『電脳天使ジブリール』OPについて

空中幼彩さん、渡辺明夫さん、URAさん、そしてUさんの歌声。彼らが織りなす化学反応と言えばもはや振り返るほどに懐かしい約10年前の映像が思い出されます。それが『魔界天使ジブリ―ル4』OP。女の子らしいまるっとしたデザインと、可愛いらしく大胆な動き、それを巧みな演出と編集により彩ったあのショートムービーは余りにも鮮烈で、今でも鮮明に思い出せるほど大好きなオープニングです。それこそ『CARNIVAL』や『はるのあしおと』、『efシリーズ』、『明日の君と逢うために』など自身にとって特別な美少女ゲーム内のアニメーションムービーは幾つかありますが、当該作品もまたその例に漏れずとてつもない衝撃を私に与えてくれました。

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そんなオープニングと同じ座組によって制作された同ジブリールシリーズのムービーが投下されたのが、つい先日のことでした。冒頭からカットインされる「NO SIGNAL」の文字とその勢いのまま繋がっていくベクトルを意識したトランジション。次から次へと畳み掛けるようシームレスに場面転換されるカットに、スクロールからフレームインする柔らかく可愛らしい見覚えのある歩き芝居。もはやこの時点でスマホを持つ私の手は震えていました。タイトルバックのカットではついぞ泣き出しそうになってしまうくらい、それほどまでに今この映像が観れることへの喜びは大きかったのです。

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まるで「これを待っていたんだろ?」と言わんばかりのセルフオマージュ。キューブが変化し6の文字を形成するまでの高揚感は筆舌に尽くせず、文字配置、煽りのアングル、色味含めそのすべてが懐かしく、本シリーズの象徴的なシルエットを象っていました。*2

 

前景と後景を駆使した画面の奥行きの表現や、楽曲に対する理解度の高い歌詞・音ハメの数々。カットを割り切ってしまうのではなく、しいて言うのならば "跨ぐ" ことでまるでワンカットの様に見せていることも没入感の一因になっているのでしょう。他にも色々と語り口はあるのだと思いますが、言葉だけでその良さを表現するには限界があると言いたくなる程に、映像の楽しさ、豊かさを表現してくれる縦横無尽の映像表現はまさしく唯一無二のURAマジックです。もちろん、渡辺明夫さんが描かれたアニメーションの素晴らしさや絵コンテ段階におけるアイディアが下地にはきちんとあるはずですが、URAさんの編集センスがあって完成する映像であることは『いただきじゃんがりあんR』や初めてのアニメ参加となった『<物語>シリーズ セカンドシーズン』*3での仕事を観れば納得できるのではないかと思います。

 

URAさんは現在『バイブリーアニメーションスタジオ』に所属*4しているようですが、またこうして古巣の作品でもその手腕が見れたことは本当に嬉しい限り。氏のディレクションムービーに魅了されている一人のファンとして、これからも色々な作品でその姿を見れれば良いなと思っています。そしてなにより、新しいジブリールシリーズの門出に祝福を。このオープニングが観れて本当に幸せでした。

 

参考記事:

*1:サムネ参考画像:

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*2:ジブリ―ルシリーズ5に当る『戦国天使ジブリ―ル』も同様のタイトルバックを使っている

*3:猫物語(黒)、猫物語(白)両オープニングディレクターを担当

*4:同社制作の『アズールレーン』や『グリザイアの果実』などに参加

『恋する小惑星』のEDについて

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感傷が染みわたるような映像と楽曲。物想いに耽る少女たちの表情を一枚一枚切り取り、じっくりと見せていく構成には情感がたっぷりと乗っていました。1話を観てもみらとあおの関係性が物語の軸になっているのは間違いないのだと思いますが、その物語の中で出会うことになるそれぞれの少女たちの物語までも微かに匂わせてくれていたのがとても良いなと感じます。そして、多くのカットが “少女がなにかを見つめる” ことへフォーカスを当てたものであったことはきっと意図的で、そこには本作にとってとても切実な意味があったのだと思います。

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それはこういったカットでも同様でした。ストラップをつつき、見つめるあお。暗がりの部屋の中で屈むその姿は、それこそ作中でも描かれたように奥手になってしまった彼女の心模様を写し込んでいるようでした。しかし、その光景とは対照的なあおの優しい視線、月灯りが差し込むことで生まれるビジュアルの質感変化はこのカットにおいてなによりも肝要だったはずです。

 

なぜなら、あおにとってくじらのストラップは懐かしくも輝く想い出の象徴であり、彼女を引き上げてくれた “みら” その人を映し出すモチーフであったからです。だからこそ、それを見つめる表情が和らぐ、和らぐからこそ暗がりに光が差すという情報の重なりがぐんとフィルムを物語的にしてくれるのです。それこそ、ベランダから注ぐ月灯りを映したあとに、ベランダに佇むみらを描くというのは前述したことに輪をかけ物語的です。実際にはみらがあおの側に居る訳ではなく、カメラワーク的にも地続きではありませんが、揺らめくカーテンの動きを軸にしマッチカット的に描くからこそ二人の関係がとても地続きに移るという、これはまさに演出のマジックです。

 

二人が再開することで物語がまた動き出すように、どこまでも二人の想いは繋がっていることを示すコンテワーク。だからこそ、みらが星を遠望するカットの強みは一層増し、そのカットが彼女一人の想いを描いただけのものではなく、二人の関係性を描いたものとしても映っていくのです。

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そして、そういった夜空を見上げる描写は前述した “見つめること” に込められた切実さへと繋がっていきます。みらとあおだけではなく、皆がなにかを見つめ想いを馳せる。例え同じ空であってもそこには色々な空の表情があり、多くの星が輝くように見つめる先に浮かぶ想いというのは決して一つではない。そういったことを端的に描いていたのがおそらくは序盤のカット群であり、空を見上げたこの定点カットでもあったのでしょう。広く撮られた一面の空、満天の星。そこには、それぞれの視線の先にそれぞれの想いがあることを描き示すような質感がありました。

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また “見つめる” というテーマ性においてはこういったカットも素敵でした。相手を見つめる視線をより力強く描くため、相手が居る方を大きめに空けるレイアウト。特段、珍しいレイアウトではないのだとは思いますが、ここぞというシーンで使われるこういった趣きのあるカットは非常に感傷的に映ります。シネスコサイズであることが横への意識をさらに駆り立ててくれている面もありますが、なによりこのエンディングが視線に重きをおいたフィルムであったからこそ、前述してきたような情感の積み重ねがこのカットにも多く乗っていたのでしょう。二人の表情の良さはもちろんですが、それを切り取るフレーミングの大切さを感じずにはいられないカットです。

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そして終盤。最後のバックショットとそのカメラワークには、なにより感動させられました。みらに手を引かれあおが立ち上がるという状況を描いたカットですが、あおが立ち上がり切る前にカメラはPANアップを始め、二人をフレームの外へと置き去りにしてしまいます。カット的に考えても二人の芝居は立ち上がるところまでしっかりと作画されているはずで、その姿をFIXで映し続けても演出としては映えていたはずです。しかし、そうはせずに敢えて二人をフレームから外す選択をしたことにはやはり相応の意図があるからだと思うのです。

 

その内の一つに、このカットが映される際に「一人じゃないから歩き出せる」という歌詞が歌われており、そのフレーズが彼女たちの心情描写に対する担保になっていたから、というものが挙げられます。エンディングというある種、MV的な要素があるからこそ出来る歌詞との親和性を高めた演出。「二人の関係を歌っているのだから映像としては(立ち上がり切るところまで)描かなくても大丈夫だ」という芯の強い見せ方です。くわえて、前段で挙げた二人のアップショットなどがこのカットの前に映されていたのも大きいはずです。見つめ合い、表情を綻ばせる二人を描いていたのもそうですし、手と手が取り合う瞬間をしっかりと映していたのも同じことです。二人の関係を色濃く描いたカットが既にあるからこそ、敢えて立ち並ぶ二人は映さないという映像の構成。そういったカッティングの組み立て、引き算の演出が「一人じゃない」ことをさらに盛り立て意識させてくれた結果、より伝わってくるものというのはやはりあるのだと思います。

 

そしてその代わり*1に夜空を映す。それが本当に、とても良いのです。なぜなら、ここで映される満天の星空は二人が過去に交わした「新しい小惑星を見つける」という約束の象徴でもあるからです。それをあおが立ち上がり、二人が並び切る前に映し始めていくというのは、暗に並び立つ彼女たちを見ずともその関係性はこの星空が強く繋ぎとめてくれていることを意味します。二人にとっての起点であり、まだ見ぬ夢が待ち構える星空。それはきっと二人の関係を描く上でなにより雄弁であり、普遍なものなのです。そういったことを包括したラストカットとPAN演出*2が本当に素敵で、感動させられました。実際ここまで書いてきたような意図がどこまで込められていたのかは分かりませんが、そんな感傷に浸らせてもらえたからこそ、この作品をより好きになれたことは間違いありません。

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思い返せば1話のラストシーンもエンディングに近い演出をしていました。オーバーラップで二人の視線を重ね、違う場所に居るはずの二人が同じ場所に居て、同じものを見つめているように描かれる。バックショットではなくT.Uでフレーム一面になるまで夜空にカメラを寄せるのも同様です。どこまでも星空に焦がれ、見つめることに意味を置く演出。それはきっとこの作品が携えている大きなテーマの一つなのでしょう。そういったことを頭の片隅に起きつつ、これからも彼女たちの物語に身を寄せていければいいなと思います。

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また余談ではありますが、エンディングで描かれたここの芝居が本当に素晴らしかったです。柔らかい手の芝居とひらいた指先を残すタイミング、その軌道がフレーム外で繋ぐ手の動きを豊かに想像させてくれるようでグッと胸を掴まれます。少しして繋ぎ終えた手がまたフレーム内に戻ってくるのも、そういったイメージに拍車をかけてくれていて素敵でした。感傷を誘うフィルムの構成、そこに付与される物語性だけでなく、こういった細部に至るまでがとても素晴らしいエンディングだったと思います。

恋する小惑星 Vol.1 [Blu-ray]

恋する小惑星 Vol.1 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA アニメーション
  • 発売日: 2020/03/25
  • メディア: Blu-ray
 

*1:立ち上がり、並び立つ二人を映し切る代わり

*2:PANの速度感も絶妙で凄く良い

話数単位で選ぶ、2019年TVアニメ10選

今年のアニメを振り返る意味も兼ね、今回もこちらの企画に参加させて頂きます。

・2019年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。

・1作品につき上限1話。

・順位は付けない。

集計ブログ様「話数単位で選ぶ、2019年TVアニメ10選」参加サイト一覧: 新米小僧の見習日記

選出基準は例年と同じく特に面白かったもの、感動させてもらった話を選定させて頂きました。それ以外は上記のルール通り、放映季順、他選出順に他意はありません。敬称略で表記している箇所もありますが、その辺りはご容赦を。

 

衛宮さんちの今日のごはん 13話 「あったか寄せ鍋

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脚本:近藤光、高中優、三浦貴博 絵コンテ:三浦貴博、永森雅人 演出:永森雅人

作画監督:内村瞳子  料理作画監督:浦田かおり

 

この作品が始まり丁度一年が過ぎた頃、それが2019年元旦。最終回であっても他の挿話とやることは変わらないのが本作のらしさです。一日を過ごし、料理を作り、そして食卓を囲む。Fateシリーズでは中々見ることが叶わなかった団欒の風景が、本当にいつまでも続けばいいなと思えたことがとても幸せでした。生活芝居への執念も凄まじく、戸を開けば締めるといった私たちが実生活で当たり前にしていることまでを本作は描き切ってくれます。そういったことを最終回でも変わらずに見せてくれた普遍性にこの作品の良さを改めて感じました。またラストシーンで雪が降るのは『空の境界/未来福音』のおそらくセルフオマージュ。登場するすべての人物たちに等しく幸福が訪れるように、という意図がもしあの作品から受け継がれているのだとしたらこんなに嬉しいことはないな、とつい考えてしまいます。最終回らしい情感のある室内レイアウトも良く、終盤はワンカット毎にグッときてしまいました。

 

モブサイコII 7話 「追い込み 〜正体〜」

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脚本:立川譲 絵コンテ:立川譲 演出:飛田剛 作画監督亀田祥倫

 

霊幻のこれまでとこれからが描かれた逸話。まるで道化師の様に振る舞う彼の言動と、その反動が描かれる中にあって、本当は「何者かになりたかった」とその心根を語るストーリーラインがとてもグッときました。超能力も霊感もない、ただ何者かであった弟子に憧れていただけ。けれどその実、あなたはその弟子にとってとてもかけがえのない存在で、“良い奴” だった。あの日、霊幻がモブへと伝えた言葉が自らへ帰ってくるというストーリーテリングの秀逸さと、それを映像から力強く、美しく補足していたラストシーンは筆舌に尽くせません。街から離れるよう踵を返していた霊幻がモブとまた街中へ消えていく構成も素敵です。アクションでの見せ場が多かった他の挿話も素晴らしかったですが、個人的には情感をたっぷりと感じられるこの話が本当に大好きでした。

参考:『モブサイコ100Ⅱ』7話のラストシーンについて - Paradism

 

マナリアフレンズ 4話 「試験期間」

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脚本:関根聡子 絵コンテ:村山公輔 演出:茉田哲明 総作画監督:吉田南

作画監督:崎口かおり、助川裕彦、吉岡佳宏、角田桂一、重国勇二

 

言葉数少ない中、確かに感じられる感情と二人の関係性。試験期間というパーソナルな時間を必要とする時期をうまく使った擦れ違いと再会の物語に胸を打たれました。アンが独り歩いた後を追うよう、グレアがその足跡を辿るリフレインも素晴らしく、エンディングへの入り方も秀逸。閑静なロングショットでの見せ方、ライティングを駆使した心情表現。まるで一本の映画を観終えた後のような感覚に陥らせてくれる本年屈指の挿話でした。

 

八月のシンデレラナイン 7話 「笑顔の迷子」

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シナリオチーム:田中仁、伊藤睦美、吉成郁子、大内珠帆

絵コンテ:石山タカ明、村山靖 演出:村山靖

作画監督:北條直明、阿形大輔、岡辰也、リバイバル、WONWOO

 

「好きなことは好きと言える気持ち」をなによりも大切に扱ってきた本作ですが、中でもこの挿話はそんな物語のテーマ性と演出との兼ね合いがとても素晴らしかったです。夕景や陰影を使い少女のか細い心象を映し出す巧さ、うまく自分の気持ちを表現できない少女たちへの群像的なアプローチ。被写界深度をもちいた視線の置き方から何度も「あなたを見つめている」ことを描き重ねる緻密さ。そういったものの積み重ねがあったからこそ終盤シーンのカタルシスがこれほどまでに大きくなったのだと思います。相手に対しても、自分の気持ちに対しても向き合うということ、それを証明するよう力強く描かれる逆光の横構図が本当に美しく、堪りませんでした。二人を祝福するようなハレーションと抜けていく青空はまさしくこの作品を象徴していたと思います。そして、この回から変わるエンディングの仕様。感無量とは、あの時のためにある言葉なのだと思いました。

参考:『八月のシンデレラナイン』7話の演出について - Paradism

 

可愛ければ変態でも好きになってくれますか? 7話 「『小春ちゃんは一年生だよ☆』大作戦 完結篇」

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脚本:岡篤志 絵コンテ:いまざきいつき 演出:倉森六郎 総作画監督:伊藤陽祐

作画監督:竹内一将、三関宏幸、山本雄貴、中川貴裕、田中淳次、水谷剛徳、菊池シュンスケ

 

愛した人を「大きく煌めく一等星」と表現するアバンから続けざまに描かれた物語は、まさしく一途にただ一つの星を見つめる天体観測の様相を呈していました。ファインダー越しに見つめ続けてきたあなたへの接触と、告白。傍から見れば変態だと言われてしまうような行為でも、それは彼女にとっての精一杯の背伸びであり、愛情表現なのです。けれど、最後は地に足をつけ、ありのままの私を受け入れて欲しいと語りかける話の流れにはついぞ泣かされてしまいました。あっけらかんと終わるのもこの作品らしく、けれどだからこそ本当に良かったね、と伝えてあげたくなる愛しさに溢れています。なによりこの回のエンディングで流れた曲の名前は『ステラ』。添えられた特殊エンディングの映像もとても素敵で、徹頭徹尾、物語に浸れる挿話だったのではないかと思います。

 

この音とまれ! 20話 「もう一度

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脚本:久尾歩 絵コンテ:吉川博明 演出:奥野浩行 作画監督:梶浦紳一郎、小林利充

 

中盤から登場した堂島先生にスポットを当てた回。若き日の体験から屈折した想いを抱え続けてきた彼女ですが、その想いと経験が自らの教え子たちの手によって “間違いではなかった” のだと反証されていくストーリーがとても胸を打ちました。彼女がなにを見て、なにを感じていたのか。そうした心情の温度を計るよう描かれた寄せる瞳の描写は今話の感傷性を一段と高いものに押し上げていたと思います。生涯を捧げても敵わない相手がいる、叶わない夢がある。けれど、そんな彼女の半生が他の誰かへと伝播し、それが次の世代へと繋がっていく。そしてそれが堂島先生が今この場所に居る理由にすらなっていく。音が人を繋げていく本作にあって、この挿話もまたその代名詞足るものを描き切ってくれました。部室前のバックショット、演奏時のカットバック。そしてラストシーン。観返す度に目頭が熱くなる、素晴らしい挿話です。

 

スター☆トゥインクルプリキュア 40話 「バレちゃった⁉︎ 2年3組の宇宙人☆

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脚本:村山功 絵コンテ:畑野森生 演出:畑野森生 作画監督:高橋晃

 

構図・レイアウトの巧さ、ライティングによる陰影表現から不安と焦燥を克明に描いた本話。ララが宇宙人であることが周囲に明るみになってしまう展開と、それにより起こる分断が一つ、この挿話のテーマだったのでしょう。奥行きのある画面が物語と同調することで、より感傷性が増していくフィルムスタンス。宇宙人であり、プリキュアでもある羽衣ララという一人の少女がなにを感じていたのかを最優先に描こうとする映像が本当に素適です。そしてその映像の集積の先で彼女自身が「私は2年3組、羽衣ララ」だと声高に叫ぶのだから、本当に堪りません。色々なものに出会い、関係性を育む中でなにか一つ揺るぎないものを見つけるというのは今作の劇場版『星のうたに想いをこめて』でも描かれたこと。最初観た時はボロボロ泣いてしまった挿話、他にも良いなと思える話数はありましたが個人的にはこの話が一番好きでした。本当に素晴らしいです。

 

Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア- 8話 「魔獣母神」

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脚本:小太刀右京 絵コンテ:赤井俊文 演出:原田孝宏 総作画監督高瀬智章

河野恵美 作画監督:小松原聖、川上大志 アクション作画監督:大島塔也

 

凄まじいアクション作画の数々に圧倒されたこの回。担当されたアニメーター方の個性が光りつつそれが一つのシーン、フィルムとして燦然と輝くその凄みには心から感動させられました。なにより、自らを「仮初の命」と称する牛若丸を躍動するアニメーションで描き続ける意味は余りにも大きく、彼女の身体性をアニメイトすればするほどその命の輝きもまた増していくというこの構図には強い感傷を抱かずにはいられませんでした。1000年先の人類史のために命を賭した彼女の決意もさることながら、その1000年先の人類史に生きる人々がこうして彼女をアニメーション(仮初の命)として顕現させている奇跡。そういったある種メタ的な見方が出来るのも本話を愛してやまない理由の一つ。個人的に追い掛けている大好きなアニメーターの方々の作画を濃く堪能出来たり、観終えた後しばらく放心状態になってしまったりと、たくさんの意味で強烈に想い出に残る挿話でした。

 

ハイスコアガールⅡ 24話

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脚本:浦畑達彦 絵コンテ:山川吉樹 演出:山川吉樹

 

日高小春という一人の少女の葛藤、憂鬱、そして決意。彼女自身の感情については幾つもの話数で色濃く描かれてきましたが、その全てを含み込んだ彼女という人間の本質とその根幹に根づく想いがこれほど全面に*1描かれた回は他にないと思います。本当は自分だって大好きなはずなのに「知ってる」と応えられる彼女の強さ。その姿を見て咽び泣いてしまったあの日のことは、生涯忘れないと思います。背にした空の青さはきっと、その青春性と日高小春というただ一人の物語へ贈られた謳歌だったのかも知れません。走り抜ける春雄へ頑張れ!と心から思えたのも、好きなものに一直線な彼を彼女がどこまでも真っ直ぐ愛していたから。それ以外の理由はただの一つもありません。フィルム全体を通してライティングの良さが光っていたのも秀逸。春雄が家から出ようとする辺りなど、とても良いシーンがたくさん詰め込まれています。

 

リラックマとカオルさん 1話 「花見」

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脚本:荻上直子 ディレクター/小林雅仁 チーフアニメーター/峰岸裕和

 

ファーストカットからして異彩を放っていた今作。ストップモーションだからこそ生きる柔らかい光とそこからもたらされるライティング、それを支える撮影の良さは屈指の素晴らしさだったように思います。時間を大切に切り取る間の使い方は、まさしく生活アニメのそれで、個人的には大好きな安濃高志監督作『ヨコハマ買い出し紀行』を思い出しました。リラックマたちのゆるいようで、その実、主人公へ優しく接しようとする仕草や行動にはつい笑みがこぼれてしまいます。一つ一つのレイアウトも秀逸、芝居づけも丁寧、雰囲気やテーマ性も素敵で、観終えた後とても温かい気持ちになれたことを今でも鮮明に覚えています。あと挿入歌の入り方がここ最近で一番自分に刺さりました。素晴らしいです。

 

 

以上が、本年度選出した挿話になります。

 

今年は今までで一番悩みました。昨年から入れようか悩んでいたWEB配信系のものを今回初めて組み込んだのも一因かも知れません。他最後まで悩んだのは『ちはやふる3』『臨死!!江古田ちゃん』『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』『本好きの下剋上』『キラッとプリチャン』『アイカツオンパレード!』の各話。そして、どうしても入れたかったのですが苦渋の末、選出外にしてしまったのが『五等分の花嫁』11話です。本当は入れたかったのですが、どうしても選び切れずに今回の様な形になりました。他にも初期段階で候補に挙げた話数もありましたが、最終的には自分らしい選択ができたように感じています。どの話数も自信をもって大好きですと言い切れる挿話ばかりです。

 

また本企画について、これまで10選の集計をして下さっていた新米小僧さんが今回を節目に当企画から離れることを伺いました。詳細は冒頭リンク先のブログにて書かれていらっしゃいます。私がこの企画に初めて参加したのは2011年なので、実に9年間もお世話になったことになります。アニメ感想ブログ一つとってもその数が減少し更新されていく頻度も落ちる中、この時期になるとこぞって皆さんが記事を書き出し盛り上がっていた一因は、やはり新米さんが纏め、一覧として見やすいよう更新し続けて下さっていたからだと個人的には思っています。寂しい気持ちもありますが、まず今伝えたい言葉は感謝の気持ちに他なりません。新米さん、本当にありがとうございました。そしてお疲れ様でした。心より。

 

今年も本当に多くの素敵な作品に出会えました。関わったすべての制作スタッフ・関係者の皆様に大きな感謝を。本当にありがとうございました。来年もたくさんの素敵なアニメとの出会いがあることを願いつつ。また一年、健やかなアニメライフを送ることができればいいなと思います。

*1:演出的にも