アニメ演出
感情を表に出すこと、自分らしく居ることが難しい二人だからこそ寡黙な演出が眩しく映えた今回の話。倉敷舞子の表情変化や、被写界深度、レイアウトを活かした九十九伽奈の視線の描き方など他の話数とはまた一味違った見せ方が光っていました。そんな中、描…
静かな朝から始まるオープニングフィルム。静寂な曲調の中に織り交ぜられるフェティッシュなカットが非常に素敵で堪りませんでした。女性特有のシルエットに含まれる艶美さと可愛らしさ。それだけでもグッと引き付けられてしまう魅力に溢れていますが、撮影…
自分自身が “何者” でもなかったこと、特別な何かになったつもりで、その実なに一つ成長してはいなかったことを突き付けられた霊幻。そんな彼の帰路を映した終盤シーンが本当に素晴らしく、モブとのやり取りとそれを切り取ったカメラワークには強く胸を震わ…
おそらくはTV版9話以来となった山田エルフ主役の回。普段の高飛車な振舞とは違い、本心に触れられてしまうとどうしようもなく戸惑ってしまう彼女の心情が丁寧に描かれていて非常に胸に迫るものがありました。特にAパートは本心をぶつけられないエルフの寡黙…
麻衣さんとかえでの楽しげな会話も束の間、続くシーンの冒頭でガラリと変化した空気と質感には思わず息を飲みました。例えるなら、ここまで平熱を保ち続けていた*1フィルムがついに熱を帯びだしたような。ガラス越しに見つめる自身との対峙、その視線を捉え…
不穏な空気を感じさせる警報音。多くの意味合いを含んでいたであろう信号と踏切。それは音響の側面とセルによって描かれた数多くのプロップ・情報量から世界観を描き続けてきた本作の徹底したスタンスの延長でありながら、新しい予感を生み落とすモチーフと…
独特な間合い、印象的なカッティング、そこに託された心情と関係性。少女たちの内面を寡黙に映すことを美徳とするかのような今シリーズの演出スタンスは健在でありながら、day04佐藤麗華編で描かれた関係性と対となるような見せ方で構成されていたのがとても…
Aパート冒頭のシーン。ここまでの話の中でも何度か使われたモノクロの演出ですが、そこから繋がる対比、その実際的な色味を見せるための構図・レイアウトにとてもドキっとさせられました。瞳美の主観としてモノクロに映るステンドグラスを映したあとに現実で…
グリッドマン同盟なるものの発足の傍らで鬱々とした表情を見せる少女、宝多六花。一話における戦闘の影響でクラスメイトが居なかったものとされてしまったことへのショックは隠し切れるものではなく、その心情を汲み取るレイアウト、陰影、距離感が非常にう…
光、音、レイアウト、芝居、台詞、時間。その枝葉まで如何なくコントロールされた繊細なアニメーションに衝撃を受けた『あの日の彼女たち』。二分にも満たない短編で描かれた本作は少女たちの感情を寡黙に語らない一方で、映像の側面から各々の内面・関係性…
7話から描かれ続けてきたあおいとひなたの擦れ違い。おそらくは、あおいの成長、交友関係の広がりに対して “遠ざかっていくような感覚” をひなたが覚えてしまったことが原因の一つになっていたのでしょう。どこへ行くにしても常に傍にいた存在が少しずつ “自…
*1 特徴的で可愛らしい表情、フォルム、皺のニュアンス、デフォルメ。挙げれば切りがないほどに素敵な作画を見せてくれた本話でしたが、少しアンニュイな空気を抱えた今回の話にとっては、あおいの心情に寄り添った演出がとても良い補助線を引いていて話に引…
月に向かい手を伸ばし「まだまだ遠いな」と呟くみおをエモーショナルに切り取ったラストシーン。月灯りに照らされる質感がとても良く、モチーフやレイアウトなどカレンやラブミーティアに交錯した感情を抱いていたみおの内心をとてもよく描き出してくれてい…
全てにおいて素晴らしいとしか言いようがなかった本話ですが、まず最初に目を奪われたのは構図やレイアウトの良さでした。特に日常パートでの人物配置などは素晴らしく、それぞれの芝居や表情を一つの画面に乗せることで、その空間でのやり取りを楽しく生き…
*1 1話序盤から目立っていたロングショットでの芝居。静かに始まる導入と各々が寮へ集まる過程をじっくりと描いていたのが素敵で、とても引き込まれる演出だったと思います。fix、長回しで遠くから二人を見守るようなカメラ位置は、さながら下校する二人の時…
冒頭、鎧塚みぞれを中心に据えた描写から始まった本作は徹底して内面を覗き込むような映像で構成されていました。浅い被写界深度、表情を伺うようなレイアウトの数々は言葉ではなく映像ですべてを物語るように繋がり、その瞬間瞬間にみぞれがなにを思い、考…
日本と南極の中継、その橋渡しを描いたアバン。そこで起きた日向を取り巻く不穏な出来事に誰よりも敏感に視線を傾けたのは他でもない小淵沢報瀬その人でした。なにかを堪えるような日向の仕草。小さく漏れる溜息。そんな些細な変化さえ、きっと報瀬にとって…
*1 ヴァイオレットが湖へ向け飛び立つと同時に始まるスローモーション。オスカーにとってその一瞬が永遠にも感じられる特別なものであることが描かれたワンシーンでしたが、彼女が浮かぶ木の葉へ降り立つことを契機に始まるバレットタイムは、その “瞬間” を…
自分たちのやりたいこと、向かいたい場所、胸に秘める想い。そんな幾重にも重なった感情を反芻しながら、これまでの物語の中で切実に訴えてきた本作にあって、今回の話はそれを再度描いたしたものとしてとても胸に迫るものがありました。モノローグでもなく…
リオンとヴァイオレットを交互に映すカッティング・カットバックが多く見られた今話。「こういう顔なんだ」と言ったリオンの言葉宜しく、無表情であること、怒っているように見えてしまうことを逆手に取った表情の機微を取らえるコンテワークがとても印象的…
ゴローがヒロに視線を向けるカットの多さが目立っていたのは序盤。ヒロの変化やゼロツーとの関係を見つめる彼の目は特に印象的に描かれていました。レイアウト的にも巧く、どれもヒロとは目を合わせない位置に置かれ、さりげなく彼を見つめるスタンスが際立…
同ポが促す再演への期待。回想で語られたシャルロッテの出会いが現在へと回帰していく映像がとても良く、素敵でした。泣いていた少女と祈る少女を遠巻きに見つめるように前景を立てるレイアウトも憎らしく、この絵を何度も使う理由には今話の主題の一つでも…
*1 なでしこからリンへのオーバーラップ。当たり前と言えば当たり前ですが、これはアニメで加えられたオリジナルの描写です*2。景色を望む二人のバックショットを重ねるトランジションになっていて、その光景はまるで二つの視線 (見ているもの) をも重ねるよ…
ヴァイオレットや周囲に対し、どこか背伸びをしようとするアイリス。2話で特徴的だったのは履いたヒールが原因で足を捻ってしまうシーン*1でしたが、そんな背伸びの象徴も今話ではアップショットで映されることが多く、アバンではさながら彼女の立ち位置とそ…
南極へ旅立つマリの話から一転、めぐみの心情を多分に含んだ話へとシームレスに変遷する物語とフィルムの構成。すっと上手が入れ替わり、話の主体がマリからめぐみへと変化していたことをカット単位で寡黙に伝えてくれる巧さに心がざわつきました。二人の関…
これまでの挿話でも感情的な手の芝居は多く見受けられましたが、今話でもそれは同様でした。「手紙とは呼べない」と言われた際のヴァイオレットの力の込め方や両親と兄のことを語る際に映されたルクリアの手などは特に顕著で、繊細に各々の機微を捉えていた…
俯きがちな視線、目をそらす仕草と、終始どこか自信のなさを露呈していたエリカ・ブラウン。2話にして描かれたのはそんな彼女の寡黙な物語であり、自身を顧みるための話でした。 それも彼女自身が「自動手記人形に向いていないのは私の方だ」と語ったように…
おそらくは進学が一年遅れてしまっていることが一之瀬花名の内気な性格に拍車を掛けているのだと思うのですが、それを声色や表情だけでなく、仕草で繊細に描いていくれていたのがとても良いなと思いました。一緒に帰ろうと言ってくれたことに嬉しさを感じな…
輪郭線や反射光・影の多さなど、これまでの京都アニメーション作品を振り返っても特筆して線量の多いデザインと言っても過言ではない今作ですが、その中でも特に印象に残ったのは手の芝居に関してでした。それも感情や想いがその手を動かしているよう感じら…
ファーストカットで描かれた波紋、そして落ちる水滴。原作が好きなことと、今回のサブタイトルに『雨音』が含まれていたことから、このカットが演出的な伏線になっているのだろうと思えたことは幸運でした。音響への拘りもさることながらイメージとしてこう…