最近観たアニメの気になったこととか9

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『その着せ替え人形は恋をする』5話。五条君が喜多川さんに惹かれ始めていることを示唆するシーン。契機となったのはこれより前に描かれていた喜多川さんがにひっと笑うカットだったと思いますが、個人的により印象に残ったのはこちらのカットでした。当事者にとってそれが魅力的に映っていることを示唆する際、その対象者/物をスローモーションで描くことは特に珍しい表現というわけではありませんが、表現が珍しいかどうかなどはこの際関係がなく、それがどこまでその時のシチュエーションや心情にリンクするかが何よりも大切なのだろうと思います。喜多川さんとしては「衣装が脱げそう・暑さで倒れそうだ」ということを知らせるために近寄ってきているだけなのですが、そんな彼女の走る姿と表情、靡くプリーツ、皺の質感、好きなことに一途だからこそ流れ出る汗の尊さに五条君は特別性を見出していたのだと思います。だからこそ主観的なカットが入るし、その姿が彼にとっては生涯忘れないであろう瞬間にきっとなっていくことを裏づけるためスローモーションが使われる。そんな瞬間を再現する作画の凄さはもちろんなんですが、どこまでも感情的で、フェティッシュで、掛け替えのないものが詰まったカットであったことが私の胸を強く打ちました。

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『スローループ』2話。恋がひよりの変化に対しモヤモヤというか、後悔のような感情を抱いていることが赤裸々として語られるシーン。パーソナルスペースとしての傘が恋を包み続けていたのが個人的には『言の葉の庭』を想起させられたりもして、グッときてしまいました。良くも悪くも相手に対し踏み込んでいける小春に対しての劣等感も、もしかすれば恋は感じていたのかも知れません。でもそんな小春が恋の殻を破り踏み込んできてくれる、そんなやり取りの積み重ねに良いなあと思わざるを得ませんでした。

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だからこそ、恋は自らが籠るその傘を、自らの手で下ろすことができたのだと思います。それは彼女が小春に対し心を許した瞬間でもあり、自らの過去に対し少しだけ向き合えたことをも意味していたのでしょう。だからこそ、折り畳み傘を綴じるカットがとても意識的に描かれる。小春の前景にその芝居が入るのも前述したことを踏まえると、なんだかとても良いなあと思えたりします。

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『ありふれた職業で世界最強 2nd season』2話。エフェクトで格好良さに感動したのは久々だったかも知れません。蛇をモチーフにしている敵と戦っていることを意識したかのような、伝統的である竜モチーフのエフェクト。稲光のような密度の高さと緻密さが力強いタイミングで打ち込まれていく躍動感、そのビジュアルに心惹かれました。前景と後景に雷が分かれているのも空間を感じられて良いですし、雷が上がるタイミングより少し遅れてカメラがPANアップし、その動きを予測したかのように雷より少し先にカメラがPANダウンしていくカメラワークの凄みにも臨場感と趣があります。直後に驚いたシアの振り向きカットが入るのも良いですね。カット頭から動き出しているのが素晴らしいですし、繋ぎとしてもより連続性を感じられて、且つスペシャル感*2があります。観ていてとてもワクワクさせられました。

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『プリンセスコネクト!Re:Dive season 2』4話。この回で一番感動したカットです。まず最初の地図に影が映り込むカット。ここでしっかりと影が動くことで、そこに居る人たちの存在を感じさせてもらえたことにもうだいぶ良いなと感じていたんですが、次点の真煽り長尺のカットは本当に素晴らしくて観ながらずっとにやにやしてしまいました。それぞれの人物像を意識した表情変化、些細な仕草。それに合わせるよう各々が視線を向けたり、目配せをする関係性の置き方と、一個人として各々を描いてくれている繊細さ。真煽りなこともあり、芝居作画としての難しさは推し量るのも憚られるほど高度なものだと思いますが、この芝居があったからこそ、より彼女たちに "生" を感じられたことはまず間違いありません。これまでに瞬きがまったく描かれないことで作品への没入感が削がれてしまうという経験は少なからずありましたが、逆にここまで瞬きをしっかり描いてくれていると、こんなにも "生きている" という実感が得られるのだなあと、改めて考えさせられました。最後に全員が頷いた後、ダメ押しのように瞬きがもう一度入るのとか。もう堪らないですよね。

*1:サムネ参考画像:

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*2:俗に言う作画回的な、特有のあの感じ