テレビアニメED10選 2020

今年もこの企画に参加させて頂きます。放映季順、他順不同、他意はありません。敬称略含む。視聴した作品からのみの選出で、選出基準はいつもと同様 「とにかく好きなED」 です。

 

恋する小惑星 / 夜空

f:id:shirooo105:20201226195444j:plainf:id:shirooo105:20201226195619j:plainf:id:shirooo105:20201226195516j:plain

アンニュイな表情、些細な仕草。そのすべてが感傷的で少女たちが抱く心情を浮き彫りにしてくれるようでした。どこか遠くを見据える視線は過去へのものなのか、それとも。そんな風に思えるのはどこまでもこのフィルムが本編と地続きであったからなのだと思います。終盤で描かれる芝居も素晴らしく、そういった一つ一つのカットの良さも含め何度も繰り返し観てしまったエンディングです。みらとあおの信頼関係、その結晶のような映像美でした。

関連記事:『恋する小惑星』のEDについて - Paradism

 

Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア- / Prover

f:id:shirooo105:20201227031437j:plainf:id:shirooo105:20201227031507j:plainf:id:shirooo105:20201227031639j:plain

おそらく今年一番といっていいほど心に染みたエンディング主題歌。圧倒的な空気感とイントロに置かれる単音の心地よさは各挿話の幕切れを美しく彩っていました。「踏み外したあなたでさえ手離さないように」という一節に伴い上げられるギルガメッシュの視線、その後ろに描かれる人物たちの各々の生き様がフラッシュバックしていくような見せ方には胸を熱くさせられました。エルキドゥが一人だけ逆光(下手向き)なのもとても物語的。田中将賀さんの絵(表情)の良さも含め、このエンディングがあったからこそ毎回感傷的になれたような気がしています。

 

プリンセスコネクト!Re:Dive / それでもともに歩いていく

f:id:shirooo105:20201226214945j:plainf:id:shirooo105:20201226214845j:plainf:id:shirooo105:20201226214922j:plain

美食殿のなんてことのない平凡な一日を映像へ落とし込んでくれたことがとても嬉しかったです。朝起きて、挨拶を交わし、テーブルを囲んで、出掛けたあとは陽が沈む頃に帰宅する。ですが、そんななんてことのない一日こそが彼女たちにとっては掛け替えのないものなのでしょう。弾む表情もあれば憂う表情もある、想い想いのものを秘めているのは相変わらずで、けれど秘め切れないものも一つ。大切なもの、大切な人を大切だと静かに訴えたとても美しいエンディングフィルムでした。『この素晴らしい世界に祝福を!』でもそうでしたが、金崎貴臣監督はこういった映像を演出されるのが本当に上手ですね。

 

かくしごと / 君は天然色

f:id:shirooo105:20201226215345j:plainf:id:shirooo105:20201226215509j:plainf:id:shirooo105:20201227025652j:plain
聴きなれたナンバーにコントラストと彩度の高い画面。どこか懐かしいようで新鮮な空気が漂うのは音楽と映像のマッチもさることながら、本編の軸に描かれた物語を高い濃度で再現したからなのだと思います。オープニングの映像とは違い、どちらかと言えば過去よりも未来向き。走る姫と可久士が "ある意味" で再会するまでの物語であり、懐かしい思い出にもう一度二人が触れるまでの過程を見事描き切っていました。ワンポイントで歌詞をプロップ化したり、ワンカット毎が画になるものばかりなのも素敵です。最後は家族3人で帰路へ。そんな締め方も本作らしく、これからの彼らに想いを馳せられることまで含め本当に素晴らしいフィルムでした。

 

おちこぼれフルーツタルト / ワンダー!

f:id:shirooo105:20201226215237j:plainf:id:shirooo105:20201226215125j:plainf:id:shirooo105:20201226215157j:plain

POPな楽曲に可愛いSDキャラ、そしてフェティッシュなカットの数々。細かい音ハメなども心地よく、観ているだけでつい笑みがこぼれてしまうような映像が大好きでした。楽し気でありながら、最後はスッとテンションを落としてネズミ荘での温かみ、関係性を感じられる締めも良いですね。またコンテ演出、作画監督、原画を担当された川村幸祐さんの絵の良さは圧巻。少女性と艶やかさの兼ね合わせが本当に堪りません。氏が参加された作品で言えば『お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ』OPを思い出したりもしました。

 

ご注文はうさぎですか? BLOOM / なかよし!○!なかよし!

f:id:shirooo105:20201226215718j:plainf:id:shirooo105:20201226215653j:plainf:id:shirooo105:20201226215736j:plain

不思議の国のアリスをモチーフに据えた世界観をチマメ隊が巡るフィルムスタンス。その中で描かれる絵の良さ、ライティング、撮影の良さにとても引き込まれました。チノが心深くに抱いているかも知れない心情と歌詞、映像とのシンクロも素敵で、なんだか少し感傷にも浸れる(彼女たちの心に触れられたような気がする)のも嬉しかったです。随所に散りばめられた可愛らしさを上げれば切りがなく、徹頭徹尾『ご注文はうさぎですか?』らしさを感じられるエンディングでした。最後のラテアートが毎話変わるのもサプライズがあり好きでした。

 

呪術廻戦 / LOST IN PARADISE feat.AKLO

f:id:shirooo105:20201226220052j:plainf:id:shirooo105:20201226215957j:plainf:id:shirooo105:20201226220020g:plain

ディスコチックな音楽に合わせ登場人物たちが踊る、本編とはまた違う一面や雰囲気を垣間見れるのがこのエンディングの素晴らしさです。ステップの軽やかさ、綻ぶ表情、こちらまで身体を揺らしたくなる数々の映像はアニメーションの楽しさを今一度思い出させてくれる力がありました。ラフタッチな作画がそのままスカッシュやおばけのような表現に生かされ躍動感が膨れ上がるのも感動に拍車を掛けます。線を観る楽しさまで感じられるのが本当に堪りませんね。スタイリッシュなようでポップ。実写畑の長添雅嗣さんがコンテ演出というのも驚きでしたが、一人原画をされた五十嵐祐貴さんの作画の素晴らしさには改めて打ちのめされました。

 

ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 / NEO SKY,NEO MAP!

f:id:shirooo105:20201226221015j:plainf:id:shirooo105:20201226221027j:plainf:id:shirooo105:20201226221059j:plain

本編で降りし切った雨が上がっていくような情緒的な映像。新たな予感と少女たちがその一歩を踏み出す瞬間を切り取っていくような楽曲の素晴らしさ。そんなフィルムを構成するなにもかもが感慨と感動に満ち溢れた本年屈指のエンディングです。作画を担当されているめばちさん特有の絵の質感とレイアウト、ライティングの良さ*1が、彼女たちが歩むこれからの物語までを視せてくれるのが本当に大好きでした。イントロの入りも格別で、このエンディングがあったからこそ本編の物語がより美しく彩られたのではないかなと思います。


戦翼のシグルドリーヴァ / サヨナラナミダ

f:id:shirooo105:20201226220302j:plainf:id:shirooo105:20201226220627j:plainf:id:shirooo105:20201226220429g:plain

クラウディアが一人歩んできた道を辿るような映像の情感。灯す火がどこか心細く映ったのは本編を観れば少しばかり納得の出来るものでした。赤い糸の先にあるのは運命の待ち人か、もしくは宿命か。いずれにせよ、あなたの手を握りその身に心を寄せてくれる人たちが今はいる、だからーー。まだ本編を観終えていないので断言できることは多くありませんが、そんな風に物語的なことを強く考えさせてくれるエンディングだったと思います。歩く芝居の速度、揺れるワンピースの質感がさらにフィルムを情緒的にしていたのもグッと来てしまうところ。コンテ演出、作画監督、原画を担当された大野仁愛さんの本編とはまた違ったデザインの作画も素晴らしく、初めて観たときは思わず息を呑んでしまいました。

 

アサルトリリィ BOUQUET / Edel Lilie

f:id:shirooo105:20201226221329j:plainf:id:shirooo105:20201226221450j:plainf:id:shirooo105:20201226221334j:plain

疾走感溢れる楽曲、その一音一音に合わせるよう次第にテンションを上げていく構成が堪らなく好きでした。圧倒的な絵の良さと情報量の多さ。命を賭し戦う少女たちの一瞬の輝きを一つ一つ映像に綴じこめていくような演出の良さは筆舌に尽くせません。少女性と陰鬱で感傷的な空気、そんな相反するようで合致する質感がこの映像には詰め込まれていたと思います。『恋する小惑星』に引き続きディレクターを担当されたのは中山直哉さん。レターボックス、シネスコサイズを生かしたどこまでもエモーショナルな映像は、まさしくらしさなのだろうと思います。

 

以上が今年のED10選となります。今年はOPより大分悩みましたが、終わってみれば例年通り自分の好きが詰まった選出になりました。本編とはまた違う魅力の詰まった短編アニメーション。それでいて物語により深くまで潜らせてくれるものがあったり、楽しさを詰め込んだものがあったりと、たくさんの感情をもたらしてくれるエンディングって本当に素敵です。最後に、関わられた全ての方々に感謝を。今年も一年、素敵な映像体験を本当にありがとうございました。

*1:視線誘導が余りに決まっている...!

テレビアニメOP10選 2020

今年もこの企画に参加させて頂きます。放映季順、他順不同、他意はありません。敬称略含む。視聴した作品からのみの選出で、選出基準はいつもと同様 「とにかく好きなOP」 です。

 

恋する小惑星 / 歩いていこう!

f:id:shirooo105:20201223204809j:plainf:id:shirooo105:20201223204904j:plainf:id:shirooo105:20201223205222j:plain

それぞれの道、目標、夢。そういったものを幾重にも折り重ね描いてきた本作を改めて凝縮し、エモーショナルに織り込んだのがこのオープニングの素晴らしさです。どこか遠くを見据える視線が多いのもそういったフィルムコンセプトの賜物なのかも知れません。1話で描いた原風景がずっとここにあり、その先に今があって、未来がある。固く結ばれた手とその眼差しの強さに "あなたとならどこまでもいける" と思わせてくれたことがとても嬉しかったです。透き通るようで、感傷に浸れる楽曲も素敵。自分自身と重なる部分もあり、個人的には幸先生のカットが一番好きでした。

 

かくしごと / ちいさな日々

f:id:shirooo105:20201223213450j:plainf:id:shirooo105:20201223213540j:plainf:id:shirooo105:20201223224438j:plain

 家族二人で歩んできたこれまでの軌跡が印象的に描かれていく過程に強く胸を打たれました。とても美しいようでどこか儚げなのは本編を観終えたあとだと、より一層心に刺さるものがあります。真っ直ぐな視線を見せる幼少期の姫と、真っ直ぐに向き合おうとする "今“ の彼女。その変わらなさが在るのは、あなたの優しさが変わらず在ったからだということを色鮮やかに描き切ったフィルムでした。時間のずれを描くギミックも涙を誘います。圧倒的な色彩、ライティング、感情、物語。本当に素晴らしいオープニングです。

 

本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜 / つむじかぜ

f:id:shirooo105:20201223214825j:plainf:id:shirooo105:20201223214717j:plainf:id:shirooo105:20201223214639j:plain

大枠として1期のオープニングと違う点があるとすれば、それはマインがより溌溂(はつらつ)と描かれているということなのだと思いますが、その姿にこんなにも泣けてしまうことこそがそもそもこの映像の素晴らしさなのです。身体の弱い彼女が走り回る姿を躍動感あふれるアニメーションで描く意味は余りにも大きく、少しずつ、一歩一歩ここまで歩んできたマインの心が救われたような気さえしてくるのもこのオープニングの魅力。サビの壮大なオケに合わせ描かれる、風をうけ手を伸ばすマインの仕草や表情にはそういったなにもかもが凝縮されていました。彼女たちの未来にはきっと楽しいことが待っている、そう思わせてくれるよう次第にテンションを上げていく楽曲と表情豊かな映像のハーモニーが本当に堪らないオープニングです。

 

乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった… / 乙女のルートはひとつじゃない!

f:id:shirooo105:20201223215257j:plainf:id:shirooo105:20201223215145j:plainf:id:shirooo105:20201223215321g:plain

angelaさんお馴染みの変則的な曲構成に合わせるよう紡がれていく映像が本当に楽しいです。本編でも描かれた幼少期から成長期まで、多くの登場人物がマッチカットによって入り乱れるシーンはとても物語的であり、映像表現だからこそもたらすことが出来る面白さを突き付けてくれます。しかし、そんな楽しさの中に転生したカタリナの感情や感傷性をしっかりと描いてくれたこと、それこそがこのオープニングを大好きだと言える一番の理由でした。力強く繋がれた手からオーバーラップし、今のカタリナにスポットがあたる繋ぎにはついぞ涙腺が緩んでしまいます。曲調の影響もあり、それが決して後ろ向きには描かれていないことも素敵です。『かみちゅ!』などの作品を思い出すテロップ芸も秀逸で、楽しさから感傷さまで本当に色々な感情を呼び起こしてくれるフィルムでした。

 

ミュークルドリーミー / ミライくるくるユメくるる!

f:id:shirooo105:20201223223451j:plainf:id:shirooo105:20201223223539j:plainf:id:shirooo105:20201223223605g:plain

本編で描かれる情報量の多さとは逆に、ゆめたちの可愛らしさを存分に描いてくれたオープニング。どちらかと言えば正当な印象を受けますが、隙あれば踊ってみせたり、わちゃわちゃしたり、ボケてツッコんだりと、ミュークルイズムが健在なのは観ていてすごく楽しいです。本編とどこまでも地続きなんですよね。個人的にはランニングマンのカットがめちゃくちゃツボ。楽曲もすごく好きで、アイドルマスターシリーズを追っている自分としてはやはりEFFYさん作曲の音色には心躍ってしまいます。
 

彼女、お借りします / センチメートル

f:id:shirooo105:20201223220005j:plainf:id:shirooo105:20201223215701j:plainf:id:shirooo105:20201223215713g:plain

最高に可愛らしいダンスパートは言わずもがな、登場人物たちの生き生きとした表情、仕草が本当に素適なオープニングです。物語に沿った歌詞に合わせるよう紡がれていく映像には、本編が進むにつれより一層情感が滲む良さがありました。その手を伸ばしても届かないもどかしさや、不器用ながら懸命に走る和也の姿にはその芝居作画の素晴らしさも合わさり、毎話観るたびに心動かされました。なにより、和也や千鶴だけではなく瑠夏や墨、麻美たちの感情までをも汲みとってくれるのがこのオープニングの素晴らしさです。彼女たちの一瞬の表情を切り取ってくれた自撮り風のカットについぞ泣かされそうになったのも、きっとそのせい。それぞれの子たちがそれぞれの尺度で自分の気持ちと向き合おうとしている、そんな風に想い馳せられるまでがこのフィルムの素晴らしさなのだと思います。本当に大好きなオープニング。以前から好きで聴いていたthe peggiesの曲が主題歌だったのも思わぬサプライズで嬉しかったです。

 

ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld / ANIMA

f:id:shirooo105:20201223220337j:plainf:id:shirooo105:20201223220322j:plainf:id:shirooo105:20201223220419j:plain

まさにSAOの集大成たるオープニング。ここに至るまで彼・彼女たちが進み、守り、多くの感情を抱かせてくれた旅の記憶が一つ一つ克明にフラッシュバックする映像には強く心動かされました。キリトの過去と今、そんな今のあなたを構成するものは世界の隔たりなどない多くの人々の記憶であり、祈りであることを訴える美しいフィルム。全てのレイアウトが決まっていて、だからこそ没入できるのもより感動に拍車をかけていました。教室で一人座るキリトのバックショットからアスナとアリス、三人のバックショットに移ろいでいく構成*1も素敵。タイトルバックの演出も最高で、もはや好きな部分しかないなと。本年屈指のオープニングです。

 

トニカクカワイイ / 恋のうた

f:id:shirooo105:20201223222333j:plainf:id:shirooo105:20201223222345j:plainf:id:shirooo105:20201223222324j:plain

二人の出会い、その記憶を描く序盤から少しずつ感情や言葉を交わしていくようにカットバックし続ける演出がとても決まっています。テクノ的でハキハキとした曲調に合わせるよう音ハメしていくのも魅力。こういった見せ方は以前、「中二病でも恋がしたい!」OPでも見られましたが、それとは意図も映像の運びも違っていて映像表現の奥深さを改めて実感させられました。 どこまでも二人の関係にピントをあてた映像で、このオープニングがあるからこそ本編を観る前に襟を正せる、そんな信頼がこのフィルムにはありました。上記と同じく、こちらもタイトルバックの仕方が最高でしたね。まさしく演出が冴え渡る素晴らしいオープニングだと思います。あとYunomiさんの歌声がかなり好きです。

 

D4DJ First Mix / ぐるぐるDJ TURN!!

f:id:shirooo105:20201223221946j:plainf:id:shirooo105:20201223221847j:plainf:id:shirooo105:20201223224254j:plain

とにかくハイテンションで突き抜けていく楽しさがあったセルルック3Dのオープニング。コミカルさもありつつ、純然と音楽を楽しむ少女たちの姿につい頬が綻んでしまいます。特にその中でも垣間見える4人の関係性や表情芝居の豊かさはもはや筆舌に尽くせず、とにかく良いとしか言いようがありません。誰かが楽しそうにしているとなんだかこちらまで楽しくなってくるあの現象、その代名詞のような映像だと思います。つい首を振りたくなる楽曲も素晴らしいです。前山田健一さんの曲ってなんでこんなに身体に馴染むんでしょうね。

 
魔女の旅々 / リテラチュア

f:id:shirooo105:20201223222614j:plainf:id:shirooo105:20201223223337j:plainf:id:shirooo105:20201223222545j:plain
旅の始まりを節々に予感させてくれる映像美からは、まるでこのオープニングこそがプロローグであるかのような質感を感じさせられました。多くのカットに前景を置き、まるで彼女の旅や世界そのものを覗き込むような構成になっていたのも、そう思えてしまう大きな要因だったのだと思います。世界の広大さと奥ゆき、その豊かさを彩る演出(撮影技術)は本編だけでなく、こちらでも健在。上田さんの綺麗で儚い歌声がイレイナの危うい旅路を彩ってくれていたのも素敵で、とにかくどこまでもこの作品に浸っていたいと思えるオープニングでした。



 

以上が今年のOP10選となります。今年も例年にならい大分悩みましたが、最終的には自分らしい選出になったと思います。本編とはまた違う魅力の詰まった短編アニメーション。時に作品の代名詞のように、時にはまたそれとは違った一面を見せてくれる鏡のように。オープニングって本当に良いものです。最後に、関わられた全ての方々に感謝を。今年も一年、素敵な映像体験を本当にありがとうございました。

*1:話数後半ではカットが差し替えられるが、個人的にはこちらのほうが好き

最近観たアニメの気になったこととか3

f:id:shirooo105:20201216224828g:plain*1

もはや最近とは、という感じではありますが前回の記事から今までの間に観たアニメについて。まずは『虹ヶ咲学園』6話。侑の言葉に璃奈が反応したカット。「璃奈ちゃんのライブが観たい」「今はまだ出来ないことがあってもいいんじゃない?」と言われたことに対して瞬きで応じる芝居づけが本当に素晴らしかったなと。派手な芝居では決してありませんが、感情をうまく表に出せない彼女の心の機微をどうにかして捉える、そこに重きを置くからこそこういう芝居が入るのがとても素敵です。

 

タメツメの効いたタイミング、その言葉が彼女にとっての救いであるからこそより力強い芝居にするため2回瞬きを入れる芝居のコンセプトがあまりに効いています。作画そのものとしての動きの気持ちよさもありますが、ここまでこのカットが印象深いものになっているのはそこに感情が在ると思えるからです。目は口ほどに物を云う、とはよく言ったもので、時に作画、芝居づけ、アニメーションとは台詞以上に雄弁であることを改めて思い知らされました。

f:id:shirooo105:20201216230028g:plain

同上6話。それとは逆に台詞を支える芝居。向き合うことを印象付けるよう横位置でみせる演出も素敵ですが、FIXで二人を撮り続け愛が膝を曲げ璃奈と同じ目線になるまで待つのが圧倒的に良いです。向き合うことへの本質の一つには目線の高さがあると常々思っていますが、まさにそれを裏づけるような芝居づけに感動しました。

f:id:shirooo105:20201216230032g:plain

この2カットも同様*2。繋がりに怯え、内にこもる璃奈と向き合うため数人がしっかり膝を曲げる。曲げる芝居の分だけ感情が寄る。彼女たちの関係が強く、太くなる。特にかすみの場合は言葉をかけるためだけに膝を曲げ、言い終わると再度腰立ちになるのがまた良いなあと。あくまで自然体に見えるのがいいのかも知れませんし、彼女たちの時間間隔をそこで感じ取れるのがいいのかも知れません。アニメーターの方のアドリブか、コンテ指示かどうかはわかりませんが、このシーン通して素晴らしい演出だなと思います。

f:id:shirooo105:20201216231428g:plain

同じく虹ヶ咲8話。山場のシーンのここもワンカットですが素晴らしいなと。かすみの言葉がしずくの心を手ほどきした末の表情芝居。先ほどの璃奈の瞬き芝居とは真逆のより感情的な跳ねるような表情芝居ですが、根底にあるものはきっと同じであったはずです。自分らしくいることに怯えていたしずくが、おそらく今話では初めて自分らしく居れた時間。その一つ一つの瞬間を逃すまいと印象に残るタイミングで描かれているのがめちゃくちゃ良いです。そしてなによりここもワンカット。吹き出して、笑って、泣いて、落ち着くまでをワンカットに収めるからこそこのあとのカットにまた一つ大きな意味が宿るように思えるというか。

 

璃奈もしずくも。自分らしく居ることを肯定するような芝居でその岐路を描かれていたのが本当に好きだなあと思いました。あとこの教室のシーンはレイアウトや撮影がすごく良いです。なんだが『響け!ユーフォニアム2』4話の小川太一さん演出回を思い出しました。高いコントラストの中に清々しさが残る、青さが染みるのが堪らないなと。

f:id:shirooo105:20201216232339g:plain

虹ヶ咲11話。知人と先日話していて話題にもなったんですが、ここのカメラワークがめちゃくちゃ気になって。侑の視線より少し遅めに左へPAN、歩夢をフォローしていく動き。このシーンのカットやレイアウト、各々の動きとかをみるに立ち位置を明確にする意味合いもこのカットにはあったのかなと思うんですが、それ以上にここって歩夢の感情的にもかなり山場だった気もしていて。このあと彼女が侑に言葉で訴えたりする場面ももちろんあるんですが、静かに感情の起伏を訴えていたのはやっぱりここのカットが一番だったかなと。

 

多分それってこのシーン、ひいてはこの話数において一番このカットが動的だと感じたからじゃないかなとは思っていて。「背景が動くとき物語が動く」っていうのは自分の中でかなり大切にしている言葉なんですが、例にもれずこのカットにはそういった風合いがあるように感じてなりませんでした。

f:id:shirooo105:20201216234156g:plain

ブギーポップは笑わない』7話。例えばいこういうカットとか。

f:id:shirooo105:20201216234331g:plain

『SSSS.GRIDMAN』9話。こういうカットとか。

f:id:shirooo105:20201216234414g:plain

『風が強く吹いている』23話。こういうカットとかですかね。いずれも個人的に大好きでずっと胸の奥にしまってある大切な場面ですが、こういったアクションカットの中で背景が動く瞬間、平たく言えば背景動画のカットとかなんですが、それが物語だったり感情的に大きくリンクする瞬間が本当に好きなんです。

 

それこそ、こういうったカットと先ほどの虹ヶ咲11話のカットを同系統の演出・芝居のように語るのはあまりに突飛かなとも思うんですが、自分の中ではやはり「背景が動くとき物語が動く」なんですね。感情が大きくうねる、想いが動く。そういった各々の心情と映像がリンクする瞬間ってやっぱり堪らないなって思います。

f:id:shirooo105:20201216234951g:plain

『神様になった日』7話。ベッドにひなが横たわる瞬間の芝居がめちゃくちゃ良くて感動しました。ベッドの質感表現もさることながら、ひなが小柄であることが如実に伝わってくるスプリングの効いた芝居。ワンテンポ遅れた髪の翻りも含め動き的にも気持良さしかありません。一回大きく跳ねて、次は小さく跳ねる。ひな自身が力を抜いて横たわっているが故に倒れた際のエネルギーが吸収されているように見えるのも自然体な空間(空気感)を感じられて本当に素晴らしいなと思います。野中正幸さんが『私に天使が舞い降りた!』でも同じような芝居を描かれていたのもあり、このカットを観たときにそうかなと思ったんですが、クレジットに名前がなかったのでそれは神のみぞ知るということで。

f:id:shirooo105:20201216235728g:plain

このあとの芝居も良いですね。レイアウトの良さもさることながら、空間や時間を切り取ってくれるような芝居、間の取り方が素敵です。陽太の些細な、普段もしているであろうこなれた頬杖、そしてひなの重心を感じさせる起き上がり。小柄だからか足が上がってしまうのとか。良過ぎてずっと観ていられます。

f:id:shirooo105:20201217000243g:plain

ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN』9話。ここのシャワーシーンがめちゃくちゃ巧いんですが、特に好きなのがこの辺りでした。仕切りにかける指の動き。こちらも些細な、でも確かに自然体だと感じられる芝居です。特段、リアル系の作画が好きとかそういうことはないんですが、物語が進んでいく中で確かに彼/彼女たちがそこに居ると感じられる瞬間ってやっぱり好きなんですよね。そのうちの一つがこういう芝居をみれた瞬間でもあるので、やっぱりこういった芝居は本当に好きです。

 

被写界深度、ピン送りを使った演出、タイミングもめちゃくちゃ決まっていて格好良いです。ピントが合わなくなったあともバルクホルンの驚く表情を見せてくれたり。当たり前なんですが、そういうほんの少しの描写で二人が会話していることを実感できるというか。表情芝居がすごく豊かなシーンでもあったのでなおさら良いなと感じました。

 

全話数、物語も演出も作画も素晴らしいなと思いながらここまで観させてもらっているスト魔女ですし、他のアニメも含め本当はもっとふれたいことがあるのですが、ここまででも相当長くなってしまったので今回はこの辺で。最近かなりアニメ観れているので、なんだか人生が充実してます。アニメって凄いです。掛け値なしに。

 

*1:サムネ参考画像:

f:id:shirooo105:20201216235829j:plain

*2:本来はこの2カットは繋がっていません