特別なものだと確信することができました。彼女のしたことは決して正しいこととは言えないけれど、「自分にはなにもない」「ここじゃない場所に向かわなきゃいけないのは私だ」と告白することが出来た彼女の強さは、紛れもなく本作が描き続けた “踏み出すこと” そのものを象徴していたように思います。世界に選ばれた4人の片隅に生きた少女の物語。けれど、だからこそ高橋めぐみの旅路はここから始まり、動き出していくはずです。その過程をシリアスに、感傷的に描き出した上で、しっかりと彼女と向き合ってくれたことに今は感謝しかありません。最終回のラストシーンで咽び泣いたのもこの挿話があったからこそ。生涯忘れられないエピソードです。

参考:『宇宙よりも遠い場所』5話の演出について - Paradism


ゆるキャン△ 5話 「二つのキャンプ、二人の景色」

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脚本:伊藤睦美 絵コンテ:寺東克己 演出:矢花馨 総作画監督佐々木睦

作画監督:吉田肇、小川浩司、坪田慎太郎、千葉孝幸

 

誰かと一緒だから見ることの出来る景色と、一人だから見える景色。その差を描くわけでも優劣をつける訳でもなく、ただそれぞれの良さを描いてきた本作にあって、このエピソードで提示されたことにはとても感動させられました。それは、好きなものを語り合えることの喜びと同じく “自分の見ている景色の素晴らしさを誰かに伝えられること” 、感情を共有できることの素晴らしさに他なりません。なにも一緒である必要はないんです。けれど傍にいると感じられる、同じ目線に立ってくれていると思える安心感がまた自分の足を一つ前に進めてくれる。オーバーラップで重なる二人の姿からはそんなことを連想せずにはいられず、例え一人であっても一人でないと感じられる瞬間の大切さを改めて思い知らされました。

参考:『ゆるキャン△』5話のラストシーンについて - Paradism

 

HUGっと!プリキュア 16話 「みんなのカリスマ!?ほまれ師匠はつらいよ 」

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脚本:村山功 絵コンテ:渡邊巧大 演出:川崎弘二 総作画監督:山岡直子

作画監督:渡邊巧大

 

複雑なレイアウトが織りなす関係性と陰影による感情の鬩ぎ合いをコントラスト強く描いた挿話。一言では言い表せられない心情を、画面や各々の行動・芝居を通して表現していたのが堪らなく好きでした。ほまれ、ルールー、じゅんな、あきとそれぞれの想いを丁寧に追っていたのも巧く、群像劇として凄まじく強度の強いフィルムになっていました。コミカルな芝居と繊細なタッチの緩急も良く、観ている間はずっとのめり込んでしまう魅力に溢れています。あの日掴めなかった星を今度は掴むーー。そんな、ほまれのリベンジ的な話にもなっていたのかなと思います。迫力あるアクションワークも素晴らしく、物語としても演出としても作画としても見応えしかない挿話です。

参考:『HUGっと!プリキュア』16話の演出について - Paradism

 

こみっくがーるず 8話 「わんにゃんにゃんわんまつり」

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脚本:高橋ナツコ 絵コンテ:高島大輔、徳本善信 演出:徳本善信

作画監督野田康行

 

いつも泣いていて、震えて、自信なく蹲ってしまう薫子。けれど、本当はそんなカオス先生を誰よりも身近で見守り愛していた人が居たのだと分かるラストシーンに何度泣かされたか分かりません。漫画家への道を諦めてしまった身だからこそ分かる、彼女の強さ。直向きさ。そして、孤独さ。でもだからこそ支えてあげたい、一人でも頑張り続ける彼女に辞めて欲しくない、報われて欲しいと願う編沢さんの愛情が痛いほど突き刺さるのがこの話の大好きなポイントです。Aパートの学生組とBパート以降での大人組とのコントラストも良く、少しダウナーの大人たちの雰囲気がより今回の話を引き締めていたなと思います。特殊EDも素晴らしく、『こみっくがーるず』と言えばこの話と言えるくらいにはとても印象に残った挿話です。

 

 

音楽少女 7話 「アイドルの涙は紙飛行機に乗せて…」

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脚本:赤尾でこ 絵コンテ:菊田幸一 演出:菊田幸一 総作画監督:中村深雪

作画監督:日下岳史、清水勝祐、齊藤香織、森本浩文

 

アイドルPV的なAパートから一変、シリアスな面持ちを携えていくフィルムの質感とその変遷に強く心を奪われました。作画・フォルムが他の話数とは大分違うテイストになっていますが、それが尚のこと今回の話に深い情感を与えています。表情豊かであることが影響してか、その分だけ琴子の感情の振れ幅を大きく感じられるのも素敵で、特にラストシーンではそれが顕著。辛そうな表情から涙を流し、そして笑顔になるまでの流れは何度観ても胸を打つものがあります。“自分のための” アイドルとして歩き始めた姉をモデルに、弟が最高の一枚を撮るというストーリーラインも良く、羽織を始めとした仲間たちとの関係、家族愛を描いた話としても本当に素晴らしかったです。菊田さんの絵と物語の親和性が極致となったスペシャルなエピソード。もう胸が一杯です。

 

ヤマノススメ サードシーズン 10話 「すれちがう季節」

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脚本:ふでやすかずゆき 絵コンテ:ちな 演出:ちな 総作画監督松尾祐輔

作画監督:今岡律之

 

ひょんなことから不思議な感情に苛まれてしまった少女の感情を一つ一つ拾い上げていくようなコンテワーク。些細な想いすら撮り溢さないように描かれるレイアウトや芝居は感傷的と言う他なく、言葉ではなく映像から心情に向けアプローチしていくスタンスを徹底し描き切っていました。撮影や色味、背景なども含めた絵としての統一感も素晴らしく、秋という舞台とひなたの心持ちをシンクロナイズしたことが一層の哀愁を感じさせます。非常に辛く、居た堪れなくなる話ではありますが、ひなたの想い(少女の華奢さ)を知る上でこの話は非常に大きな役割を担っていたと思います。作画のタッチも素晴らしく、ずっと記憶に残り続けるであろう挿話です。

参考:『ヤマノススメ サードシーズン』10話の演出について - Paradism

 

少女☆歌劇 レヴュースタァライト 8話 「ひかり、さす方へ」

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脚本:樋口達人 絵コンテ:光田史亮 演出:光田史亮 総作画監督:齊田博之、伊藤晋之 作画監督:松尾亜希子、角谷知美、大下久馬、高藤綾、小池裕樹、小里明花、清水海都、谷紫織、錦見楽

 

あの日のリフレインと、次こそはと願う切なる想い。巡る回想と迷いの中、華恋の言葉を反芻しながら新たな幕を明ける少女の煌めきを噛み締めるため、この話を何度観返し、何度心震わせたかはもう覚えていません。演者の感情に舞台が呼応し、脈動することをレヴューと呼ぶのなら、この話で描かれた舞台はその代名詞足るステージに相応しいものであったはずです。演劇をテーマに据えた作品らしい、ミュージカルの様な躍動と曲調変化。スローモーション(僅か一瞬)の中にこそ舞台少女の輝きを見出すコンテワークも冴え渡り、非常にインパクトと力強さの残る映像になっています。華ひらく剣(つるぎ)の作画もそんな “インパクト” に通づるタイミングで、気持ち良さと変化を体現した動きになっていたのが素敵でした。前半の仄暗さを僅か二分にも満たない情動で突き抜けていくフィルムワーク。この挿話を初めて観た日の感動が今も忘れられません。

 

SSSS.GRIDMAN 9話 「夢・想」

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脚本:長谷川圭一 絵コンテ:五十嵐海 演出:金子祥之 作画監督:五十嵐海、坂本勝

 

夢という状況下を多分に生かしたコンテワーク、表現、モチーフ。緊張感を生み出す警報器のインサートがフィルムに異様な空気感を与え、五十嵐海さんの独特な作画が物語との親和性を極限まで高めていました。クロスカットで紡ぐアカネと三人の群像劇が一つに収束していく終盤は筆舌に尽くせない快感に満ち溢れ、物語の脈動と同時に起こる背景動画がよりドラマチックさを演出していたことには感動の余り、思わず泣いてしまいました。打ち空けようとしないアカネの心情を半ば無理に抉り出すような描写も含め、言葉数少なく悟らせるような映像であったことにも非常に引き付けられます。六花がアカネとの会話から何を想い、何を起こすのか。その先を知りたくなる引き際、ラストシーンの良さが本話の素晴らしさに拍車を掛けていたように思います。

参考:『SSSS.GRIDMAN』9話の演出について - Paradism

 

アイカツフレンズ! 31話 「伝説の101番勝負!」

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脚本:柿原優子 絵コンテ:馬引圭 演出:徳本善信 作画監督:岩崎成希、秋津達哉

 

フレンズ活動一時休止を受けての話し合い、対戦、ステージと色々なものが詰め込まれた話でしたが、その実彼女たちを待ち受けていたのは輝きに満ちた一話の再演でした。みおがあいねをアイドルの道へ誘った日とは逆に、今度はあいねから差し出される手。誰が誰を引っ張るだとか、誰が誰の足手纏いにならないようにするだとか、そういった上下の関係では決してない、友達として、ライバルとしての繋がりをテーマに据えた話。感動的なラストシーンは秀麗な作画と相まって非常に美しく映ります。重なるチャームに灯るハイライトの輝きはまるで小さく彼女たちを祝福するようで、凄く好きなポイント。アイカツ!シリーズの伝統である崖登りもあり、ピュアパレットにとっても一つの節目として非常に色濃い回になっていたと思います。

 

 

以上が、本年度選出した挿話になります。

 

今年は本当に悩みました。悩みに悩んで答えが出ず、2013年以来の年を跨いでの更新になってしまいました。詳しい話数は省きますが最後まで悩んでいたのは『ハイスコアガール』『若おかみは小学生!』『キラッとプリチャン』『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』『ゾンビランドサガ』『ブラッククローバー』などです。他にも初期段階で候補に挙げた作品と話数が多く頭を抱えましたが、最終的には嘘偽りない自分らしい選択ができたように感じています。どの話数も自信をもって大好きですと言い切れる挿話ばかりです。

 

というわけで、今年も本当に多くの素敵な作品に出会えました。充足したアニメライフを送れたことに、そして関わったすべての制作スタッフ・関係者の皆様に大きな感謝を。本当にありがとうございました。来年もたくさんの素敵なアニメとの出会いがあることを願って。また一年、健やかなアニメライフを送ることができればいいなと思います。