『ひとりぼっちの〇〇生活』の演出、横構図について

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ついにソトカとぼっちが友達としての関係を明白に築いた第10話。遡れば第4話の再演となった今回の話ですが、その際の会話を描いたシーンがとても素晴らしく胸を打たれました。かつてぼっちがソトカに向け手裏剣を投げた時とは位置が入れ替わる (ソトカが上手に回り物語の主体となる) 、というのもとても粋な見せ方ではありますが、私が一番感動したのはそれをこういった横構図で捉えてくれいたことでした。

 

特段、珍しい見せ方ではないものの、関係性を描くこと、その分岐点など物語との親和性次第では “向き合う” ということの大きさ、その意味を携えてくれるこの構図は、むしろ本作においてとても大きな役割を果たしていたと思います。

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対人の横構図というわけではありませんが、そのまま寄せて映したと思えるこういったカットの連なりも同じことです。向き合うことで生じる視線。言い逃れの出来ない対峙。それまでの葛藤や想いがあるからこそ生じるこの構図は、だからこそ彼女たちの決意や伝えたいと願うことの強さを浮き彫りにしてくれるのです。

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それこそ、そういった見せ方は既に一話でも描かれていたことでした。ぼっちがなこに「友達になってくれませんか?」と語った下校シーン。ぼっちの初めてのその言葉を予感してか、カメラがすっと横に回り込みこの構図を描いた時、とても感動したのを今でも鮮明に覚えています。どうしても言いたかった彼女の言葉。明白に友達になったという証拠が欲しい彼女の想いを正面から精一杯汲み取った構図・レイアウトだと感じます。それに向き直るなことの対面を改めて寄りで映すのもとても良いです。お互いの心がしっかりと向き合っていると感じられるカット、それが余りに美しくこの物語の始まりの1ページを彩ってくれていました。

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だからこそ、前述したようにこういったカットの運びにもグッときてしまうのです。オーソドックスなカットの運びなのだとは思いますが、シチュエーション、心情、前提として置かれた横構図の存在が、絶妙なレイアウト・アップショット*1の意味をより強く描き出してくれる。そして、それを取り巻くコンテワークの良さが彼女たちの関係性・想いをより鮮明に映していくからこそ、彼女たちの会話、やり取りに没入することができ、その結果こんなにもこの作品のことを 「好きだ」 と思えるのです。

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また他にこういった構図が使われていたのが、第2話。ぼっちとアルが友達になるシーンでした。横構図に至る前に登っていた鉄棒からアルが降り、それを潜ってくるというのが、素直な自分になる彼女自身の過程としてまた一際素敵なニュアンスを描いていました。自身が残念なキャラであることを隠そうとしていたアルと、そんなアルと友達になりたいと話してくれたぼっちがようやく向き合うシーンでしたが、そこにこの構図を使ったのはやはり意図的なのでしょう。じっくり見せるためのものではありませんでしたが、このカットがあるのとないのとでは感慨が全く違ったと思います。どこまでも “向き合うこと” に拘った映像・物語です。

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第9話。ここは寄りのカットにPANを使った見せ方ですが、やはり “向き合あう” ことを捉え、描いています。これまでのようなロングショットではありませんが、佳子がしっかりと彼女に向き合った結果「ライバルとして居たい」と語ったことを裏付けるカメラワークと構図です。ナメの構図などが多い本作にあって、こういったカットはやはり目立ちますし、だからこそ印象に残ります。そこに少女たちの真剣な想い、眼差しを乗せることで真っ直ぐな物語を描いていくこの作品のスタンスには、やはり何度だって心打たれてしまいます。

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中でも美しいと感じたのが7話のラストシーンでした。直接的な向き合いではありませんが、師弟関係ではなくぼっちと “友達になる” ということをソトカが真剣に考え、それをなこたちに伝えるシーンとしてはやはり “向き合う” ということ描いていたのだと思います。この時、ソトカの向ける視線の先に居たのはきっと少し前に泣きじゃくっていたぼっちの姿であり、いつも一緒に過ごし横で見ていたぼっちの笑顔。その複雑な心境を捉えた一場面として、本当に素適なものになっていました。

 

それこそ、本作は序盤から常に誰かが誰かを見つめる視線を描き、そこに焦点を当ててきました。友達になるという一つの目的の中で築かれていった関係性。だからこそ、見つめること、向き合うことに意味は宿り、やがてそれは誰かを想うことに翻っていったのでしょう。そんな物語と感情の変遷を映像としてしっかりと描き、残し、静かに彼女たちの背中を支えてきたことはこの作品への没入感に多大な影響を与えていたはずです。

 

可愛くコミカルなカットも多く描かれる中、こういったカットたちの存在が彼女たちの過ごす青春をしっかりと切り取ってくれる。そういった信頼*2を毎話経るごとに一段と感じられることが、この作品を大好きになれた最大の理由です。これからどういった最終話を迎えるのかはまだ分かりませんが、だからこそこれまで描かれたこと、そこで感じた多くのことを頼りに、来る彼女たちの未来を今は静かに待ちたいと思います。そして最後に。ここまで好きになれる作品をありがとうございますと、心から。彼女たちと、彼女たちの物語に触れることができて本当に良かったです。

TVアニメ 「 ひとりぼっちの○○生活 」 エンディングテーマ 「 ね、いっしょにかえろ。 」

TVアニメ 「 ひとりぼっちの○○生活 」 エンディングテーマ 「 ね、いっしょにかえろ。 」

 

*1:相手のいる方向に空間を空けることで、そこに相手がいるのだと強く示してくれるカット

*2:どんな時もこの作品は彼女たちに寄り添ってくれると思える信頼