最近観たアニメの気になったこととか6

 

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死神坊ちゃんと黒メイド』2話。魔女に呪いをかけられ他者に触れることが出来なくなった坊ちゃん*1が、愛する人を想い月をみる、というシチュエーションがとても儚く素敵だったなと。想い人であるアリスの存在と月が重なるような感覚を覚えるカット。近くに居るようでとても遠く、その美しさに息を呑むほどに手の触れられない存在であるよう映ることが非常に切なく感じられました。

 

強風を浴びた坊ちゃんの手に落ち葉が当たり枯葉に変化するというカットを契機に、月を望むカットがバックショットで映るというのもとても意図的。最初は巨大に見えるよう月を映し、次第にT.Bしていくカメラワークがより感傷を誘っていました。

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よりアリスと月が同義的に語られるカット。そして、アリスと坊ちゃんの対比。一人で居る時は月光に照らされること (相手を想うこと) も出来る坊ちゃんですが、アリスが傍に居ると一歩引かざるを得ない。光と陰。幻想的な見せ方ですが、その中にとても現実的な距離感と人間関係が透けて見えてくるのがとても辛かったです。

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けれど、そういったことを踏まえてのここの手先の芝居には、思わず泣きそうになってしまいました。触れたいが触れられない。相手のことを想うほどに、触れてはいけないと強く堪えるような感情が滲み出る芝居。もちろん、ダンスを始める直前のカットでは影をモチーフに今この瞬間だけはーー、という感慨を演出してくれてはいますが、だからこそ募る想いはあるというのが非常に切なく、美しく映りました。

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『かげきしょうじょ!!』3話。シーンの切り替わり、その冒頭が状況説明的なカットではなく、こういった芝居のカットから始まるというのがもうたまらないんですが、それ以上に足元から伝わってくる人間味みたいなものがこうも強く感じられるのって凄いなと。タップダンスの模範指導なので、きびきび動くのは自然な流れだとは思うんですが、切れのある動きであることが伝わってくる裾口の揺れ、シューズのカッチリとした影づけがとても印象的で、その印象がそのまま以降のシーンでも先生の雰囲気と一致していたことが個人的にとてもツボであり驚きでした。ここだけ他のカットとは芝居のニュアンスも違う (どこかリアル調な) のがよりこのカットへの求心力を高めていましたし、だからこそシーン初めがこのカットであることに強い意味が生まれるというか。空気を一瞬で変えてしまう力があるカットって凄いなと、改めて思えたりもしました。

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そういった意味ではこのカットのことも思い出しました。『アイドルマスターシンデレラガールズ』17話の冒頭シーン。シリアスな導入と城ヶ崎美嘉の練習風景で始まるアバンですが、彼女の表情や仕草よりもこの擦り減ったボロボロのシューズが映ることで、よりその努力が垣間見えるというのがとても良く、そこから美嘉の人間味というものが少しばかり見えてくるのが素敵だなあと。シューズに限らずプロップ的な存在からその人のことが透けて見えてくる瞬間ってやっぱりなんだか良いなあと思います。

*1:正確に言うと、生命に触れるとそのものの命が絶命する