前回の記事と同じ基準。放映季順、他順不同、他意はありません。敬称略含む。視聴した作品からのみの選出で、選出基準はいつもと同様 「とにかく好きなED」 です。
この素晴らしい世界に祝福を! / ちいさな冒険者
牧歌的な主題歌とそのテンポに合わせたカッティング、タイムラプスを使い、ゆったりとした空間の中に時間の流れをしっかりと汲み込んでいるのが素敵です。また時間の流れを描くことは、生活をそのまま描くこととよく似ていると思います。朝は釣りをし、日中は人が行き交い、陽が落ちれば家に明かりが灯り、夕食の準備が始まる。そんな他愛もない、けれど確かに身を委ねたくなる温かさを感じられるのがこのEDの大きな魅力なのだと感じます。柔らかい表情は菊田さんの持ち味、自然体な描写が凄く良いですね。
少女たちは荒野を目指す / 世界は今日もあたらしい
自然体という意味ではこちらも良かったです。ぼかしや逆向、光源を意識したフィルムは儚い学生時代の一時の夢をそこに浮き彫りにしてくれていたと思います。主人公がカメラを回しているのか、誰かが撮っていることを意識した様な、そんな風合い。コンテ演出の井出安軌さんはおねがいティーチャーの監督、OPのディレクションも担当されていましたし、画面作りとしては同じような効果を使っていました。自主制作のような雰囲気が観ていて心地良く、哀愁を誘います。
学戦都市アスタリスク / 愛の詩-words of love-
モーショングラフィックスのような多種多様な表現に画面設計・原画の温泉中也さん、作監川上哲也さんのタッグで見せるワンカット毎の端正で凛と可愛らしい作画が魅力的です。芝居も丁寧なものもあれば楽しい動きもあったりしていて、観ているだけで幸せになれます。映像ディレクションは中西康祐さん。普段は撮影監督をやられているみたいですが、画面の質感、特効でのエフェクトのセンスを見ると、その領分での活躍が強く生かされた画面になっていたのかなと感じます。
本音を言い合えない少女たちの心模様を描く映像。花言葉に載せられた彼女たちの声を探るもいいし、探らなくてもいい。それでもアンニュイな表情が語る言葉は幾つもあって、それを物語を追いながら見つけていくのも彼女たちへの寄り添い方の一つなのだと思います。白バックを基調とすることで映える個々の存在感。繊細な心模様を捉えるような線のきめ細やかさに心を奪われます。コンテ演出作監原画を渡邉祐記さん。三月のパンタシアの楽曲も凄く好きなんですが、作品のテーマ性と音楽との親和性が高い次元で噛み合ったフィルムだと思います。
アイカツスターズ! / episode Solo
カット数も多くなくほぼ止め絵で構成されていますが、それが楽曲の魅力と強さを引き立てていて、旧S4の絶対的な強さを物語っていたのが良かったです。余白の使い方やそれぞれに託されたパーソナルカラーとその色味、並びがピッタリ嵌るのは彼女たち4人だからこそなのだと思います。無駄はいらず、ただあるのは秀麗な佇まいのみ。原画は飯島弘也さん、高野綾さん、作監に愛敬由紀子さんと少数精鋭。演出のイシグロさんも原画陣を信用していたからこそ、ここまで強気な映像に出来たのではないかなと思いますが、このEDについてのお話は一度文体でいいので聞いてみたいです。
Rewrite / ささやかなはじまり
江畑さんらしい重心の掛かる動きも素晴らしいですが、それぞれのヒロインに姿を変えながら同じ場所を巡る、というコンセプトが素晴らしく感じられました。一人一人に焦点を絞りながら、またあの部室に集まれる日々を願う本作において、このEDはそのための祈りのような役割を担っていたようにも思えます。それぞれに課せられた運命に囚われる少女たちが伸び伸びとしているのもグッときますし、その点で言えばやはり芝居作画は堪らないものがあります。こんな日が訪れたらいいな、とそう願わずにはいられません。
3月のライオン / ファイター
もがきながらも必死に前へ進んでいく様、その果てに世界が色づき光が差し込む映像美は本作で描かれていることを強く映し出してくれていたのではないでしょうか。足元を写したカットが何度かあったのも進むことに意識的だったからだと思います。楽曲の高揚感に合わせるよう、おそらくは撮影で画面の明度を一気にあげる。その美的な色遣いと感覚は演出の中村さんの固有のセンスだと感じます。
ポケットモンスター サン&ムーン / ポーズ
コミカルなダンスはこのデザインだからこそ、より生き生きと見えるのだと思います。歌詞とリズムに合わせたポーズやステップはさることながら、その際に生じる体重の微妙な移ろい、加減などの表現も巧いです。ポップなデザイン、演出もそうした作画面に凄く合っていて観ているだけで楽しくなれます。岩根雅明さんの一人原画。作監にはキャラクターデザインの方が入っていますが、もうさすがとしか言いようがありません。
夏目友人帳 伍 / 茜さす
夏目友人帳らしい優しいタッチの映像が胸に沁みます。前景で揺れる穂、その奥で戯れる登場人物たちの声が聞こえてくるかのような風景。原画は松本憲生さん一人での担当。学生らしいやんちゃな動き、タイミングの取り方など、芝居が本当に素晴らしいです。楽曲の哀愁も相まって観ているだけで涙腺にくるものがあります。長年監督を務められた大森貴弘さんが演出をされているだけあってこの作品の魅力の引き出し方もさすがだなと感じます。数カットで纏める潔さというか、じっくり映すことで空気感を伝えてくれる。大好きなフィルムです。
フリップフラッパーズ / FLIP FLAP FLIP FLAP
オーバーなアクションと躍動感のある芝居が素晴らしいです。分割上部でストーリーボードのようなものが展開されているのも良いんですが、その色合いの派手さに負けない動きが凄く魅力的だと思います。大きな口を震えながらあけるココナにはこちらも思わず笑い出してしまいそうな可愛さがあります。非常に曖昧な言い方を許してもらえるなら、とてもアニメーションをしている。そんな風につい思ってしまいます。何度観ても色褪せないだろうなと思える、大好きなエンディングです。
というわけで、以上が2016年度テレビアニメED作品の10選となります。
OPと合わせてやっぱりここでしかない表現ってあって、だからこそ私はここまでこの一分三十秒の映像に魅了されてしまうのだと思います。制作に携わられた方々には心から感謝を。今年もまだまだこれから、楽しみですね。