『エロマンガ先生』OVA1話の芝居と演出について

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おそらくはTV版9話以来となった山田エルフ主役の回。普段の高飛車な振舞とは違い、本心に触れられてしまうとどうしようもなく戸惑ってしまう彼女の心情が丁寧に描かれていて非常に胸に迫るものがありました。特にAパートは本心をぶつけられないエルフの寡黙な心の声を、うまく芝居や彼女独特の間合いで描いていたのが印象的で、マサムネから花束を受け取るまでの間や、その際の表情で “彼女らしさ” というものを克明に描いてくれていたのがとても素適でした。

 

母親との喧嘩の際に差込まれた “花束を飾るグラス反射” のカットなども同様で、エルフ自身の口からはなかなか真っ直ぐに伝えられない (言葉では語り切れない) 想いを、グッと圧縮し、そこに映し出していました。なにより、そういったモチーフや芝居にこそ心情を込めていく演出の方向性が今回のフィルムに漂う質感を支えていたことはまず間違いないはずです。

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その中でも特に印象に残ったのがこのカットでした。喧嘩した母親とのことや、それを想い人に打ち明けている状況、口に出来ないもどかしさが、きっとふとした拍子に自然と行動に出てしまったのでしょう。本当に些細でどちらかと言えばフェティッシュ寄りな芝居ではありますが、エルフの性格を鑑みればむしろこういった芝居こそが彼女にとっては雄弁な “言葉” そのものだったのだと思います。なにより、そう思える芝居・カットの積み重ねが山田エルフという少女の輪郭を少しずつ描き出していたことに、私はどうしようもなく喜びを感じてしまったのです。

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それは、こういった芝居一つとっても同じことです。これは冒頭でも触れた9話におけるプロポーズシーンの一部ですが、声を震わせながら虚勢を張る彼女のその理由をどの言葉より先に描き出していたのがこの芝居でした。掴まれたスカートに出来た皺。甲の影面積変化から伝わる力の度合い。真っ直ぐに、とはいかないものの、エルフが抱く想いの片鱗を意を決して伝えようとしたその心情が痛いほどに伝わってくるカットです。

 

正直、こういった芝居を描くことは簡単なことではありません。細部の微細な動きで心情を描くということは作画的にとても労力を必要とするものだからです。前述した足先の芝居、冒頭の柔らかな表情変化も含め、そういった面も踏まえれば高度で繊細な芝居というのは必ず描かれなくてはいけないものではないでしょう。ですが、こういった芝居・表情が在るからこそ伝わる登場人物たちの想いというものも間違いなくあるはずなのです。言葉だけでは伝わらない想いの大きさ。言葉に出来ない心の不器用さ。それを鮮烈に描くものの一つが “作画” であり、“芝居” であり、“絵の強さ” なのだろうと思います。

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もちろん、それは動きに関したことだけではありません。視線とそれを感じさせてくれるレイアウト。また誰かが誰かを観ていると感じさせてくれるカットの運び、たった一つのカットの繋ぎをとっても同じことなのです。特段、ここもエルフがマサムネに対しなにかを告げるというシーンではありませんが、彼女の表情とその視線、そして疑似主観的に映されるマサムネの横顔を見てしまえば、そこにはどうしようもなくエルフが彼に惹かれてしまう理由が横たわっているのだと気づかされてしまうわけです。言葉で語らなければいけないことがある反面、言葉では語り切れないものがあるからこそ、映像で伝える。それを終始描き切っていたことがこの挿話の素晴らしさに強く結びつき、フィルムに多大な情感を与えていたように感じます。

 

ですが、そんなエルフの寡黙さとは裏腹に今回の話ではミュージカルというある種、これまで触れてきた見せ方とは真逆の表現方法が使われます。想いを出来るだけ言葉に変え、オーバーな動きで高らかに感情を演出する舞台劇。それはTVシリーズでも存分に描かれてきた山田エルフの身体性あってのものであり、彼女だからこそ出来た想いの伝え方でもあったのでしょう。一貫して ”真っ直ぐ伝える” ことに踏み込めなかった少女がミュージカルという舞台を借り、その身体性を活かした物語。なにより、それまでは彼女の言葉の代弁者足り得た “芝居” が、今度は言葉の後ろ盾となるべくその力強さを画面一杯に表現するのだから、本当にアニメーションって面白いですよね。

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中でも一番感動したのがこのカット。エルフの「諦めない」という言葉に呼応し影からグッと抜け出る表情の晴れやかさと、動きのメリハリ、タイミングの巧さ、そして髪のなびき。想いをうまく口に出来ず些細なジェスチャーでしかそれを表に出せなかった少女の気持ちと動きが同期し、重なった瞬間です。他のミュージカルパートも凄く良かったのですが、特にここは物語と言葉、そして芝居が強烈に噛み合い描かれていたのもあり、より胸にグッとくるものがありましたし、そのせいか少しだけ泣いてしまいました。

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ですが、もちろんミュージカルはあくまで一過性の舞台。ステージを降りれば、いつもの寡黙なエルフに戻ってしまうというのを階段の上り下りで見せていたのが非常に巧い反面、辛くもありました。「会場の全員がこの私に夢中になったに違いないわ」といつもの調子を取り戻したかと思えば、マサムネを意識した言葉には詰まってしまうのがまた彼女らしくもあり、その際の表情も前段で触れたような言葉に出来ない想いを含ませたニュアンスのもの。このミュージカルパートとの落差が非常にエルフらしく、良い意味で深い溜息をつかざるを得ませんでした。

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ですが、ミュージカルはファンタジーの世界で起きたものでもなく、彼女自身が行動に移し、演じ切ってみせたもの。そしてあのステージの上で語った言葉の数々もまた正真正銘、エルフの正直な気持ちであったはずです。だからこそ、あの舞台に立ったことは彼女にとって一つ変化への切っ掛けにもなっていたのでしょう。それを証明するように繰り返し映される踏み出す足のローアングルは、この挿話が山田エルフの成長物語であったことを裏づけるカットとしての意味をしっかりと携えていたはずです。

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そして、“あの日から” 少しだけ縮まった二人の距離。振り向くエルフの笑顔と共に咲き乱れる光のイルミネーションは、もはやあの日の再演を演出した舞台装置であり、この日、この瞬間に「ちょっとだけ素直になれたと思う」と語ってみせた少女への祝福でもあったのでしょう。あなたにプロポーズさせるなんてもう言わない。私があなたをーー。暗にそう伝えるエルフの告白がマサムネを笑顔にさせたのだから、“今” 出来る最高の幕引きをエルフは引き出せたように思います。

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そして、マサムネが笑ってくれたからエルフも満面の笑みを浮かべられる。恋が実ったわけではないけれど、それでも笑顔で終えられたことにこの物語の意味は多く託されていたはずです。物語としてもコンテワークとしても本当に素晴らしいラストシーンでした。最後の一歩は竹下監督曰く「縮まった心の距離」。これから二人がどういった物語を辿っていくのか、本当に楽しみで仕方がありません。先々の展開も気になりますが、一先ずはこの素晴らしいOVAに携われた方々に感謝を。年始からとても素敵なもの見せて頂きました。本当にありがとうございました。

話数単位で選ぶ、2018年TVアニメ10選

今年のアニメを振り返る意味も兼ね、今回もこちらの企画に参加させて頂きます。

・2018年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。

・1作品につき上限1話。

・順位は付けない。

集計ブログ様話数単位で選ぶ、2018年TVアニメ10選: 新米小僧の見習日記

選出基準は例年と同じく特に面白かったもの、感動させてくれた話を選定させて頂きました。それ以外は上記のルール通り、放映季順、他選出順等に他意はありません。敬称略で表記している箇所もありますが、その辺りはご容赦を。

 

ヴァイオレット・エヴァーガーデン 6話 「どこかの星空の下で」

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脚本:浦畑達彦 絵コンテ:三好一郎 演出:三好一郎 作画監督:角田有希

 

少年リオンが道しるべ足る少女に出会うまでの物語。雲を越える山岳地のロケーションが素晴らしく映える一方で、屋内を活かした陰影の表現がとてもエモーショナルに映ります。二人の立ち位置を意識したレイアウトも冴え、画面の余白と表情から生み落とされる情感が彼らの関係性と内面の変化を寡黙に伝えてくれるようでした。星に近い場所でヴァイオレットの心の奥底にあった感情に名前がつく、というのもロマンチックであり、悲劇的。けれど「その別離は悲劇に非ず」と作中で詠まれたことが本作においては一つテーマになっていたはずです。エンディングとの親和性も高く、今回のサブタイトル表示の直後に星空を追う定点観測のカットが映されたのは本当に鮮烈で、その美しさに息を飲みました。コミカルな演出からシリアスな演出まで幅広く、けれどフィルムは見事に収束し “二人の物語” を描き切った素晴らしい挿話です。

参考:『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』6話の演出について - Paradism

 

宇宙よりも遠い場所 5話 「Dear my friend

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脚本:花田十輝 絵コンテ:澤井幸次 演出:澤井幸次 作画監督:日向正樹

 

どの話数から選ぶべきか物凄く悩みましたが、物語を振り返ればやはりこの挿話は私にとって一際特別なものだと確信することができました。彼女のしたことは決して正しいこととは言えないけれど、「自分にはなにもない」「ここじゃない場所に向かわなきゃいけないのは私だ」と告白することが出来た彼女の強さは、紛れもなく本作が描き続けた “踏み出すこと” そのものを象徴していたように思います。世界に選ばれた4人の片隅に生きた少女の物語。けれど、だからこそ高橋めぐみの旅路はここから始まり、動き出していくはずです。その過程をシリアスに、感傷的に描き出した上で、しっかりと彼女と向き合ってくれたことに今は感謝しかありません。最終回のラストシーンで咽び泣いたのもこの挿話があったからこそ。生涯忘れられないエピソードです。

参考:『宇宙よりも遠い場所』5話の演出について - Paradism


ゆるキャン△ 5話 「二つのキャンプ、二人の景色」

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脚本:伊藤睦美 絵コンテ:寺東克己 演出:矢花馨 総作画監督佐々木睦

作画監督:吉田肇、小川浩司、坪田慎太郎、千葉孝幸

 

誰かと一緒だから見ることの出来る景色と、一人だから見える景色。その差を描くわけでも優劣をつける訳でもなく、ただそれぞれの良さを描いてきた本作にあって、このエピソードで提示されたことにはとても感動させられました。それは、好きなものを語り合えることの喜びと同じく “自分の見ている景色の素晴らしさを誰かに伝えられること” 、感情を共有できることの素晴らしさに他なりません。なにも一緒である必要はないんです。けれど傍にいると感じられる、同じ目線に立ってくれていると思える安心感がまた自分の足を一つ前に進めてくれる。オーバーラップで重なる二人の姿からはそんなことを連想せずにはいられず、例え一人であっても一人でないと感じられる瞬間の大切さを改めて思い知らされました。

参考:『ゆるキャン△』5話のラストシーンについて - Paradism

 

HUGっと!プリキュア 16話 「みんなのカリスマ!?ほまれ師匠はつらいよ 」

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脚本:村山功 絵コンテ:渡邊巧大 演出:川崎弘二 総作画監督:山岡直子

作画監督:渡邊巧大

 

複雑なレイアウトが織りなす関係性と陰影による感情の鬩ぎ合いをコントラスト強く描いた挿話。一言では言い表せられない心情を、画面や各々の行動・芝居を通して表現していたのが堪らなく好きでした。ほまれ、ルールー、じゅんな、あきとそれぞれの想いを丁寧に追っていたのも巧く、群像劇として凄まじく強度の強いフィルムになっていました。コミカルな芝居と繊細なタッチの緩急も良く、観ている間はずっとのめり込んでしまう魅力に溢れています。あの日掴めなかった星を今度は掴むーー。そんな、ほまれのリベンジ的な話にもなっていたのかなと思います。迫力あるアクションワークも素晴らしく、物語としても演出としても作画としても見応えしかない挿話です。

参考:『HUGっと!プリキュア』16話の演出について - Paradism

 

こみっくがーるず 8話 「わんにゃんにゃんわんまつり」

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脚本:高橋ナツコ 絵コンテ:高島大輔、徳本善信 演出:徳本善信

作画監督野田康行

 

いつも泣いていて、震えて、自信なく蹲ってしまう薫子。けれど、本当はそんなカオス先生を誰よりも身近で見守り愛していた人が居たのだと分かるラストシーンに何度泣かされたか分かりません。漫画家への道を諦めてしまった身だからこそ分かる、彼女の強さ。直向きさ。そして、孤独さ。でもだからこそ支えてあげたい、一人でも頑張り続ける彼女に辞めて欲しくない、報われて欲しいと願う編沢さんの愛情が痛いほど突き刺さるのがこの話の大好きなポイントです。Aパートの学生組とBパート以降での大人組とのコントラストも良く、少しダウナーの大人たちの雰囲気がより今回の話を引き締めていたなと思います。特殊EDも素晴らしく、『こみっくがーるず』と言えばこの話と言えるくらいにはとても印象に残った挿話です。

 

 

音楽少女 7話 「アイドルの涙は紙飛行機に乗せて…」

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脚本:赤尾でこ 絵コンテ:菊田幸一 演出:菊田幸一 総作画監督:中村深雪

作画監督:日下岳史、清水勝祐、齊藤香織、森本浩文

 

アイドルPV的なAパートから一変、シリアスな面持ちを携えていくフィルムの質感とその変遷に強く心を奪われました。作画・フォルムが他の話数とは大分違うテイストになっていますが、それが尚のこと今回の話に深い情感を与えています。表情豊かであることが影響してか、その分だけ琴子の感情の振れ幅を大きく感じられるのも素敵で、特にラストシーンではそれが顕著。辛そうな表情から涙を流し、そして笑顔になるまでの流れは何度観ても胸を打つものがあります。“自分のための” アイドルとして歩き始めた姉をモデルに、弟が最高の一枚を撮るというストーリーラインも良く、羽織を始めとした仲間たちとの関係、家族愛を描いた話としても本当に素晴らしかったです。菊田さんの絵と物語の親和性が極致となったスペシャルなエピソード。もう胸が一杯です。

 

ヤマノススメ サードシーズン 10話 「すれちがう季節」

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脚本:ふでやすかずゆき 絵コンテ:ちな 演出:ちな 総作画監督松尾祐輔

作画監督:今岡律之

 

ひょんなことから不思議な感情に苛まれてしまった少女の感情を一つ一つ拾い上げていくようなコンテワーク。些細な想いすら撮り溢さないように描かれるレイアウトや芝居は感傷的と言う他なく、言葉ではなく映像から心情に向けアプローチしていくスタンスを徹底し描き切っていました。撮影や色味、背景なども含めた絵としての統一感も素晴らしく、秋という舞台とひなたの心持ちをシンクロナイズしたことが一層の哀愁を感じさせます。非常に辛く、居た堪れなくなる話ではありますが、ひなたの想い(少女の華奢さ)を知る上でこの話は非常に大きな役割を担っていたと思います。作画のタッチも素晴らしく、ずっと記憶に残り続けるであろう挿話です。

参考:『ヤマノススメ サードシーズン』10話の演出について - Paradism

 

少女☆歌劇 レヴュースタァライト 8話 「ひかり、さす方へ」

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脚本:樋口達人 絵コンテ:光田史亮 演出:光田史亮 総作画監督:齊田博之、伊藤晋之 作画監督:松尾亜希子、角谷知美、大下久馬、高藤綾、小池裕樹、小里明花、清水海都、谷紫織、錦見楽

 

あの日のリフレインと、次こそはと願う切なる想い。巡る回想と迷いの中、華恋の言葉を反芻しながら新たな幕を明ける少女の煌めきを噛み締めるため、この話を何度観返し、何度心震わせたかはもう覚えていません。演者の感情に舞台が呼応し、脈動することをレヴューと呼ぶのなら、この話で描かれた舞台はその代名詞足るステージに相応しいものであったはずです。演劇をテーマに据えた作品らしい、ミュージカルの様な躍動と曲調変化。スローモーション(僅か一瞬)の中にこそ舞台少女の輝きを見出すコンテワークも冴え渡り、非常にインパクトと力強さの残る映像になっています。華ひらく剣(つるぎ)の作画もそんな “インパクト” に通づるタイミングで、気持ち良さと変化を体現した動きになっていたのが素敵でした。前半の仄暗さを僅か二分にも満たない情動で突き抜けていくフィルムワーク。この挿話を初めて観た日の感動が今も忘れられません。

 

SSSS.GRIDMAN 9話 「夢・想」

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脚本:長谷川圭一 絵コンテ:五十嵐海 演出:金子祥之 作画監督:五十嵐海、坂本勝

 

夢という状況下を多分に生かしたコンテワーク、表現、モチーフ。緊張感を生み出す警報器のインサートがフィルムに異様な空気感を与え、五十嵐海さんの独特な作画が物語との親和性を極限まで高めていました。クロスカットで紡ぐアカネと三人の群像劇が一つに収束していく終盤は筆舌に尽くせない快感に満ち溢れ、物語の脈動と同時に起こる背景動画がよりドラマチックさを演出していたことには感動の余り、思わず泣いてしまいました。打ち空けようとしないアカネの心情を半ば無理に抉り出すような描写も含め、言葉数少なく悟らせるような映像であったことにも非常に引き付けられます。六花がアカネとの会話から何を想い、何を起こすのか。その先を知りたくなる引き際、ラストシーンの良さが本話の素晴らしさに拍車を掛けていたように思います。

参考:『SSSS.GRIDMAN』9話の演出について - Paradism

 

アイカツフレンズ! 31話 「伝説の101番勝負!」

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脚本:柿原優子 絵コンテ:馬引圭 演出:徳本善信 作画監督:岩崎成希、秋津達哉

 

フレンズ活動一時休止を受けての話し合い、対戦、ステージと色々なものが詰め込まれた話でしたが、その実彼女たちを待ち受けていたのは輝きに満ちた一話の再演でした。みおがあいねをアイドルの道へ誘った日とは逆に、今度はあいねから差し出される手。誰が誰を引っ張るだとか、誰が誰の足手纏いにならないようにするだとか、そういった上下の関係では決してない、友達として、ライバルとしての繋がりをテーマに据えた話。感動的なラストシーンは秀麗な作画と相まって非常に美しく映ります。重なるチャームに灯るハイライトの輝きはまるで小さく彼女たちを祝福するようで、凄く好きなポイント。アイカツ!シリーズの伝統である崖登りもあり、ピュアパレットにとっても一つの節目として非常に色濃い回になっていたと思います。

 

 

以上が、本年度選出した挿話になります。

 

今年は本当に悩みました。悩みに悩んで答えが出ず、2013年以来の年を跨いでの更新になってしまいました。詳しい話数は省きますが最後まで悩んでいたのは『ハイスコアガール』『若おかみは小学生!』『キラッとプリチャン』『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』『ゾンビランドサガ』『ブラッククローバー』などです。他にも初期段階で候補に挙げた作品と話数が多く頭を抱えましたが、最終的には嘘偽りない自分らしい選択ができたように感じています。どの話数も自信をもって大好きですと言い切れる挿話ばかりです。

 

というわけで、今年も本当に多くの素敵な作品に出会えました。充足したアニメライフを送れたことに、そして関わったすべての制作スタッフ・関係者の皆様に大きな感謝を。本当にありがとうございました。来年もたくさんの素敵なアニメとの出会いがあることを願って。また一年、健やかなアニメライフを送ることができればいいなと思います。

テレビアニメED10選 2018

前回の記事同様、放映季順、他順不同、他意はありません。敬称略含む。視聴した作品からのみの選出で、選出基準はいつもと同様 「とにかく好きなED」 です。

 

 

ヴァイオレット・エヴァーガーデン / みちしるべ

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流れる月日も意に介さず、同じ場所に留まり続けた少女ヴァイオレット・エヴァーガーデン。これはそんな彼女が再び歩き始めることを描いたエンディングフィルムであり、その内側に籠る想いにそっと寄り添わすための手紙のようなものだったのでしょう。一歩一歩踏み締める姿と、握るという芝居づけ。少佐と立ち並んでいた彼女が、ただ一人自分と向き合うように佇むことの意味。茅原さんの優しい歌声も相まり、まるで世界全体が彼女を包み込んでいるような印象も受ける映像です。寡黙であり、雄弁なフィルム。想いを馳せる、という言葉がとても似合います。

 

ゆるキャン△ / ふゆびより

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主題歌の『ふゆびより』は今年長らく聴き続けたアニソンの内の一曲です*1。アコースティックのセンチな音色に儚さを感じる佐々木恵梨さんの歌声。映像との兼ね合いにより、白い吐息をも感じる質感の映像になっていました。ソロキャンパーだったリンの心に変化を与えたなでしこたち。水面に打たれる波紋はまるでそんな彼女の心模様を表しているようでグッときます。朝焼けの描写も素敵で、一人起きていたリンが皆と朝陽を迎えるコンセプトの映像がより感傷性を与えています。撮影や影の落ち方も素敵で、観聴きしているだけで心が安らぎます。

 

三ツ星カラーズ / ミラクルカラーズ☆本日も異常ナシ!

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積み重なっていく写真とその中で彼女たちが経験した四季折々の記憶。それをこうも赤裸々に描かれれば胸を打たれないわけがないのです。縦スクロールでイラストを見せていく形のエンディングですが、だからこそコマ送りの様な動きの見せ方と一度だけ差し込まれる芝居づけには、“絵が動く” という私たちが日々当たり前のように体験しているアニメーションへの感動を改めて突き付けられてしまいます。元気一杯な楽曲なのに情感がある、そんなギャップも堪りません。あと、やっぱりめばちさんの絵は本当に素適なんだよなあと、観返すたびに噛み締めてしまいます。

 

HUGっと!プリキュア / HUGっと!YELL FOR YOU

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プリキュアのハツラツとした表情と楽曲の前向きさにいつも元気を貰っています。振り付けも可愛くアイディアが盛り込まれているので何度も観返したくなりますね。背景の色合いやエフェクトがより華やかさを演出している上に、全体でのダンスパートでは目配せなどの芝居が自然に入ることで、歌って踊るという額面以上の楽しさが伝わってくるようです。プリキュアのエンディングにこれを言うのは今さら野暮な感じもしますが、ビジュアルのセルルック感とモーションの豊かさが素晴らしくいつもドキドキさせられます。「ふたりは」のフレーズを片翼に据えた作品らしく、えみるとルールーの仲睦まじさが描かれていたことには感謝。本当に大好きな楽曲、エンディングです。

 

ダーリン・イン・ザ・フランキス / 真夏のセツナ

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第7話の特殊エンディング。海辺での休息を軸に据えた話でしたが、このまま何も起こらなければと、そう思わずにはいられないほど眩しく輝く少女たちの素顔を描き出していました。楽曲のアイドルソングらしい感じは演出を担当された錦織監督の趣味全開なのではと思ってしまうほど*2。青空と逆光、特効でのフィルター掛けが夏らしさを存分に演出していたのも素敵です。一枚絵で紡がれるフィルムですが、作監田中将賀さんを初めとしたアニメーターの方々の絵をじっくり味わえるのも一興。物語としても絵としても良さの詰まったエンディングです。

 

ヤマノススメ サードシーズン / 色違いの翼

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いつも一緒だったあおいとひなたが共有する風景を季節感を伴い描いてくれていたことにまず感動しました。ですが、そんな二人であっても好きなものや考えていることは当然違い、性格だって違う。それをありのまま歌い、受け入れていくようなフィルムには本編との兼ね合いもあり、何度も救われました。秋を舞台にした本作らしい感傷と温もりを感じられるのも良いですね。表情、芝居も本当に素適。“彼女たちの物語” に対し贈られた素晴らしいアンサーフィルムです。

 

ブラッククローバー / 天上天下

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目まぐるしく動く白と黒の対称性がアスタとユノの関係・立ち位置を描いているようで面白いです。スッキリとした色合いがスタイリッシュであり、クール。そこに吉原達矢さんの色気ある作画が合わさることでとてつもない相乗効果を生んでいます。エフェクトフォルムの格好良さ、光と影のタッチ、芝居の気持ち良さ。挙げれば切りがないほどに素晴らしい映像ですが、吉原さんはこういった演出も出来たのかという驚きもあり、二つの意味で衝撃的なエンディングでした。

 

うちのメイドがウザすぎる! / ときめき☆くらいまっくす

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どれだけ遠ざけようとしても、心の奥底からは嫌いになれないんだろうと思えてしまうのがこのエンディングの良さ。楽曲の犬猿ぶりとは裏腹のどこか息の合った動き。息切れしながらでも鴨居につき合うミーシャの内心を想像したくなるのが好きなポイントです。また線のタッチや皺の感じ、作画が本当に素晴らしく演出原画を担当されている山本ゆうすけさんの存在には衝撃を受けました*3。色味も抜群で、演出家・アニメーターとしての味が強く出たフィルムにもなっていたと思います。登場人物たちの内面が表に出ているような芝居、本当に良いですよね。

 

転生したらスライムだった件 / Another colony

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江畑さんの短編フィルムはその独特な動き・芝居もそうですが、なにより物語テイストな部分とその中で描かれる前向きさに凄く惹かれてしまいます。暗く明度を落とした画面から一気に晴れ渡っていくコンセプトが堪らず、まだ本編では未登場であったオーガ族の面々のエピソードを想像させられてしまう強度がこのエンディングにはありました。厳然と横たわる物語の上に氏の好きな動き、絵、コンテワークを載せているというか。草原の上を歩く芝居はそういった要素の噛み合いが顕著に出ていて、独特な間合いの歩き芝居が心穏やかに前へ進む彼らの意思を強く感じさせてくれました。江畑さんの描かれる日常芝居も本当に好きだなと改めて実感させてくれたフィルムです。

 

SSSS.GRIDMAN / youthful beautiful

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本編とは似つかわしくない関係の六花とアカネ。ですが話が進むにつれこうあって欲しい、こうあって欲しかったと思わずにはいられず、このエンディングを観る度に胸が締めつけられました。最終回を迎えた後では解釈も色々在るのだとは思いますが、六花の目線で観た時の孤独ながら孤独には映らないラスト2カットがとても良く、そこに至るまでの回想的な構成につい感傷的になってしまいます。実写背景をベースにしたことから派生する強めな撮影効果も良く、透過光できらめきを演出する反面でラストシーンにはまた質感の違う効果が掛けられているのがエモーショナル。軽く吐息する芝居からはすっと気持ちが抜けるようなニュアンスを感じられるのも良いです。演出・原画を担当された中村真由美さんはこのエンディングで初めて知った方でしたが、絵の良さ、出し惜しみない青春の質感に楽曲解釈と本当に素晴らしいフィルムでした。あと、これは余談ですが、フェチポイント的にはマフラーと巻き込まれる髪の繊細なタッチ・作画がむちゃくちゃ好きです。

 


以上が今年のED10選となります。今年はEDに好きなものが多く他にも挙げたいと思うものが幾つもありましたが、悩みに悩んだ結果、個人的にはもうこれしかないという選出になったんじゃないかなと思います。冒頭でも書いた通り、どのフィルムも大好きでそこに優劣はありません。それぞれの作品にそれぞれの良さがるように、それぞれのエンディングフィルムが素晴らしく、心揺さぶられました。関わられた全ての方々に感謝を。今年も一年、素敵な映像体験を本当にありがとうございました。

 

*1:宇宙よりも遠い場所』の挿入歌『またね』、主題歌『ここから、ここから』と同じくらい

*2:同監督作『THE IDOLM@STER』で発表された『神SUMMER!!』(挿入された回も水着回)が脳裏を過ぎったのも含め

*3:ならさんは存じ上げていたのですが…