『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会2期』2話のワンシーンについて

嵐珠のスクールアイドルに対する姿勢を介し、改めて彼女のパーソナルな部分やスクールアイドルに対する自分たちの在り方を考え始めるようになったエマたち。アイドルの数だけ答えがある様に、各々の立ち位置や見てきたものの違いから生まれる "それぞれの想い" を肯定するような映像になっていたことに、強く胸を打たれました。遊具を使った人物配置、視線の置き方も特異的で、見ているものや目指しているものの方向は違えど、それぞれの想いがやがて一つの方向に収束していく様はとても美しく映ります。それこそかすみが一人孤立するようなフレーム内フレームによる分断も描かれたりしましたが*1、それでもきっとこの時彼女が口にした「同好会は色んなアイドルが居られる、最高の場所」という言葉は本作の根幹に成りえるものでもあったのでしょう。各々のアイドル像は違えど、その言葉に寄せる気持ちは皆等しくあるのだと。そういうスタンスをグッと前面に押し出してくれたシーンになっていたことが、とても嬉しかったのです。

なにより、そういったことを示唆するためのカメラワークというか、前述したような視線の置き方がとても良かったです。吐露される言葉や想いに至るまでの流れを作るカットの組み立て方とも言い換えられるのかも知れません。バラバラだった視線がすべてかすみに向く流れも然り、それぞれの表情を映し、かすみの言葉と表情を正面から捉えることで彼女の優しさとスクールアイドルに対する考え方を真っ向から捉えていく、映像としての姿勢然り。

誰が何を見て、何を考えているのか。どういう考え方に同調したり、感銘を受けているのか。そういう感情的な部分や関係性を少しでも感じ取れるように視線や表情が描かれることって、とても大きなことだと思います。例えば、エマの視線の先に居るかすみの姿は彼女の瞳にどう映っているのだろうかとか。些細な描写ではあるのかも知れませんが、そういったことに想いを馳せる契機にもそれは成り得えていくのです。レンズフレアなども言ってしまえばそういう感情的な部分を知るための補線なんだろうなとは感じますし、一度カメラを引き、また一つ分かり合えたであろう彼女たちの姿を客観的に映していたショットもきっと同じことなのでしょう。言葉では語り切れないものを映像に込めていくための演出。とてもあやふやなものではあるけれど、そういった些細で繊細な描き方こそが物語を理解していくための一助になっていくし、彼女たちを彼女たちらしめる理由にすらなっていくのだと思います。

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そういう意味で言えば今回、一番感動させられたのがこのブランコのシーンでした。「私たちって普段はバラバラだ」 と語るかすみの言葉に同調するように、動き出しもその後の漕ぎ方もバラバラになる4人。それぞれの個性を活かし、それぞれのやりたいことを等身大の物語として描いてきた本作が、そういったこれまでの過程や彼女たちの在り方を一つに凝縮したカットであったことにまず間違いないでしょう。それをバックショットで静かに、長めに撮り続けることの意味は余りにも大きく、彼女たちの歩んできた道のりを優しく肯定してくれる質感がそこにはありました。

ここも同様です。バラバラな動きをワンカットに収めるという複雑な構成のカットでしたが、前述したようにそれを描く意味がここにはたくさん込められていました。しかし、さらに素晴らしかったのはここからの描写です。エマの「今度の合同ライブ、4人でやってみない?」という問いかけに対し、バラバラだった動きが一様に揃い、同じように漕ぐことを止めるのです。それは、普段はバラバラな彼女たちが同じ志をもって未来を見据え決意を抱いた瞬間に他なりません。 "普段はバラバラだけど、皆んなで歌ったフェスは楽しかった" という言葉を映像として後押しするようなしーンでもあり、彼女たちが同好会に居る意味を寡黙に伝える描写にさえなっていたことがとても感動的でした。夕景の美しさとBGMの良さが相まってより感傷的にさせてくれるのも素晴らしく、言葉にし難い心の通いを美しく表現してくれていたように思います。

最後は横一列に並び、綺麗な歌声をシンクロさせる4人。奇しくもアバンで映されたブランコと重なって見えることに気づいたのはこの物語を観直し始めた後のことでした。もしかすれば、そんな倒置的な見せ方も以降に描かれるシーンとその結果を暗示してのものだったのかも知れません。同じ想いを携え、同じ方角を見据える強さ。そんな本作の青春性の高さを改めて突きつけられたことが、とても嬉しく、素敵に映りました。

*1:まあ、これはクスっと笑えるようなコメディタッチの演出なのだと思いますが

*2:サムネ参考画像: