『ヤマノススメ』4話の素晴らしさを語る

往路の3話、復路の4話と二部構成となっていた今回の話ですが、その実はただ登って降りるだけ二話構成というわけでは決してなく、そこで描かれていたものは紛うことなく“山へのススメ”であったように感じられました。

それも簡潔に言ってしまえば、あおいの目線をもって語られた彼女自身の心境の変化に他ならなかったのでしょう。「楽しくない」と口にした彼女が往路で迎えた最大の難所。必要以上にカメラを傾け崖の傾斜を煽る構図はまさに彼女の恐怖心そのものであったように思えますし「もう引き返したい」と思わすには十分過ぎるアングルでもあったように思えます。けれど、そんな難所もいざ抜けてしまえば、あるのは心弾むパノラマの風景と清々しいまでの心地良さに他なりませんでした。山頂に着き、あおいの表情が笑顔を咲かせば、口から零れたのは「こういうの楽しいって言うんだ」なんていう少し前とは正反対の言葉なのだから、彼女の心の変遷だって推して量れるものであったはずです。


まただからこそ、そんな難所だって今の彼女にとってはただの崖。傾斜は緩み、煽りもなければ、少し前に抱いていたはずの恐怖心だってなんのその。そんな“楽しさ”にまで至る道のりを誠実に、また丁寧に描いてくれた挿話はまさしく、『ヤマノススメ』というタイトルの指し示す場所を提示してくれていたのではないかと思います。映像とキャラクターの心情と、そのシンクロ。カメラがキャラクターに寄り添えばその傾きだって自由自在に変えられるのだということを、改めてこの作品には教えてもらえたような気がします。