読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

テレビアニメED10選 2016

前回の記事と同じ基準。放映季順、他順不同、他意はありません。敬称略含む。視聴した作品からのみの選出で、選出基準はいつもと同様 「とにかく好きなED」 です。

 

この素晴らしい世界に祝福を! / ちいさな冒険者

f:id:shirooo105:20170416194709j:plainf:id:shirooo105:20170416194729j:plainf:id:shirooo105:20170416194746j:plain

牧歌的な主題歌とそのテンポに合わせたカッティング、タイムラプスを使い、ゆったりとした空間の中に時間の流れをしっかりと汲み込んでいるのが素敵です。また時間の流れを描くことは、生活をそのまま描くこととよく似ていると思います。朝は釣りをし、日中は人が行き交い、陽が落ちれば家に明かりが灯り、夕食の準備が始まる。そんな他愛もない、けれど確かに身を委ねたくなる温かさを感じられるのが、このEDの大きな魅力なのだと感じます。柔らかい表情は菊田さんの持ち味、自然体な描写が凄く良いですね。

 

少女たちは荒野を目指す / 世界は今日もあたらしい

f:id:shirooo105:20170416200505j:plainf:id:shirooo105:20170416200521j:plainf:id:shirooo105:20170416200544j:plain

自然体という意味ではこちらも良かったです。ぼかしや逆向、光源を意識したフィルムは儚い学生時代の一時の夢をそこに浮き彫りにしてくれていたと思います。主人公がカメラを回しているのか、誰かが撮っていることを意識した様な、そんな風合い。コンテ演出の井出安軌さんはおねがいティーチャーの監督、OPのディレクションも担当されていましたし、画面作りとしては同じような効果を使っていました。自主制作のような雰囲気が観ていて心地良く、哀愁を誘います。

 

学戦都市アスタリスク / 愛の詩-words of love-

f:id:shirooo105:20170416222344j:plainf:id:shirooo105:20170416222357j:plainf:id:shirooo105:20170416222418j:plain

モーショングラフィックスのような多種多様な表現に画面設計・原画の温泉中也さん、作監川上哲也さんのタッグで見せるワンカット毎の端正で可愛らしい作画がとても魅力的です。芝居も丁寧なものもあれば楽しい動きもあったりしていて、観ているだけで幸せになれます。映像ディレクションは中西康祐さん。普段は撮影監督をやられているみたいですが、画面の質感、特効でのエフェクトのセンスを見ると、その領分での活躍が強く生かされた画面になっていると感じます。感慨深いカット、凄く良いレイアウトも多くてお気に入りの映像です。

 

キズナイーバー / はじまりの速度

f:id:shirooo105:20170416215232j:plainf:id:shirooo105:20170416215205j:plainf:id:shirooo105:20170416215543j:plain

本音を言い合えない少女たちの心模様を描く映像。花言葉に載せられた彼女たちの声を探るもいいし、探らなくてもいい。それでもアンニュイな表情が語る言葉は幾つもあって、それを物語を追いながら見つけていくのも彼女たちへの寄り添い方の一つなのだと思います。白バックを基調とすることで映える個々の存在。繊細な心模様を捉えるような線のきめ細やかさ、繊細さにも心を奪われます。コンテ演出作監原画を渡邉祐記さん。三月のパンタシアのこの楽曲も凄く好きなんですが、作品のテーマ性と音楽との親和性、それらが次元の高いところで噛み合ったフィルムだと思います。

 

アイカツスターズ! / episode Solo

f:id:shirooo105:20170416204243j:plainf:id:shirooo105:20170416204312j:plainf:id:shirooo105:20170416204337j:plain

カット数も多くなくほぼ止め絵で構成されていますが、それが楽曲の圧倒的な魅力と強さを引き立てていて、旧S4の絶対的な強さを物語っていたのが凄く良かったです。余白の使い方や、それぞれに託されたパーソナルカラーとその色味、並びがピッタリ嵌るのは彼女たち4人だからこそのものなのだと思います。無駄はいらず、ただあるのは秀麗な佇まいのみ。デザインの秀逸さと線の美しさ。原画は飯島弘也さん、高野綾さん、作監愛敬由紀子さんと盤石の少数精鋭。演出のイシグロさんも原画陣を信用していたからこそ、ここまで強気な映像に出来たのではないかなと思いますが、このEDについてのお話は是非一度文体でいいので聞いてみたいです。

 

Rewrite / ささやかなはじまり

f:id:shirooo105:20170416202657j:plainf:id:shirooo105:20170416202723j:plainf:id:shirooo105:20170416202447j:plain

江畑さんらしい重心の掛かる動きも素晴らしいですが、それぞれのヒロインに姿を変えながら同じ場所を巡る、というコンセプトが本当に素晴らしく感じられました。一人一人に焦点を絞りながら、またあの部室に集まれる日々を願う本作において、このEDはそのための祈りのような役割を担っていたようにも思えます。それぞれに課せられた運命に囚われる少女たちが伸び伸びとしているのもグッときますし、その点で言えばやはり芝居作画は堪らないものがありますね。個人的には脚を上げてぐっと上体を起こすカットが好きです。こんな日が訪れたらいいな、とそう願わずにはいられません。

 

3月のライオン / ファイター

f:id:shirooo105:20170416210011j:plainf:id:shirooo105:20170416205941j:plainf:id:shirooo105:20170416205910j:plain

もがきながらも必死に前へ進んでいく様、その果てに世界が色づき光が差し込む映像美は本作で描かれていることを強く映し出してくれていたのではないでしょうか。足元を写したカットが何度かあったのも進むことに意識的だったからだと思います。楽曲の高揚感に合わせるよう、おそらくは撮影で画面の明度を一気にあげる。その美的な色遣いと感覚は演出の中村さんの固有のセンスだと感じます。

 

ポケットモンスター サン&ムーン / ポーズ

f:id:shirooo105:20170416212411j:plainf:id:shirooo105:20170416212347j:plainf:id:shirooo105:20170416212436j:plain

コミカルなダンスはこのデザインだからこそ、より生き生きと見えるのだと思います。歌詞とリズムに合わせたポーズやステップはさることながら、その際に生じる体重の微妙な移ろい、加減などの表現も巧いです。ポップなデザイン、演出もそうした作画面に凄く合っていて観ているだけで楽しくなれます。岩根雅明さんの一人原画。作監にはキャラクターデザインの方が入っていますが、もうさすがとしか言いようがありません。

 

夏目友人帳 伍 / 茜さす

f:id:shirooo105:20170416210941j:plainf:id:shirooo105:20170416211016j:plainf:id:shirooo105:20170416210959j:plain

夏目友人帳らしい優しいタッチの映像が胸に沁みます。前景で揺れる穂、その奥で戯れる登場人物たちの声が聞こえてくるかのような風景。原画は松本憲生さん一人での担当。学生らしいやんちゃな動き、タイミングの取り方など、芝居が本当に素晴らしいです。楽曲の哀愁も相まって観ているだけで涙腺にくるものがあります。長年監督を務められた大森貴弘さんが演出をされているだけあってこの作品の魅力の引き出し方もさすがだなと感じます。数カットで纏める潔さというか、じっくり映すことで空気感を伝えてくれる。大好きなフィルムです。

 

フリップフラッパーズ / FLIP FLAP FLIP FLAP

f:id:shirooo105:20170416213622j:plainf:id:shirooo105:20170416213634j:plainf:id:shirooo105:20170416213703j:plain

オーバーなアクションと躍動感のある芝居が素晴らしいです。分割上部でストーリーボードのようなものが展開されているのも良いんですが、その色合いの派手さに負けない動きが凄く魅力的だと思います。大きな口を震えながらあけるココナにはこちらも思わず笑い出してしまいそうな可愛さがあります。非常に曖昧な言い方を許してもらえるなら、とてもアニメーションをしている。そんな風につい思ってしまいます。何度観ても色褪せないだろうなと思える、大好きなエンディングです。

 

 

というわけで、以上が2016年度テレビアニメED作品の10選となります。

 

OPと合わせてやっぱりここでしかない表現ってあって、だからこそ私はここまでこの一分三十秒の映像に魅了されてしまうのだと思います。制作に携わられた方々には心から感謝を。今年もまだまだこれから、楽しみですね。

テレビアニメOP10選 2016

今さらですが昨年放送の作品の内、観るつもりだったものは大まかに観たので今回も更新します。放映季順、他順不同、他意はありません。敬称略含む。視聴した作品からのみの選出で、選出基準はいつもと同様 「とにかく好きなOP」 です。

 

大家さんは思春期! / Shining Sky

 f:id:shirooo105:20170414182407j:plainf:id:shirooo105:20170414175912j:plainf:id:shirooo105:20170414180007j:plain

コンテ演出原画吉原達矢さん。躍動感あるアクションはさすがとしか言いようがありませんが、テロップを生かした遊びと、それだけに囚われない自由な発想、カメラワーク、テンポなどは本当に素晴らしいと思います。実線を排した優しく溶け込むような絵柄が凄く作品にマッチしていて良いですし、それも含めチエの可愛らしさが存分に表現されているのが堪らないです。

 

魔法少女なんてもういいですから。 / 夢色トリドリパレード♫

f:id:shirooo105:20170414184546j:plainf:id:shirooo105:20170414184825j:plainf:id:shirooo105:20170414184618j:plain

色トレスによるまた別の表現と鮮やかな色遣いのフィルムが凄く素敵でした。キャラクターの動きをフォローしたり上下のカメラスクロールなど定まったベクトルの運動で世界観の奥行きを垣間見せてくれるのもとても出合さんらしいと思います。普段はミトンに当たりのキツイゆずかですが、彼との出会いで世界が変わったことがよく分かるような構成にはつい微笑ましくなってしまいます。嶋田さんの可愛いキャラクター、ちょっとした可愛らしい動きもいいですね。

 

NEW GAME! / SAKURAスキップ

f:id:shirooo105:20170414193325j:plainf:id:shirooo105:20170414192942j:plainf:id:shirooo105:20170414193207j:plain

三者三葉でもそうでしたが木村泰大さんディレクションのオープニングフィルムは主題歌を面白おかしく解釈しながらとても誠実に作品の良さを詰め込もうとしている印象があって凄く好きです。わちゃわちゃした動きも丁寧なそれも全てキャラクターの個性から還元されているものだと思います。細かい芝居はアニメーターのアドリブの可能性もありますが、そういった良さを全て一本のフィルムに収められるのは木村さんの強さなんだと思います。レイアウトも格好良い。何度も観返したくなるOPです。

 

アイカツスターズ! / スタージェット!

f:id:shirooo105:20170414195923j:plainf:id:shirooo105:20170414195946j:plainf:id:shirooo105:20170414200003j:plain

コミカルな芝居や元気いっぱいに笑う彼女たちの表情からは見ているだけで元気を貰えます。常に上手から前へ向け走り続けられる彼女たちの強さ、そのストーリーコンセプトもこの時期以降のアイカツスターズ!を象徴しているようでとても良いです。星を見上げる4人の先にあるのはなんだったのか、その答えが今なら少し分かるような気がします。個人的にはローラと出会ってからの足元のアップショット、芝居が凄く好きなんですが、そのあとゆめがローラを引っ張りながら駆け出したのを、今度はローラが追い抜いて、引っ張り返す、みたいなやりとりが凄く今を象徴している感じでいいなあと思います。

 

ポケットモンスター サン&ムーン / アローラ!!

f:id:shirooo105:20170414201056j:plainf:id:shirooo105:20170414201152j:plainf:id:shirooo105:20170414201217j:plain

観ているだけでただただ楽しい、もうそれに尽きます。ここまで砕けた表現で面白おかしさを出しながらアクションではちゃんと格好良く、レイアウト・カメラワークの切れが凄いのは本当に感動します。作画の楽しさを突きつけてくる、そんなフィルムだと思います。ヒロインをとても可愛く描いてくれている、特に可愛いリーリエの表情が色々見れるのもいいですね。有難いです。

 

フリップフラッパーズ / Serendipity

f:id:shirooo105:20170414204206j:plainf:id:shirooo105:20170414204817j:plainf:id:shirooo105:20170414204245j:plain

背動を軽々こなしているように見えてしまう奥から手前、その逆もまた然りな立体感のあるアクション作画には否応なく魅了させられてしまいます。髪の靡きだけ取っても一つ二つの動き方じゃ収まりも利かず、こんなにも作画の表現には幅があって、奥行きがあるんだということを当たり前ではあるのですが、改めて思い知らされました。ダークな雰囲気から空へ抜けるような、彼女たちの物語をぐっと感じられる構成もいいなと思います。蓋を空けてみれば本編が最小限まで圧縮されたようなフィルムでしたね。一つ傘の下に肩を寄せ合う二人に胸を打たれます。

 

Occultic;Nine-オカルティック・ナイン- / 聖数3の二乗

f:id:shirooo105:20170414210554j:plainf:id:shirooo105:20170414210654j:plainf:id:shirooo105:20170414210728j:plain

これが石浜真史。ポップな映像とは裏腹なもう一つの側面。ドライヴ感と一枚の絵として余りにも決まっているワンカットを惜し気もなくコンマ数秒で使い切っていく潔さ。凝ったテロップのフォント、配置もさることながら、動くテロップを高速でフォローしていくなど凄まじい発想をやってのけます。主題歌の音源を大切に扱うようなカッティングも魅力。音の拾い方が本当に好きです。Mr.OP/EDマイスター。まあ私自身が色眼鏡を掛けてしまっている可能性は否定しません。

 

舟を編む / 潮風

f:id:shirooo105:20170414202503j:plainf:id:shirooo105:20170414202549j:plainf:id:shirooo105:20170414202618j:plain

シルエットを基盤とした作画に色味の強い背景のイメージが強烈ですが、この作品らしい丁寧な芝居もしっかりと描かれていて、お気に入りのOPです。常に走ることを止めなかった物語に沿うような疾走感のある主題歌、それに合わせるよう矢継ぎ早に紡がれるカット。光陰矢の如し、なんていうイメージさえ想起させられるこの映像は、月日の儚さと、けれどその一つ一つが今の礎になっていることをしっかりと描写してくれていたように思います。観覧車のモチーフも健在。馬締と西岡の周りをぐっと回り込むようなカメラワークが想定線を割る辺りは本編通した後だとまた一入です。

 

響け!ユーフォニアム2 / サウンドスケープ

f:id:shirooo105:20170414212201j:plainf:id:shirooo105:20170414212318j:plainf:id:shirooo105:20170414212338j:plain

手ブレなど、どこかドキュメント感のあるフィルムなのが凄くグッときます。北宇治高校の一年間を見守ってきたからこそ染み入るものもあるのだとは思いますが、ナメだったり、バックショットだったりと見守るような視線が多いことがおそらくは映像としての一因なのでしょう。話数中盤から彩色されるカットが多々ありますが、そういうこともあって個人的にはモノクロの方が過去の彼女たち(もしくは過去の青春)を覗いているようで好きでした。終盤、楽曲の高鳴りに合わせるようにハレーションを起こすユーフォニアムは、まさに『響け!』のタイトルコールにも似た様相を呈していたと思います。素晴らしいです。

 

ろんぐらいだぁす! / ハートKm/h

f:id:shirooo105:20170414214215j:plainf:id:shirooo105:20170414214741j:plainf:id:shirooo105:20170414214631j:plain

物語を一分三十秒のOPで描き切る巧さ。これは演出家としての吉原達矢さんの凄さでもあると思っています。この作品の魅力を存分に取り込み、ストーリーテリングをしてこうも感情的で熱の篭るフィルムを作ることが出来る。素晴らしいレイアウト。魅力的で美的な撮処理。ぎゅっと手袋を嵌め、ジッパーを引き上げるカットに、手前から奥へピン送りされる五台分の車輪。その全てが彼女たちの想い、心そのものです。本当に素晴らしいフィルムです。心からそう思います。

 

 

というわけで、以上が2016年度テレビアニメOP作品の10選となります。

昨年も丸々一年。本当に素敵な映像体験をありがとうございました。制作に携わる方々には大きな感謝を。今年も魅力溢れる映像が幾つも出てきていますが、まだまだこれからですからじっくり観ていきたいと思います。OPって本当にいいものですね。たくさん観返して、改めてそう思えました。

『小林さんちのメイドラゴン』13話 最終回 いつかの未来と今について

f:id:shirooo105:20170406230450j:plainf:id:shirooo105:20170406230509j:plain

動揺や不安。そういった負の感情への煽り方が本当に巧かったと思います。トールが部屋を出ていく時に始まり、ベランダで空を煽ぐ姿への閑静な繋げ方、カンナが部屋へ戻るとグッと画面の明度が下がり影面積の多い作画になり、音も消える。これは一話や二話、その後の回でもやっていた見せ方ではありますが、この作品は常にそうして個々の中に芽生える感情をその表層へと浮かび上がらせようとしていたのだと思います。

 

それこそ、今回のようにシリアスな展開になればそれは尚のことだったのでしょう。カンナから 「トールは二度と戻らない」 と告げられた時の表情、間、芝居全てが彼女が抱えた感情の代弁者となっていました。パキっとした影づけも、家事に奔走し、失敗を繰り返す小林さんの横顔や背中もその全てが彼女の心の惑いを捉えていた。当たり前です。だって “二度と戻らない” と語られたことの本質的な意味は “トールの死にさえ” 匹敵する彼女にとって最悪の苦難だったとも言い換えることが出来るからです。

f:id:shirooo105:20170406232243j:plainf:id:shirooo105:20170406233442j:plain

それこそ本作は幾度となくドラゴンと人間における寿命の違いと、共に寄り添い続けられないことへの理解を諭していました。そしてトールはそれも理解していたのだと、ファフニールとの会話からは読み取ることができます。けれど、感情と理性は別物です。分かっていても悲しむことを止めることは出来ない。だからこそ、未だにトールは自身の中でちゃんとした折り合いはつけることが出来ていなかったのでしょう。故に目を背ける。未来を見ることを止める。むしろ、今この瞬間、小林さんといる時間を大切にしたいと語ることで彼女は必ず訪れるであろう不安から逃げ続けていたのかも知れません。

f:id:shirooo105:20170406233604j:plainf:id:shirooo105:20170406232309j:plain

そしてそれは小林さんにとっても同じことだったのでしょう。二度と戻らない、言い換えればトールの死に直面したとも言える小林さんは日々の暮らしと仕事の両立で自らの感情を忙殺していたのだと思います。なにより、誰かが誰かを見つめる視線(今話で言えばアバンでの、トールの背中を見つめる小林さんのPOVショット)を時折よく挟んでいたこの作品がそれをほとんどしなくなっていたことも、そういった小林さんの心理的状況が影響していたのかも知れません。けれど、ふと目を配ると、部屋は散らかり、花は枯れ、ゴミは溜る一方で、がらんと空いた部屋が彼女の心の弱い部分を刺激していきます。だからこそ彼女の口から出た「こんなことならオムライス、美味しいって言っとけばよかったな」という言葉。あれは彼女の本音であり、精一杯の強がりでもあったのだと私には思えて仕方がありませんでした。

f:id:shirooo105:20170407000708j:plainf:id:shirooo105:20170407000626j:plain

けれどトールの声が聞こえると彼女は駆け出します。クールさを基盤としてこれまで描かれてきたキャラクターが走ることの意味は相当に大きいと思いますが、それ以上に少女・女性が全力で駆けていく様は時として感情を起源に描かれるのですから、この時の小林さんの内情もきっとその例に漏れず、推して図るべきものだったのでしょう。ダッチアングルになっているのも不安を煽るというよりは、不安に満たされていた心の闇を駆け抜けていく意味合いが強かったように思います。実際は傾いていない廊下ですが、その傾きに足を取られたようによろける芝居は素晴らしいものがありました。

 

そして扉を開け、影を振り払った小林さんの表情、その目に映ったのはあの日に見たトールの姿そのものでした。一話のリフレイン。そして再会。

f:id:shirooo105:20170407001857j:plainf:id:shirooo105:20170407001910j:plain

 けれどそれで彼女たちにとっての苦難が解決したわけでは決してありません。小林さん(人間)の寿命との折り合い。またいつ居なくなるかも分からないことへの覚悟。それらは生半可な気持ちで乗り越えられる壁では決してなかったはずです。またそこには、トール父親に対する説得も同列として含まれていたのだと思います。つまりは他者への理解。受け入れられないことへの寄り添い方。そして “向き合う” ということがどういうことなのか、その全てを幾つかのレイアウトに収めるのはもはやさすがとしか言えません。

 

そしてその応えを小林さんはこう紡いでいきます。「違いを知ることはスタートだ。共に暮らすことも出来る。大切なのはそれがずっと続いていくと信じていけるどうかだ」と。それは彼女が導き出した願いそのものでもあったのだと思います。これまでの暮らしの中で培われたものと、今回の件でそれぞれが思い知った自分自身の弱さ。相手への不干渉を壁として生きてきた彼女たちが、他者と深く関わり合うことで得た感情の数々。誰かを想うというのはこんなにも情熱的で、光に満ちるのだと知ったその経験。その全てを嘘だとは言いたくない。信じていたい。そして、それを願う “今” の積み重ねが自分たちの “未来” に繋がっていくのだと。

f:id:shirooo105:20170407013248j:plainf:id:shirooo105:20170407013304j:plain

なによりそうした小林さんの想いはトールの元にもしっかりと届いたのだと思います。だからこそ彼女は来るべき未来を享受しながら、「それでも小林さんと出会わなければよかったなんて思わない」と断言することができたのでしょうし、そうして見上げる彼女の視線の先にはしっかりと彼女たち三人で歩むこれからの未来が映し出されていたように思います。パンアップしながら空抜けしていくカットに込められた想いも、きっとそんな彼女たちの願いと同じものだったのではないでしょうか。

 

上る坂道と手を振るカンナの姿。非常にエモーショナルなカットですが、このラストカットにこそこの作品が示したかった未来像はあるのだと思います。最終話のコンテは監督の武本さん、演出処理は木上さんと澤さん。独特なカッティングのテンポとレイアウトの強さが出たこの作品の締めに相応しいフィルムだったと思います。全話を通しての感情的な表現、緩やかで温かな画面とのバランスコントロールは武本さんの尽力の賜物だと思います。関わられた全てのスタッフの皆さまにも心から感謝を。本当に素敵な作品をありがとうございました。