2015年テレビシリーズアニメ話数単位10選

今年のアニメを振り返る意味も兼ね、今回もこちらの企画に参加させて頂こうと思います。

・2015年1月1日〜12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。

選出基準の方は例年と同じく 「アニメって本当に面白い」 と思わせてくれたものを選定させて頂きました。それ以外は上記のルール通りで、順不同、選出順等に他意はなし。コメントはTwitterで呟いたものの焼き回しもありますが、その辺りはご容赦を。



響け!ユーフォニアム 11話 「おかえりオーディション」

脚本:花田十輝 絵コンテ:雪村愛 演出:雪村愛 作画監督:植野千世子

もはや自分の抱く夢が物語から切り捨てられてしまうことも予期した上で、それでも尚、頑なに不条理な現実に対し抗い続けた少女のサイドモノローグ。彼女のしたことは決して許されることではないけれど、その真っ直ぐに向けられた羨望の眼差しを前に、ああ、この娘も久美子や麗奈と同じだったんだなぁと考えを改めさせられたのが実に衝撃的でした。醜くも美しい回想曲。彼女に至ってはそう表現するのが適確なのかも知れません。また、そんな不器用さ故の印象の悪さとそうまでしても手放したくない青春への想いの強さを見事なバランス感覚で映像に反映した雪村愛さんの手腕が見事に光った名話でもあるなぁと。

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血界戦線 4話 「BLOOD LINE FEVER」

脚本:古家和尚 絵コンテ:松本理恵 演出:筑紫大介 作画監督:富岡隆司

ジャンプカットでテンポを整え、よりキャラクターの動きをコミカルに魅せる松本理恵監督のコメディパートはいつどんな時に観ても本当に面白い。クスっとくる笑いから完全に殺しに来ている笑いまでとにかくハイセンス。それでいてシリアスなところはしっかりと魅せるし、格好良いところはこれでもかというくらいに格好良く決める。まぁその辺りはこの作品全編通して観ても同じことが言えるとは思うんですが、中でもこの挿話の楽しさと格好良さは他の挿話に比べ一つ抜き出ていると感じたので本話を選出という形に。クラウスの999式も最高にクール。


のんのんびより りぴーと 4話 「てるてるぼうずを作った」

脚本:吉田玲子 絵コンテ:川面真也 演出:福多潤 総作画監督大塚舞、井本由紀
作画監督:冨田康弘、北川和樹、塚本歩、吉田和香子

なかばれんげの成長記録とも化していた本作が抉り込むようにナーバスなポイントを攻めてきた本話。自由奔放なギャグテイストに膝を叩いて笑っていたのも束の間、グッと彼女の心にカメラを寄せていくその落差には正直かなり堪えるものがありました。けれど決して彼女の涙は映さない。悲しいと思う感情を間接的には描いても、彼女の泣き顔だけは決して捉えない。その見守る側に徹した視線こそが本作の魅力そのものなのだなと強く実感させられた挿話でもありました。


暁のヨナ 22話 「歴史は夜作られる

脚本:森下直 絵コンテ:米たにヨシトモ 演出:安藤貴史
作画監督:Cindy H.Yamauchi、楠本祐子、松井祐子

迫力あるアクションシーンと高揚感煽る劇伴で一つのバトルセクションをここまで盛り立てるのかっていう。OPのワンシーンと激戦終盤のシーンが重なる瞬間に得られるカタルシスには思わず身震いする程で、そこには彼女がこれまで歩んできた物語の集大成が全て詰め込まれていた様に感じられます。優しさに満ちた微笑と怒りの滲む敵意の視線。二つの両翼を備えしヨナ姫は、まさしく暁の如き尊厳を獲得していたのでしょう。変則的なEDへの入り方もこの展開ならぐうの音も出ないという程の嵌り具合。終始、スペシャル感溢れる挿話に仕上がっていたように思います。


赤髪の白雪姫 11話 「出会う…初めての色」

脚本:赤尾でこ 絵コンテ:安藤真裕 演出:佐藤育郎 総作画監督:藤田しげる
作画監督:玉置敬子、杉薗朗子

勿論、10話のあれがあったからなんでしょうけど、この回から白雪の唇にハイライトが差すようになったのがこの挿話のチャームポイント。決して劇的にではなく、小さなやり取りの延長線上にそっと恋心を意識させるのが凄く本作らしいと思いました。静かに。凪ぐように。また新たな物語が始まるまでの距離感や心情をしっかりと画面に汲み込むのが本当に丁寧で。ゼンが白雪の手前に跪くまでの一連の所作含め、細かい芝居にまでリソースが行き届いてるのも素晴らしいです。また、いつしか白雪が語っていたあの言葉。「自分の信じる御旗を掲げていれば風は必ず吹いてくれる」。この挿話の中で幾度となく風が吹いた意味も、今なら少しだけその意味が分かるような気がします。


ローリング☆ガールズ 8話 「雨上がり」

脚本:むとうやすゆき 絵コンテ:平川哲生、江原康之 演出:浅見松雄、金森陽子 総作画監督:北田勝彦
作画監督:九高司郎、横田匡史、小沢円、世良コータ、本村晃一

一転二転する展開から迎えたラストステージ。もはや言葉なんていらない。やりたいことにだけリソースを割くスタンスだって絶対に崩さない。どうだ?面白くなったろう? そう語り掛けられた彼の言葉に応えるかのよう奏でられた力強い歌声と三味線の繊細で豊かな音色のハーモニーはまさしく2015年を代表するアニメーション固有のライブパートであったように思います。挿入歌の『STONES』が本作唯一のオリジナルソングというのも最高にロック。やりたいことを詰め込んだ先に絶景が広がっていた、と言っても差し支えないような素晴らしい挿話でした。


落第騎士の英雄譚 4話 「落第騎士 IV」

脚本:ヤスカワショウゴ 絵コンテ:徳本善信 演出:徳本善信 総作画監督野田康行、よち、小松原聖
アクション作監:中西和也 作画監督:明珍宇作、中西和也

同じ徳本善信演出回なら9話や10話も素晴らしかったんですが、かの雷切をもってしてもこの4話は落とせないだろうということでこちらを選出。目まぐるしく動き回るアクションパートから、まるで戦いに挑む一輝の心情に踏み込むようなロングショット。そして二人の恋を祝福するかのよう情感たっぷりに舞う桜吹雪と、“何もできなかった” 妹にまで焦点を当てる登場人物への優しさに、この作品が持つ素晴らしさをしかと見せつけられたような気さえしています。ステラの咆哮も凄く良かった。こうも愛情を真っ直ぐにぶつけてくるヒロインを好きにならない理由なんてありません。


城下町のダンデライオン 4話 「王女のスカート/謎の生徒会長」

脚本:高山カツヒコ 絵コンテ:本南宗吾郎 演出:本南宗吾郎 作画監督:加藤壮

大枠はギャグテイストでありながらここまでフェティシズムに寄ったフィルムはなかなかないのではと思わずにいられなかった本話。何も履いていないことに気づいていないという可愛らしさと、本人が恥ずかしげもなく履いていないものだから「観てもいいのかな…」と擽られるこの背徳感。そりゃあ男子生徒は一斉に立ち上がるし、血を血(鼻血)で洗う結末にだってなるさと妙に納得の出来る愉快な話だった上、こういう回を差し込めるのはやはりこの作品が持つあの大らかさ故なのだろうなと。全体的に脚の表現への拘りも強く感じられたのも良かったです。脚のハイライトが回転するなんて発想がまず出て来ない。凄い。


[関連記事] -『城下町のダンデライオン』 4話の脚の表現について


放課後のプレアデス 8話 「ななこ13」

脚本:浦畑達彦 絵コンテ:春藤佳奈、佐伯昭志 演出:玉田博 作画監督:橋口隼人、空賀萌香

惑星が恒星になるというSF的なロマンを子供から大人へと成長する少女のヒューマンドラマと重ねたのが大変素晴らしかったこの挿話。約三か月後に人類に発見されるであろう惑星にきっとななこは7年前のあの日の自分を重ねて見ていたのだと思います。そして孤独であったあの頃から見れば想像も出来なかった現在の周囲との繋がりを前に、「貴方(あたし)を見つけてくれる人は必ず居るから」と彼女はきっと伝えてあげたかったのでしょう。幼少の頃に感じた孤独はまるで未知の宇宙を一人進み続けることと同義であった、とする物語的な説得力。映像と物語と舞台との親和性。全てが高次元なレベルで噛み合った話だったと思います。


アイドルマスターシンデレラガールズ 17話 「Where does this road lead to?」

脚本:雑破業 絵コンテ:鈴木健太郎 演出:矢嶋武 作画監督:田村里美、古橋聡

姉としての振る舞いに戸惑うみりあと理想と現実のギャップに悩む莉嘉、そして自分らしくあることに迷いを抱く美嘉のネガティブな感情がそれぞれ、少しづつその輪郭を重ね合いながらお互いの足りない部分を補い、教え合い、それぞれにしか出せない答えに辿り着くまでのシームレスな流れが素晴らしく秀逸。雑破業氏の脚本は勿論、鈴木健太郎氏のコンテの素晴らしさまで伺える上、作画や表情づけもとても生き生きとしていて、まさに完璧としか言い表せられません。決めカットの多さもさることながら、莉嘉のアンニュイな横顔なんかは特にキャラクターデザインの良さが表現されていたと思います。アイマス伝統の特殊EDまで決められたらもうお手上げ。この挿話に出会えたことに今はただただ感謝するばかりです。




というわけで、以上が2015年度の話数単位10選の選定結果となります。

最後まで観終えている作品は昨年より減ってしまっている感じですが、今年もたくさんの素晴らしい作品と出会うことが出来ました。こんな私にいつもたくさんの勇気や感動を与えてくれるアニメに感謝しつつ。来年はどんなアニメに出会えるんだろう。そんな期待を胸に、一先ずはこの記事を本年の締め括りとさせて頂きたいと思います。本当にお疲れ様でした。そして、ありがとうございました。