最近観たアニメの気になったこととか3

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もはや最近とは、という感じではありますが前回の記事から今までの間に観たアニメについて。まずは『虹ヶ咲学園』6話。侑の言葉に璃奈が反応したカット。「璃奈ちゃんのライブが観たい」「今はまだ出来ないことがあってもいいんじゃない?」と言われたことに対して瞬きで応じる芝居づけが本当に素晴らしかったなと。派手な芝居では決してありませんが、感情をうまく表に出せない彼女の心の機微をどうにかして捉える、そこに重きを置くからこそこういう芝居が入るのがとても素敵です。

 

タメツメの効いたタイミング、その言葉が彼女にとっての救いであるからこそより力強い芝居にするため2回瞬きを入れる芝居のコンセプトがあまりに効いています。作画そのものとしての動きの気持ちよさもありますが、ここまでこのカットが印象深いものになっているのはそこに感情が在ると思えるからです。目は口ほどに物を云う、とはよく言ったもので、時に作画、芝居づけ、アニメーションとは台詞以上に雄弁であることを改めて思い知らされました。

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同上6話。それとは逆に台詞を支える芝居。向き合うことを印象付けるよう横位置でみせる演出も素敵ですが、FIXで二人を撮り続け愛が膝を曲げ璃奈と同じ目線になるまで待つのが圧倒的に良いです。向き合うことへの本質の一つには目線の高さがあると常々思っていますが、まさにそれを裏づけるような芝居づけに感動しました。

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この2カットも同様*2。繋がりに怯え、内にこもる璃奈と向き合うため数人がしっかり膝を曲げる。曲げる芝居の分だけ感情が寄る。彼女たちの関係が強く、太くなる。特にかすみの場合は言葉をかけるためだけに膝を曲げ、言い終わると再度腰立ちになるのがまた良いなあと。あくまで自然体に見えるのがいいのかも知れませんし、彼女たちの時間間隔をそこで感じ取れるのがいいのかも知れません。アニメーターの方のアドリブか、コンテ指示かどうかはわかりませんが、このシーン通して素晴らしい演出だなと思います。

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同じく虹ヶ咲8話。山場のシーンのここもワンカットですが素晴らしいなと。かすみの言葉がしずくの心を手ほどきした末の表情芝居。先ほどの璃奈の瞬き芝居とは真逆のより感情的な跳ねるような表情芝居ですが、根底にあるものはきっと同じであったはずです。自分らしくいることに怯えていたしずくが、おそらく今話では初めて自分らしく居れた時間。その一つ一つの瞬間を逃すまいと印象に残るタイミングで描かれているのがめちゃくちゃ良いです。そしてなによりここもワンカット。吹き出して、笑って、泣いて、落ち着くまでをワンカットに収めるからこそこのあとのカットにまた一つ大きな意味が宿るように思えるというか。

 

璃奈もしずくも。自分らしく居ることを肯定するような芝居でその岐路を描かれていたのが本当に好きだなあと思いました。あとこの教室のシーンはレイアウトや撮影がすごく良いです。なんだが『響け!ユーフォニアム2』4話の小川太一さん演出回を思い出しました。高いコントラストの中に清々しさが残る、青さが染みるのが堪らないなと。

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虹ヶ咲11話。知人と先日話していて話題にもなったんですが、ここのカメラワークがめちゃくちゃ気になって。侑の視線より少し遅めに左へPAN、歩夢をフォローしていく動き。このシーンのカットやレイアウト、各々の動きとかをみるに立ち位置を明確にする意味合いもこのカットにはあったのかなと思うんですが、それ以上にここって歩夢の感情的にもかなり山場だった気もしていて。このあと彼女が侑に言葉で訴えたりする場面ももちろんあるんですが、静かに感情の起伏を訴えていたのはやっぱりここのカットが一番だったかなと。

 

多分それってこのシーン、ひいてはこの話数において一番このカットが動的だと感じたからじゃないかなとは思っていて。「背景が動くとき物語が動く」っていうのは自分の中でかなり大切にしている言葉なんですが、例にもれずこのカットにはそういった風合いがあるように感じてなりませんでした。

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ブギーポップは笑わない』7話。例えばいこういうカットとか。

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『SSSS.GRIDMAN』9話。こういうカットとか。

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『風が強く吹いている』23話。こういうカットとかですかね。いずれも個人的に大好きでずっと胸の奥にしまってある大切な場面ですが、こういったアクションカットの中で背景が動く瞬間、平たく言えば背景動画のカットとかなんですが、それが物語だったり感情的に大きくリンクする瞬間が本当に好きなんです。

 

それこそ、こういうったカットと先ほどの虹ヶ咲11話のカットを同系統の演出・芝居のように語るのはあまりに突飛かなとも思うんですが、自分の中ではやはり「背景が動くとき物語が動く」なんですね。感情が大きくうねる、想いが動く。そういった各々の心情と映像がリンクする瞬間ってやっぱり堪らないなって思います。

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『神様になった日』7話。ベッドにひなが横たわる瞬間の芝居がめちゃくちゃ良くて感動しました。ベッドの質感表現もさることながら、ひなが小柄であることが如実に伝わってくるスプリングの効いた芝居。ワンテンポ遅れた髪の翻りも含め動き的にも気持良さしかありません。一回大きく跳ねて、次は小さく跳ねる。ひな自身が力を抜いて横たわっているが故に倒れた際のエネルギーが吸収されているように見えるのも自然体な空間(空気感)を感じられて本当に素晴らしいなと思います。野中正幸さんが『私に天使が舞い降りた!』でも同じような芝居を描かれていたのもあり、このカットを観たときにそうかなと思ったんですが、クレジットに名前がなかったのでそれは神のみぞ知るということで。

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このあとの芝居も良いですね。レイアウトの良さもさることながら、空間や時間を切り取ってくれるような芝居、間の取り方が素敵です。陽太の些細な、普段もしているであろうこなれた頬杖、そしてひなの重心を感じさせる起き上がり。小柄だからか足が上がってしまうのとか。良過ぎてずっと観ていられます。

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ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN』9話。ここのシャワーシーンがめちゃくちゃ巧いんですが、特に好きなのがこの辺りでした。仕切りにかける指の動き。こちらも些細な、でも確かに自然体だと感じられる芝居です。特段、リアル系の作画が好きとかそういうことはないんですが、物語が進んでいく中で確かに彼/彼女たちがそこに居ると感じられる瞬間ってやっぱり好きなんですよね。そのうちの一つがこういう芝居をみれた瞬間でもあるので、やっぱりこういった芝居は本当に好きです。

 

被写界深度、ピン送りを使った演出、タイミングもめちゃくちゃ決まっていて格好良いです。ピントが合わなくなったあともバルクホルンの驚く表情を見せてくれたり。当たり前なんですが、そういうほんの少しの描写で二人が会話していることを実感できるというか。表情芝居がすごく豊かなシーンでもあったのでなおさら良いなと感じました。

 

全話数、物語も演出も作画も素晴らしいなと思いながらここまで観させてもらっているスト魔女ですし、他のアニメも含め本当はもっとふれたいことがあるのですが、ここまででも相当長くなってしまったので今回はこの辺で。最近かなりアニメ観れているので、なんだか人生が充実してます。アニメって凄いです。掛け値なしに。

 

*1:サムネ参考画像:

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*2:本来はこの2カットは繋がっていません