テレビアニメOP10選 2021

今年もこの企画に参加させて頂きます。放映季順、その他順不同、他意はありません。敬称略含む。視聴した作品からのみの選出で、選出基準はいつもと同様 「とにかく好きなOP」 です。

 

ワンダーエッグ・プライオリティ / 巣立ちの歌

f:id:shirooo105:20211228103337j:plainf:id:shirooo105:20211228103347j:plainf:id:shirooo105:20211228103329j:plain

誕生と卒業をモチーフにしたようなオープニング。楽曲そのものの感傷性に加え、空の青さや各々の日常風景をただ描くことに執着していたことがとても好みであり、本作にとっては大きな意味があったのだろうと思います。それこそ街を歩くアイとすれ違うねいる達の様子からは、どこかこれが本編を終えた後の世界であるかのようにも感じさせられてしまいます。出会いと別れ。けれど、その中で培い芽生えた感情や想いは "あなたにとっての真実" となり、糧となっていく。そんな本作のテーマ性を十二分に凝縮した映像だったのではないでしょうか。また歩道橋の上、アイが見た景色の美しさがどんなものであったのかを一切描いていなかったのが、個人的にはツボでした。その美しさはアイ自身の心の内にのみ存在するんだなとか。そういうの、堪らないですよね。

 

ウマ娘 プリティーダービー Season 2 / ユメヲカケル!

f:id:shirooo105:20211228093945j:plainf:id:shirooo105:20211228093958j:plainf:id:shirooo105:20211228094003j:plain

ウマ娘らしいわちゃわちゃした感じもありつつ、本作がとても大切にしていたであろう物語の根幹、そしてその根幹足る歴史への敬意を今回もまた感じ取れたことになにより胸を熱くさせられました。一期に引き続き二期でも史実を踏襲したレースシーンが描かれていたりと、ウマ娘という作品が抱く競馬愛には一片の陰りもありません。本編でも重きを置かれたトウカイテイオーメジロマックイーンの物語を主とした映像構成でしたが、ターフを駆ける二人の姿にはついぞ感傷的になってしまいます。些細な芝居、表情の一つ一つも素敵で、特にサビの「ほら!」の部分にインサートされる少女たちの幼気な笑顔が大好きでした。

 

ホリミヤ / 色香水

f:id:shirooo105:20211228095518j:plainf:id:shirooo105:20211228095348j:plainf:id:shirooo105:20211228095339j:plain

振り返れば、本編最終話でも描かれたような宮村たちが出会わなかった世界の可能性をこのオープニングでは示唆していたのかも知れません。フレームによって隔たれる各々の姿、季節感のずれはそれこそほんの些細な擦れ違いや思い違いで彼らが出会えていなかったことを示唆しているようにも感じられます。枠線をあみだくじの様に移動するテロップはギミック的に面白くもありますが、今思えばそんな偶発的で奇跡的な出会いをオブラートに包み描いていたのかも知れません。もちろん宮村が抱いていた孤独感への寄り添い方が冴え渡っていたように、群像的にそれぞれの想いをフレーム内に重ねていたのも素敵でした。しっとりとした楽曲に合う内省的な映像。石浜さんの仕事として観ても近年の中では一番好きなオープニングだったなと思います。

 

美少年探偵団 / Shake & Shake

f:id:shirooo105:20211228101151j:plainf:id:shirooo105:20211228101158j:plainf:id:shirooo105:20211229185816g:plain

梅津さんがディレクターを務めたオープンエンドとしては『それでも町は廻っている』に迫る最高の映像体験でした。あらゆる見せ方、芝居の置き方が本当にツボですべてのカットに堪らなさを感じてしまうほどの良さに満ち溢れています。また本編ではキーポイントともなる眉美の瞳に寄せた演出が多く見られたのも素敵で、楽しさや賑やかさの中にとても物語的な、彼女自身のパーソナルな描写が散りばめられていたのが好きだなと思える大きな要因でもありました。"美しさ" を語るこの物語らしいスマートさもありつつ、宇宙飛行士への夢を抱きながら、探偵団へ入ることで新たな夢を模索する彼女の軌跡を踏襲する様なドラマチックな見せ方もある。本当に無限に好きという気持ちが湧き出てきてしまうフィルムだったなと思います。あとこれは余談ですが、眉美が振り向くカット、2回で終わらず3回目まで入るのが個人的にめちゃくちゃツボです。

 

死神坊ちゃんと黒メイド / 満月とシルエットの夜

f:id:shirooo105:20211228100317j:plainf:id:shirooo105:20211228100329j:plainf:id:shirooo105:20211228100322j:plain

もう、掛け合いのように曲中で歌い上げられていることが全てなのだろうと思います。触れ合いたいけど触れ合えない。けれど確かに "ふれ合えている" ものがある。アリスと坊ちゃん二人の関係性と愛情の深さを強く感じ取れるオープニングであったことがなによりも嬉しかったです。時折り描かれたリップシンクもとてもよいものでした。ポップテイストな楽曲の音を意識したような遊び心に溢れる見せ方、テロップ芸も面白く、感傷に満ちた本編とは一味違う高揚感を存分に感じられました。バックショットの美しさはこの作品の強みでもありますね。二人の幸せを切に願わずにはいられなくなります。
 

小林さんちのメイドラゴンS / 愛のシュプリーム!

f:id:shirooo105:20211229153541j:plainf:id:shirooo105:20211229153642j:plainf:id:shirooo105:20211229153557g:plain

冒頭から「セルフオマージュだ!」と石原立也節を強く感じさせてもらえたあの胸の高鳴りは今でも鮮明に思い出すことが出来ます。楽曲を手掛けたfhánaのMVをオマージュしたであろう振り付けも含め、ちょっと面白いポージングがふんだんに盛り込まれているのがらしさもあり楽しくて。そんな中にトールや小林さんたちの感情的な部分もしっかりと置いていき、彼女たちの心を少しでも掬い上げようとしていることが伝わってくる演出の手つきが本当に素敵だなと思います。最後はしっとりとした夕景のシーンに時間を割いていたのも魅力。回転し、舞い降りてきた小林さんたち二人に向け、「おかえり」と言わんばかりの横PANとカンナたちの表情が映されるのがとても好きでした。

 

先輩がうざい後輩の話 / アノーイング!さんさんウィーク!

f:id:shirooo105:20211228101832j:plainf:id:shirooo105:20211021005513j:plainf:id:shirooo105:20211021085512g:plain

楽曲に溢れるフレーズの数々、音の一つ一つを生かし緻密に組み立てられた映像と音楽のうえで、強烈に彼女たちの実在感を感じさせてもらえるのがこのフィルム最大の魅力です。歌詞ハメなど含め遊び心も十分に溢れているオープニングではありますが、レイヤーの最前面にはまず物語があって、この世界があって、登場人物たちの存在がある。それこそこの映像を五十嵐ちゃんたちが主導して制作したようについ感じてしまう瞬間があるのも、きっとそういった世界観への注力による賜物なのだと思います。楽曲そのものも凄く素敵で、アップテンポのテンション感には、さあ始まるぞと毎回襟を正させてもらえたような気がしています。「Les’t go 社会人!」のフレーズはなんだか明日への気力にもなったりしましたね。竹下さん演出のオープンエンドとしても嬉しくなれる地続き感があったりして、色々な意味で心から良いなあと思えるオープニングでした。

 

参考記事:『先輩がうざい後輩の話』OP、竹下良平さんの演出について - Paradism

 

SELECTION PROJECT / Glorious Days

f:id:shirooo105:20211228104102j:plainf:id:shirooo105:20211228104226j:plainf:id:shirooo105:20211229210048g:plain

イントロやAメロが狂おしいほど好き、という楽曲面への信頼もありつつ、そんな楽曲に対しても決して引けを取らない力強い映像と物語の在り方がとても素晴らしかったです。各地から集まった少女たちの決意と、時に笑い、時には泣きながら次第に親交を深めていった彼女たちの軌跡。それはまさしく、曲題通りの "美しき日々" だったのだろうと思えるまでがこのフィルムの真骨頂です。天沢灯が振り向くカットから、鈴音と玲那の繋ぐ手へとオーバーラップしていくのが本当に好きで、このカットの繋ぎにこそ本作の主題って全部詰め込まれているよなとさえ思えてしまうのもなんだか好きなポイントです。加えて、自分は平山寛菜さんの描かれる絵や表情が凄く好きなので、それをこんなにも多く見させてもらえることがもう喜びでしかなかったりしますね。

 
86‐エイティシックス‐ / 境界線

f:id:shirooo105:20211228094639j:plainf:id:shirooo105:20211228094619j:plainf:id:shirooo105:20211228094646g:plain

ミリーゼ少佐の先を行き、仲間を追いかける側から追いかけられる側へと至ったシンが、それでも心象風景の中では少佐を追いかけ続けているようにも感じられてしまう映像の感傷性がとても強く刺さりました。少佐の姿がほぼバックショットでしか映らないのも効果的で、物語的にもどこか彼女の姿を探してしまう我々の視座をそこへと投影しているように感じられました。他の86のメンバーのものも含め、シンのT.Uカットは作画的にも感情的にもあまりに抜群で、毎話観る度にここのカットでグッとさせられてしまいます。戦いに赴く身しか持たない者たちの所在と行方。その危うさをこうも映像に落とし込まれれば感動しないはずがないのです。タイトルバックの出し方はおそらく今年一でしょう。少なくとも私が観てきた中ではそうです。その数列に込められたものの多さというか。視線が釘付けになる、というのはこういう時に使うのでしょうね。歌詞の強さにも唸らされるものがあり、聞き入ってしまうオープニングでもありました。

 

古見さんは、コミュ症です。 / シンデレラ

f:id:shirooo105:20211229160003j:plainf:id:shirooo105:20211229160022j:plainf:id:shirooo105:20211229190619j:plain

1話の終わりにこのオープニングが流れた時のあの感動は、二度と忘れないと思います。古見さんの感情やパーソナルな部分にこれでもかと言うほど寄り添いながら、彼女の未来にありったけの祈りと祝福を捧げるような映像美。情感を溜めるところでは溜め、楽曲のドライブ感に合わせグッと加速し、解放していく。本編では一歩一歩、少しずつ進んでいく古見さんですが、この場所でくらい彼女にはどこまでも駆け抜けていって欲しいのだと、そんな願いを感じずにはいられないフィルムになっていたと思います。ある種、序盤から見れば未来視に近いところもあったり。そんな予感に満ち溢れているからこそこんなにも嬉しくなれるし、より本編への没入感が増すのだろうなと感じたりしました。シティポップテイストな絵の映え感も凄く好きです。曲も大好き。まさしくマイオールタイムベストだと言いたくなるようなオープニングでした。

 

以上が今年のOP10選となります。今年はだいぶすんなり選べた感触があります。2つほど最後まで悩んでいましたが、最終的には自分で納得の出来る選出になったように感じています。本編とはまた違う魅力の詰まった短編アニメーション。時に作品の代名詞のように、時にはまたそれとは違った一面を見せてくれる鏡にもなる。オープニングって本当に良いものだなあと、改めて思いました。最後に、関わられた全ての方々に感謝を。今年も一年、素敵な映像体験を本当にありがとうございました。