話数単位で選ぶ、2019年TVアニメ10選

今年のアニメを振り返る意味も兼ね、今回もこちらの企画に参加させて頂きます。

・2019年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。

・1作品につき上限1話。

・順位は付けない。

集計ブログ様「話数単位で選ぶ、2019年TVアニメ10選」参加サイト一覧: 新米小僧の見習日記

選出基準は例年と同じく特に面白かったもの、感動させてもらった話を選定させて頂きました。それ以外は上記のルール通り、放映季順、他選出順に他意はありません。敬称略で表記している箇所もありますが、その辺りはご容赦を。

 

衛宮さんちの今日のごはん 13話 「あったか寄せ鍋

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脚本:近藤光、高中優、三浦貴博 絵コンテ:三浦貴博、永森雅人 演出:永森雅人

作画監督:内村瞳子  料理作画監督:浦田かおり

 

この作品が始まり丁度一年が過ぎた頃、それが2019年元旦。最終回であっても他の挿話とやることは変わらないのが本作のらしさです。一日を過ごし、料理を作り、そして食卓を囲む。Fateシリーズでは中々見ることが叶わなかった団欒の風景が、本当にいつまでも続けばいいなと思えたことがとても幸せでした。生活芝居への執念も凄まじく、戸を開けば締めるといった私たちが実生活で当たり前にしていることまでを本作は描き切ってくれます。そういったことを最終回でも変わらずに見せてくれた普遍性にこの作品の良さを改めて感じました。またラストシーンで雪が降るのは『空の境界/未来福音』のおそらくセルフオマージュ。登場するすべての人物たちに等しく幸福が訪れるように、という意図がもしあの作品から受け継がれているのだとしたらこんなに嬉しいことはないな、とつい考えてしまいます。最終回らしい情感のある室内レイアウトも良く、終盤はワンカット毎にグッときてしまいました。

 

モブサイコII 7話 「追い込み 〜正体〜」

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脚本:立川譲 絵コンテ:立川譲 演出:飛田剛 作画監督亀田祥倫

 

霊幻のこれまでとこれからが描かれた逸話。まるで道化師の様に振る舞う彼の言動と、その反動が描かれる中にあって、本当は「何者かになりたかった」とその心根を語るストーリーラインがとてもグッときました。超能力も霊感もない、ただ何者かであった弟子に憧れていただけ。けれどその実、あなたはその弟子にとってとてもかけがえのない存在で、“良い奴” だった。あの日、霊幻がモブへと伝えた言葉が自らへ帰ってくるというストーリーテリングの秀逸さと、それを映像から力強く、美しく補足していたラストシーンは筆舌に尽くせません。街から離れるよう踵を返していた霊幻がモブとまた街中へ消えていく構成も素敵です。アクションでの見せ場が多かった他の挿話も素晴らしかったですが、個人的には情感をたっぷりと感じられるこの話が本当に大好きでした。

参考:『モブサイコ100Ⅱ』7話のラストシーンについて - Paradism

 

マナリアフレンズ 4話 「試験期間」

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脚本:関根聡子 絵コンテ:村山公輔 演出:茉田哲明 総作画監督:吉田南

作画監督:崎口かおり、助川裕彦、吉岡佳宏、角田桂一、重国勇二

 

言葉数少ない中、確かに感じられる感情と二人の関係性。試験期間というパーソナルな時間を必要とする時期をうまく使った擦れ違いと再会の物語に胸を打たれました。アンが独り歩いた後を追うよう、グレアがその足跡を辿るリフレインも素晴らしく、エンディングへの入り方も秀逸。閑静なロングショットでの見せ方、ライティングを駆使した心情表現。まるで一本の映画を観終えた後のような感覚に陥らせてくれる本年屈指の挿話でした。

 

八月のシンデレラナイン 7話 「笑顔の迷子」

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シナリオチーム:田中仁、伊藤睦美、吉成郁子、大内珠帆

絵コンテ:石山タカ明、村山靖 演出:村山靖

作画監督:北條直明、阿形大輔、岡辰也、リバイバル、WONWOO

 

「好きなことは好きと言える気持ち」をなによりも大切に扱ってきた本作ですが、中でもこの挿話はそんな物語のテーマ性と演出との兼ね合いがとても素晴らしかったです。夕景や陰影を使い少女のか細い心象を映し出す巧さ、うまく自分の気持ちを表現できない少女たちへの群像的なアプローチ。被写界深度をもちいた視線の置き方から何度も「あなたを見つめている」ことを描き重ねる緻密さ。そういったものの積み重ねがあったからこそ終盤シーンのカタルシスがこれほどまでに大きくなったのだと思います。相手に対しても、自分の気持ちに対しても向き合うということ、それを証明するよう力強く描かれる逆光の横構図が本当に美しく、堪りませんでした。二人を祝福するようなハレーションと抜けていく青空はまさしくこの作品を象徴していたと思います。そして、この回から変わるエンディングの仕様。感無量とは、あの時のためにある言葉なのだと思いました。

参考:『八月のシンデレラナイン』7話の演出について - Paradism

 

可愛ければ変態でも好きになってくれますか? 7話 「『小春ちゃんは一年生だよ☆』大作戦 完結篇」

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脚本:岡篤志 絵コンテ:いまざきいつき 演出:倉森六郎 総作画監督:伊藤陽祐

作画監督:竹内一将、三関宏幸、山本雄貴、中川貴裕、田中淳次、水谷剛徳、菊池シュンスケ

 

愛した人を「大きく煌めく一等星」と表現するアバンから続けざまに描かれた物語は、まさしく一途にただ一つの星を見つめる天体観測の様相を呈していました。ファインダー越しに見つめ続けてきたあなたへの接触と、告白。傍から見れば変態だと言われてしまうような行為でも、それは彼女にとっての精一杯の背伸びであり、愛情表現なのです。けれど、最後は地に足をつけ、ありのままの私を受け入れて欲しいと語りかける話の流れにはついぞ泣かされてしまいました。あっけらかんと終わるのもこの作品らしく、けれどだからこそ本当に良かったね、と伝えてあげたくなる愛しさに溢れています。なによりこの回のエンディングで流れた曲の名前は『ステラ』。添えられた特殊エンディングの映像もとても素敵で、徹頭徹尾、物語に浸れる挿話だったのではないかと思います。

 

この音とまれ! 20話 「もう一度

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脚本:久尾歩 絵コンテ:吉川博明 演出:奥野浩行 作画監督:梶浦紳一郎、小林利充

 

中盤から登場した堂島先生にスポットを当てた回。若き日の体験から屈折した想いを抱え続けてきた彼女ですが、その想いと経験が自らの教え子たちの手によって “間違いではなかった” のだと反証されていくストーリーがとても胸を打ちました。彼女がなにを見て、なにを感じていたのか。そうした心情の温度を計るよう描かれた寄せる瞳の描写は今話の感傷性を一段と高いものに押し上げていたと思います。生涯を捧げても敵わない相手がいる、叶わない夢がある。けれど、そんな彼女の半生が他の誰かへと伝播し、それが次の世代へと繋がっていく。そしてそれが堂島先生が今この場所に居る理由にすらなっていく。音が人を繋げていく本作にあって、この挿話もまたその代名詞足るものを描き切ってくれました。部室前のバックショット、演奏時のカットバック。そしてラストシーン。観返す度に目頭が熱くなる、素晴らしい挿話です。

 

スター☆トゥインクルプリキュア 40話 「バレちゃった⁉︎ 2年3組の宇宙人☆

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脚本:村山功 絵コンテ:畑野森生 演出:畑野森生 作画監督:高橋晃

 

構図・レイアウトの巧さ、ライティングによる陰影表現から不安と焦燥を克明に描いた本話。ララが宇宙人であることが周囲に明るみになってしまう展開と、それにより起こる分断が一つ、この挿話のテーマだったのでしょう。奥行きのある画面が物語と同調することで、より感傷性が増していくフィルムスタンス。宇宙人であり、プリキュアでもある羽衣ララという一人の少女がなにを感じていたのかを最優先に描こうとする映像が本当に素適です。そしてその映像の集積の先で彼女自身が「私は2年3組、羽衣ララ」だと声高に叫ぶのだから、本当に堪りません。色々なものに出会い、関係性を育む中でなにか一つ揺るぎないものを見つけるというのは今作の劇場版『星のうたに想いをこめて』でも描かれたこと。最初観た時はボロボロ泣いてしまった挿話、他にも良いなと思える話数はありましたが個人的にはこの話が一番好きでした。本当に素晴らしいです。

 

Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア- 8話 「魔獣母神」

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脚本:小太刀右京 絵コンテ:赤井俊文 演出:原田孝宏 総作画監督高瀬智章

河野恵美 作画監督:小松原聖、川上大志 アクション作画監督:大島塔也

 

凄まじいアクション作画の数々に圧倒されたこの回。担当されたアニメーター方の個性が光りつつそれが一つのシーン、フィルムとして燦然と輝くその凄みには心から感動させられました。なにより、自らを「仮初の命」と称する牛若丸を躍動するアニメーションで描き続ける意味は余りにも大きく、彼女の身体性をアニメイトすればするほどその命の輝きもまた増していくというこの構図には強い感傷を抱かずにはいられませんでした。1000年先の人類史のために命を賭した彼女の決意もさることながら、その1000年先の人類史に生きる人々がこうして彼女をアニメーション(仮初の命)として顕現させている奇跡。そういったある種メタ的な見方が出来るのも本話を愛してやまない理由の一つ。個人的に追い掛けている大好きなアニメーターの方々の作画を濃く堪能出来たり、観終えた後しばらく放心状態になってしまったりと、たくさんの意味で強烈に想い出に残る挿話でした。

 

ハイスコアガールⅡ 24話

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脚本:浦畑達彦 絵コンテ:山川吉樹 演出:山川吉樹

 

日高小春という一人の少女の葛藤、憂鬱、そして決意。彼女自身の感情については幾つもの話数で色濃く描かれてきましたが、その全てを含み込んだ彼女という人間の本質とその根幹に根づく想いがこれほど全面に*1描かれた回は他にないと思います。本当は自分だって大好きなはずなのに「知ってる」と応えられる彼女の強さ。その姿を見て咽び泣いてしまったあの日のことは、生涯忘れないと思います。背にした空の青さはきっと、その青春性と日高小春というただ一人の物語へ贈られた謳歌だったのかも知れません。走り抜ける春雄へ頑張れ!と心から思えたのも、好きなものに一直線な彼を彼女がどこまでも真っ直ぐ愛していたから。それ以外の理由はただの一つもありません。フィルム全体を通してライティングの良さが光っていたのも秀逸。春雄が家から出ようとする辺りなど、とても良いシーンがたくさん詰め込まれています。

 

リラックマとカオルさん 1話 「花見」

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脚本:荻上直子 ディレクター/小林雅仁 チーフアニメーター/峰岸裕和

 

ファーストカットからして異彩を放っていた今作。ストップモーションだからこそ生きる柔らかい光とそこからもたらされるライティング、それを支える撮影の良さは屈指の素晴らしさだったように思います。時間を大切に切り取る間の使い方は、まさしく生活アニメのそれで、個人的には大好きな安濃高志監督作『ヨコハマ買い出し紀行』を思い出しました。リラックマたちのゆるいようで、その実、主人公へ優しく接しようとする仕草や行動にはつい笑みがこぼれてしまいます。一つ一つのレイアウトも秀逸、芝居づけも丁寧、雰囲気やテーマ性も素敵で、観終えた後とても温かい気持ちになれたことを今でも鮮明に覚えています。あと挿入歌の入り方がここ最近で一番自分に刺さりました。素晴らしいです。

 

 

以上が、本年度選出した挿話になります。

 

今年は今までで一番悩みました。昨年から入れようか悩んでいたWEB配信系のものを今回初めて組み込んだのも一因かも知れません。他最後まで悩んだのは『ちはやふる3』『臨死!!江古田ちゃん』『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』『本好きの下剋上』『キラッとプリチャン』『アイカツオンパレード!』の各話。そして、どうしても入れたかったのですが苦渋の末、選出外にしてしまったのが『五等分の花嫁』11話です。本当は入れたかったのですが、どうしても選び切れずに今回の様な形になりました。他にも初期段階で候補に挙げた話数もありましたが、最終的には自分らしい選択ができたように感じています。どの話数も自信をもって大好きですと言い切れる挿話ばかりです。

 

また本企画について、これまで10選の集計をして下さっていた新米小僧さんが今回を節目に当企画から離れることを伺いました。詳細は冒頭リンク先のブログにて書かれていらっしゃいます。私がこの企画に初めて参加したのは2011年なので、実に9年間もお世話になったことになります。アニメ感想ブログ一つとってもその数が減少し更新されていく頻度も落ちる中、この時期になるとこぞって皆さんが記事を書き出し盛り上がっていた一因は、やはり新米さんが纏め、一覧として見やすいよう更新し続けて下さっていたからだと個人的には思っています。寂しい気持ちもありますが、まず今伝えたい言葉は感謝の気持ちに他なりません。新米さん、本当にありがとうございました。そしてお疲れ様でした。心より。

 

今年も本当に多くの素敵な作品に出会えました。関わったすべての制作スタッフ・関係者の皆様に大きな感謝を。本当にありがとうございました。来年もたくさんの素敵なアニメとの出会いがあることを願いつつ。また一年、健やかなアニメライフを送ることができればいいなと思います。

*1:演出的にも

テレビアニメED10選 2019

今年もこの企画に参加させて頂きます。放映季順、他順不同、他意はありません。敬称略含む。視聴した作品からのみの選出で、選出基準はいつもと同様 「とにかく好きなED」 です。

 

ぱすてるメモリーズ / Sparkle☆Power

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遊び心のあるトランジションにふくよかなフォルム、爽やかな楽曲にフェティッシュな仕草を含ませる大胆さがすごく素敵です。さらっと見せる芝居の一つ一つが巧く、コンテ演出、作監原画までをこのEDでこなした藤井慎吾さんの凄味を改めて突きつけられるようでした。えっちなんだけど、可愛らしさが勝つのはひとえに楽曲のパワーや色味、そして少女性を含む仕草の賜物。レイアウトの良さなども堪らなく、非常に素晴らしいバランスで構成されたショートムービーだったと思います。大好きです。

 

ブギーポップは笑わない / Whiteout

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作中でもそうであったように唐突に表れるブギーポップの不気味さ、遍在性をエンディングという短い映像の中で凝縮し、表現し切っていたのが素晴らしかったです。とても静かで静止したような世界の中だからこそ、ちょっとした仕草、靡きが映えるというのもまた前述した作品性に寄与してのことなのだと思います。始まりと終わりの浜辺、まるで白昼夢のような間奏に佇むブギーポップの正体。色味、撮影も含め、一つのフィルムとしての統一感、完成度が凄まじかったです。こちらのコンテ演出、原画も斎藤圭一郎さんが一人で役職をこなしています。本編でも演出を担当されていますが、こういった日常芝居を盛り込んだ閑静な斎藤さんの映像づくりはとても素敵だなと感じています。

 

かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜 / チカっとチカ千花っ♡

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第3話で流れた特殊エンディング。この映像を初めて観た時はまさしく度肝を抜かれました。コンテ演出、原画を担当された中山直哉さんはロトスコ―プ技術を使いこのパートを描かれたと仰っていましたが、リアル度合の高いダンス芝居とコミカルでアニメ的な表情を織り交ぜ、実写参考からうまくニュアンスを拾いこれほどまでの動きを完成させるのはまさに感嘆する他ありません。ほぼ定点でのダンスエンディングというのは近年でも『涼宮ハルヒの憂鬱』を筆頭に定期的に更新されているパターンではありますが、背景に溶け込んだソファーや、アイテムを使ったりとアイディアに溢れていたのもまた堪らないポイント。藤原千花という登場人物の性格上、こういうことやりそうだなと思わせる映像であったこともなんだか嬉しかったです。個人的には後ろを振り向く時のスカートの翻りが大好き。最高のフェチ靡きです。

 

私に天使が舞い降りた! / ハッピー・ハッピー・フレンズ

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オープニング同様、観ているだけで楽しくなり、踊りたくなってしまうエンディングです。元気一杯に歌われる楽曲の素敵さや、つい口ずさんでしまいたくなる「ハッピハッピフレンズ」のフレーズなどもはや好きになれる要素でしか構成されていません。映像自体はワンカットのみで、尖った演出でどうこうするというタイプのエンディングではありませんが、なにせこれは可愛らしい5人の歌唱と仕草をしっかりと見せるためのフィルム。だからこそ、それでいいのでしょう。コンテ演出を担当された桒野貴文さんは今回、背景・撮影も兼任。元々撮影監督などの立場で多くの動画工房の作品をけん引してきた方です。装飾の可愛らしさや、画面構成は桒野さんの手腕なのかなと感じています。パカパカした芝居も本当に可愛い。すべてが可愛すぎです。

 

盾の勇者の成り上がり / きみの名前

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尚文とラフタリア、二人の境遇と出会いを描いた短編としてとても素敵なエンディングでした。全体的に淡いタッチで描かれた映像でありながら、時に強いコントラストと暗い質感で描かれるのは彼が抱いた感情がゆえ。それでも、優しいメロディラインと歌詞が合いまり、次第にほぐれていくような実感を持てたことは、本編を観てつらさを感じてしまっていた自分にとって、まさに救いでした。どれだけつらい物語が描かれていたとしても、「それでもーー」と反語をもってその背中を押してくれるエンディングの存在はもうそれだけで有難いのです。忌み嫌われる尚文の盾を優しく包み込むラフタリアの笑顔。その構図が指し示す意味は余りに大きかったのではないでしょうか。心から素敵だと思えたエンディングです。

 

ひとりぼっちの○○生活 / ね、いっしょにかえろ。

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もうイントロのメロディを聴くだけで泣きそうになってしまうのですが、それほどまでに愛おしいと思わせてくれたショートムービーです。ぼっちの足元のアップショットから始まる意味は余りにも大きく、まるで彼女が踏み締める一歩一歩がこの物語の礎なのだと思い知らされるようでした。彼女たちが歩くのをフォローしていく、というのが構成の大部分を占めているのですが、話が進むにつれ友達となっていく子たちがフレームを飛び出して会いに来るというのがまた涙のツボ。それぞれが自らの心の内を飛び出す意味でも、ぼっちに友達が出来るという意味でも、ギミックとして本当に美しいなと思わされました。楽曲も素敵。一緒に帰れるということが、もう友達であることの理由なのかも知れません。『爆笑ぼっち塾 校歌』の特殊エンディングと最後まで悩んだのですが、以上の理由からこちらに。

 

 

みるタイツ / True Days

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身体にテロップを貼り付ける、というのは確か『To LOVEる』のOPが原体験で、本当に大好きな見せ方なのですが、本作品でもそれを観れたことがとても嬉しかったです。脚を駆使したフェティッシュさを取り込むのも本作らしいアイディアで、ばたつく脚や足の表現は観ていて堪らないものがあります。色トレスを使い実線を排すことでより色味を均一化し、淡い感じにしているのもフィルムが柔らかく感じられとっても好きです。コンテ演出を担当されたのは監督も務められた小川優樹さんですが、こういった表現は同監督作の『大家さんは思春期!』OPでも同様の見せ方が使われています。あちらは演出を吉原達矢さんが担当されていますが、監督作を通じ演出が引き継がれていっているような感じも受けて少し嬉しくなってしまいました。

参考記事:テレビアニメOP10選 2016 - Paradism


キラッとプリ☆チャン / じゃんけんキラッと!プリ☆チャン

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一人のプリチャンアイドルとしてここまで懸命に歩み続けてきた桃山みらい。その瞳に輝く流れ星はきっと彼女の憧れをもそこに映し出していたのでしょう。けれど、そんな彼女の「やってきた」ことを追い掛け続けてきた少女が居たことを伝えるエンディングテーマには何度感傷に浸らされたか分かりません。元気で可愛らしい表現やメロディの中に確かな感情が描かれていくのは、それこそプリチャンという作品がずっと大切にしてきたテーマ性なのだと思います。だからこそ、そういった要素がこのエンディングに凝縮されていると思えただけでもう嬉しくならないわけがないのです。綴られていく一枚絵の良さと物語性も拍車を掛け、本当にこの作品をさらに前へ推し進めてくれたエンディングだったと思います。

 

ライフル・イズ・ビューティフル / 夕焼けフレンズ

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一人部室で眠っているひかりの周りに仲間が集まってくる、という大きなフィルムコンセプトがとても素敵です。部室で遊び帰る、ただそれだけのことを青春と呼ぶんだと、まるで突きつけられるようでした。撮影の良さや、レイアウトの巧さもそういった感傷性に拍車を掛けてくるのがまた堪りません。コンテ演出、作画を江畑諒真さんが担当。作画における秀でたグラビティコントロール表現が氏の凄味でもありますが、起き上がるひかりの繊細な指先表現に江畑さんはこういう芝居も素敵に描かれる方だったことをまざまざと思い起されてしまいました。それがまた嬉しく、芝居の余白に情感を宿らせることが出来る巧さに感動を覚えました。

 

炎炎ノ消防隊 / veil

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バンドテイストなメロディに音ハメしながら紡がれていく一枚一枚の絵が余りにも美しく、情感があり、素敵でした。作品自体をまだ序盤までしか観れていないのもあり、アイリス絡みの話に関しては言及できませんが、それでも彼女の生い立ち、バックボーンを強烈に、また寡黙に想像させるという意味ではこれ以上の映像はないように感じました。逃げ惑う幼少期のアイリス。一度寄ってからの走り芝居はまさしく圧巻で、リピート作画ではない、まだらな手の動きがその必死さと恐怖心をさらに駆り立て観ていて非常に痛ましい気持ちにもさせられました。手のフォルムや煽情的なカットなど、ところどころフェティッシュなパーツやカットが入るのも映像全体を少し柔らかくしている感じがして、とても良いです。コンテ演出、原画、色彩、背景まで一手に担当されたのは紺野大樹さん。色の良さ、圧倒的な絵の巧さ、そして作画、物語と何拍子も揃った最高のエンディングだったと思います。素晴らしいです。

 

以上が今年のED10選となります。OPに引き続き大分悩みましたが、終わってみれば例年通り自分の好きが詰まった選出とになりました。本編とはまた違う魅力の詰まった短編アニメーション。それでいて物語により深くまで潜らせてくれるものがあったり、楽しいを詰め込んだものがあったりと、たくさんの感情をもたらしてくれるエンディングって本当に良いものですね。最後に、関わられた全ての方々に感謝を。今年も一年、素敵な映像体験を本当にありがとうございました。

テレビアニメOP10選 2019

今年もこの企画に参加させて頂きます。放映季順、他順不同、他意はありません。敬称略含む。視聴した作品からのみの選出で、選出基準はいつもと同様 「とにかく好きなOP」 です。

 

私に天使が舞い降りた! / 気ままな天使たち

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観ているとこちらまで踊りたくなってしまうような、本当に可愛らしくて楽しいオープニング。クラップの心地良さと歌詞・音ハメもさることながら、遊び心満載なテロップ芸*1にも心躍らされます。オープニングセレモニー的な楽曲も素敵。可愛らしい女の子たちの可愛い仕草がたくさん観れるのがとにかく幸せで、大好きでした。

 

ぱすてるメモリーズ / Believe in Sky

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白を基調としたフィルムコントロール。テロップが載ることでカッチリと嵌る大胆な空間の使い方や、白一色のBGだからこそより活きる彩度の高い配色・色トレス処理など多くの要素がクールに決まっています。楽曲の爽快さと、アクションパートの絡みも最高ですし、とにかくレイアウトが格好良いです。毎回、観ていてワクワクさせられたフィルムでした。また、最後に青空が描かれていくのも素敵です。失われていく作品たちとの記憶を救うというコンセプト的にも、白基調から一面青への変遷はグッとくるものがあります。

 

MIX / イコール

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一瞬の輝きを捉えるような臨場感あるカットの数々。本編もさることながら、ここで描かれるスイング・スロー・スライディングといった野球周りの作画も非常に見応えがあります。フィルムの青さと陽射し差す透過光の滲みはまるで彼らの青春を色濃く彩るようで、この映像だけでも胸を打つものがあります。登場人物たちの関係性にもそっと触れるような構図も情緒的。カッティングも良く、何度でも観たくなるオープニングです。

 

ぼくたちは勉強ができない / セイシュンゼミナール

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各ヒロインにスポットライトを当てつつ、それぞれが抱く憧憬にまで触れていく素晴らしい群像的オープニングです。勉強をすることが最終的な目的ではない本作にあって、けれど勉学に励むことがあらゆる想いへの近道になる物語のロジック。そんなテーマ性を組み込んだ映像はまさに圧巻で、だからこそ筆を持つ、参考書を開くといった机に向かう所作の一つ一つに情感は宿るのだと思います。あらゆるフェティシズムを内包しながら爽やかに終わるのも素敵。サビに入り次々描かれていく芝居作画にはもう感嘆の溜息しか出ませんでした。

参考記事:『ぼくたちは勉強ができない』OPについて - Paradism

 

盾の勇者の成り上がり / FAITH

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尚文とラフタリアが歩んできた道のりを反芻せざるを得ない、まさに物語を圧縮した短編とでも言うべき映像。いつだって彼の側には彼女が居て、彼女の側には彼が居た。それを痛感させてもらえることが、私にとってはもう喜びでしかないのです。尚文はもう独りではないと感じられるカットの数々、色づく世界、その一つ一つが感傷的でとても優しいものであったように思います。駆け回るような凄まじいアクションカットの連続、変則的な広角カットなど切れのある絵と動きが映像を盛り立ててくれていたのも堪りませんでした。ラフタリア、フィーロたちが下らからせり上がってくるカットは物語的にも作画的にも大好きです。

 

キャロル&チューズデイ / Polly Jean

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二人でならどこまでも、いつまでも一緒に歩んでいけると思えるのがただただ素晴らしいです。PVチックであり、絵画的。決して大袈裟ではなく全てのカットから絵の良さが溢れ出していました。撮影・色味・ライティングが特に素晴らしく影を使った遊び心ある芝居に物凄く惹かれました。楽曲も素敵ですし、このオープニングを観ているといつの間にか感傷的な気分にさせられてしまいます。この作品では一つ目のオープニングとどちらにするか少しばかり悩みましたが、単純に好きなカット、絵が多かったとかそんな些細な差でしかないような気がしています。

 

アサシンズプライド / Share the light

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一つ一つの音に合わせるような小刻みなカッティングが非常に心地良く、視覚体験としても繰り返し観たくなる快感に溢れていました。映像表現のアプローチも面白く、パキっとした影づけなど情報量の少ない画面もあれば、その逆も然りと、撮影やカット構成の振り幅がかなり大きいのが魅力です。でもそれが散漫とせず、一つに纏まっている。複雑なメロディラインだからこそといのもあるのだとは思いますが、音へ寄せる多彩なアプローチの発想とそれを表現し切る手腕には、ただただ舌を巻くばかりです。前半のサビと後半のサビとで芝居を加えたり、少しだけ印象を変えたりと、まさに多岐に渡る表現で構成されたフィルム。もう最高です。

 

ポケットモンスター / 1・2・3

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初代ポケットモンスターの楽曲を彷彿とさせられるフレーズや、曲のわちゃわちゃしたテンションを映像からも盛り立ててくれていたのが非常に素晴らしかったです。ポケモンやサトシたちの表情、芝居の豊かさにアクションの大胆さ。そしてなによりダンスパートの面白可笑しさ。楽しいを煮詰めたような映像なのに、なぜか観終えると感動して泣きそうになってしまうのはまさしくアニメーションの力なのだと思います。最後のカットに線画が混ざっていたことへの感動も、きっと同じことなのでしょう。それはまさしくアニメーションへ焦がれ、作画というものに惚れ込んでいった日々の記憶を走馬灯のように彷彿とさせられた瞬間でした。

 
キラッとプリ☆チャン / キラリスト・ジュエリスト

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タイミング・ポージング・表情。そのどれをとっても素晴らしいとしか形容できない桃山みらいのダンス作画ですが、そんな彼女のパートに驚かされたのも懐かしく、今では毎話彼女の笑顔から元気を貰っています。他にもダンスパートが多く、観ていて本当に楽しいオープニングですが、この作品が積み重ね描いてきたことが凝縮されていたこともこのフィルムを好きになった理由でした。それは、今度はあなたの番!と言わんばかりの芝居・コンテワークをもって虹ノ咲さんが描かれていたことに他なりません。みらいの振り向き芝居*2に呼応するよう、ふわっと浮く前髪。その奥から覗く前を見据えた瞳。そのすべてにこの作品が描き続けてきた「やってみる」ことへの憧れが詰まっているようで強く感動させられてしまいました。あわよくば彼女にも善き未来がーー。そう願わずにはいられないフィルムでもありました。

 

ちはやふる3 / COLORFUL

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これまでの物語を振り返るよう描かれた強烈なフラッシュバックはおそらく、ちはやの中に溜まり続けた多くの感情や想いそのものでもあったのでしょう。彼女が見てきたもの、感じてきたことがどんどんと映像の中で繋がり、息を吹き返していくイメージ。バレットタイム的な作画で札を取る瞬間を力強く描いていたのは、そういったものの集結が競技カルタにおける決め手の一瞬に宿るからなのだと思います。一人の少女が背負ってきたもの、その半生を彩る意味でも余りに鮮烈であったオープニングです。バックショットなどエモーショナルなカットが多いのも、いよいよここまで来たことをまざまざと見せつけられるようで思わず唸らされました。本当に素晴らしいです。

 

以上が今年のOP10選となります。今年は楽曲ですごく惹かれたものなどもあり、最後の詰めで大分悩みましたが、それ以外は割とすんなり決まったような気がしています。終わってみれば例年通り自分の好きが詰まった選出になりました。本編とはまた違う魅力の詰まった短編アニメーション。それでいて物語を圧縮するよう多彩に描かれるオープニングって本当に良いものですね。最後に、関わられた全ての方々に感謝を。今年も一年、素敵な映像体験を本当にありがとうございました。

*1:まるで石浜さん演出の『かみちゅ!』OPを連想させられるような

*2:この芝居がめちゃくちゃ良い...!!