話数単位で選ぶ、2021年TVアニメ10選

今年のアニメを振り返る意味も兼ね、今回もこちらの企画に参加させて頂きます。

・2021年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。

・1作品につき上限1話。

・順位は付けない。

集計ブログ様「話数単位で選ぶ、2021年TVアニメ10選」参加サイト一覧

選出基準は例年と同じく特に面白かったもの、感動させて頂いた話を選定させて頂きました。それ以外は上記のルール通り、放映季順、他選出順に他意はありません。敬称略で表記している箇所もありますが、その辺りはご容赦を。

 

 

ゆるキャン△ SEASON2 8話 「ひとりのキャンプ

f:id:shirooo105:20211231081150j:plainf:id:shirooo105:20211231081140j:plain

脚本:田中仁 絵コンテ:金子伸吾 演出:相澤伽月 総作画監督佐々木睦

作画監督:近藤律子、北島勇樹、堤谷典子、遠藤大輔

 

ファーストカットが良い話数はそれだけで印象に残る、というのが個人的な指針の一つになってたりするのですが、この回もそんな例に漏れず素晴らしいカットを冒頭から見せてくれました。なでしこにとっては初めてのソロキャン。その門出を見送るよう彼女の踏み出す足とそのバックショットを捉えていた意味は余りに大きいものであったはずです。トンネルを抜ける、というのもモチーフ的で、新たな世界に飛び立とうとしている彼女を見守る様な風合いさえそこにはありました。中盤まで描かれる各々のフラットな旅の様子、けれどなでしこのことが心配になりキャンプ場まで赴いてしまうリンと桜の感情の動きまで含め、淀みなく流れる物語の行方がとても心地よかったです。"ソロキャン" などではなく、敢えて『ひとりのキャンプ』と題した意味。ひとりで居ることの詫び寂びと、それでも決して独りではないんだなと感じられる温かさ。一人で居るからこその内省的な情緒感まで含め、その全てがラストシーンに詰まっていたと思います。リンからなでしこへ、なでしこからキャンプ場で出会った少女へと "やりたいこと" が繋がっていくのも本当に良いなと。本作の素晴らしさが何一つ余すことなく詰まった挿話だったなと思います。

 

ウマ娘 プリティーダービー Season2 13話 「夢をかける」

f:id:shirooo105:20211231022329j:plainf:id:shirooo105:20211231022340j:plain

脚本:永井真吾 絵コンテ:及川啓、成田巧、小野勝巳

演出:成田巧、及川啓、吉川志我津、にしづきあらた、佃泰佑

総作画監督椛島洋介藤本さとる

作画監督:中島順、ハニュー、福田佳太、桐谷真咲、坂本俊太、辻智子、鍋田香代子

 

かつて競馬に魅せられたきっかけが何だったかというのは朧げにしか覚えていませんが、一番最初に好きになった競走馬の名前は今尚しっかりとこの胸に刻まれています。その名前はトウカイテイオー。愛してやまない、私のヒーローです。だからこそこの作品に関して言えばもはや選択肢などありませんでした。物語の感情曲線や演出的なものを考えるのなら10話を選ぶのが自分の中での筋。それでも、どうしようもない程に抗えないドラマがこの話数にはあったのです。貴方の勇姿をまた観れて良かった。貴女の勇姿を見届けられて本当に嬉しかったのだと。私にとっては "その名" に二人目のヒーローが宿った瞬間。奇跡の復活は、二度差す。本話を観てテレビの前で泣きじゃくったあの日の感動は決して忘れません。

 

SSSS.DYNAZENON 10話 「思い残した記憶って、なに? 」

f:id:shirooo105:20211231021019j:plainf:id:shirooo105:20211231020956j:plain

脚本:長谷川圭一 絵コンテ:五十嵐海 演出:佐竹秀幸 総作画監督:坂本勝 

作画監督:五十嵐海

 

自身の過去と向き合うため精神世界へ飛び込んでいく、という本話における舞台設定が特異的なアニメーション (あるいはアニメーターの個性) と合致し、完璧な世界観を織りなしていた話数。『SSSS.GRIDMAN』9話に続き、以前からファンであった五十嵐海さんのアニメーションやその雰囲気を存分に味わえたこと、またそれがストーリーに対しても強烈に機能していたことが本当に嬉しく、終始ワクワクさせられました。物語的にも夢芽の過去との清算が描かれていたりとターニングポイントとなっていた本話。知恵の輪に仮託された姉妹の関係性がとても素敵で、ようやく外すことが出来たものを再度結び直すまでの過程は、そのまま本作のテーマ性と大よそ同じ輪郭をもって重ねることが出来るのだろうと思います。最終話で夢芽が語った「ずっと消えない跡になるといいね」という言葉。それを言葉ではなく寡黙に、しかし雄弁に先述していたのが今話最大の見せ場だったのでしょう。本年のベストエピソードを一つ選ぶとするなら私はおそらくーー。何度観返しても胸に迫るものがあるエピソードです。

 

のんのんびより のんすとっぷ 10話 「寒くなったりあったかくなったりした

f:id:shirooo105:20211231020739j:plainf:id:shirooo105:20211231020744j:plain

脚本:吉田玲子 絵コンテ:二瓶勇一 演出:福多潤 総作画監督大塚舞

作画監督:井本由紀、石田誠也、鈴木FALCO、竹森由加、原口渉、ビート、松井京介

 

Aパートの思わず吹き出しそうになってしまうような面白さ。冴え渡るひか姉の突っ込みとシュールなコント。どちらかと言えばやっていることは完全にコメディ寄りなんですが、出来るだけ彼女たちが体感している時間感覚をそのまま映像に落とし込んでいたのは、さすがの一言でした。余計にカットを割らないことで作り出される臨場感、リアルタイムさはもはや本作の十八番とも言えますね。一方、Bパートは万感の想いを込めたようなシーンの連続でした。言葉にせずとも溢れ出してしまう感情もあれば、きちんと言葉にすることで伝わる想いもある。ラストカットにおける「今度はちゃんと、さよなら言えたのん」というあのれんげの言葉は、まさしくそういった本話の代名詞足る台詞にすら成り得ていました。そして、その言葉を受けしばし長回しで映され続ける青空はまるできちんと言葉にすることが出来たれんげへの祝福の様にも映っていましたし、あの間尺こそが本話の良さをさらに一段上へと引き上げていたことは、まず間違いありません。そんな風にAパートとBパートの心的な、物語的な寒暖差がサブタイトルでしっかりと表現されていたのも本当に素敵でした。

 

スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 10話 「吟遊詩人が来た 」

f:id:shirooo105:20211231013238g:plainf:id:shirooo105:20211231013331j:plain

脚本:安永豊 絵コンテ:富井ななせ 演出:富井ななせ

総作画監督:後藤圭佑、本多恵美 作画監督:小嶋慶祐、埼玉

 

吟遊詩人としての大成と、自分らしく居ることの両立。そんな岐路が目前に立ちはだかるからこそ生じてしまう迷いと選択の連続、そして失敗。私だってそんな器用に人生を立ち回ることが出来たのならどんなに良かっただろうーーと、きっとククもフラットルテも痛感していたのだろうと思います。けれど迷えたからこそ "今が在る" し、出会えた人たちが居る。だから、今この場所に居る "間違え続けてきたあなたは、決して間違いではないんだよ" と語るストーリーラインが本当にどうしようもなく胸に刺さりました。家族としての描き方をとても大切にしてきた本作らしい見せ方・レイアウトも素晴らしく、ライブシーンに至ってはどこまでも直情的でエモーショナル。ライティングが織りなす感情の起伏を音楽でなだらかにしていく手つきが素晴らしく、グッときました。ラストシーンにおけるフラットルテの芝居と付けPANのカメラワークは本話においてのベストカットでしょう。彼女の感情の機微、その心にまるで映像が同期していくような。そんな質感を観返すたびに強く感じてしまいます。

 

参考記事:『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』10話の演出について - Paradism

 

かげきしょうじょ!! 11話 「4/40」

f:id:shirooo105:20210912032509g:plainf:id:shirooo105:20210912024908j:plain

脚本:森下直 絵コンテ:森田宏幸 演出:安藤貴史 総作画監督:今岡律之、牧孝雄、村木智彦

作画監督:門智昭、度会竜司、塚本歩、住本悦子、茂木海渡、日高真由美

 

オーディションを前にした各々の想いを描いた挿話ですが、そんな多岐に渡る心情を細やかな生活芝居や表情から汲み取り、丁寧に描いていたのがとても素晴らしかったです。特に本作は役者としての物語を描いた作品。だからこそ、彼女たちの一挙手一投足がより一人ひとりの想いに反映されるよう意味を帯びていくし、その芝居の質感がそれぞれの実在感や役者としての才能の有無にまで直結していく。故に、それを作画や演出の側面から高い強度で支え続けていたことが本当に素敵だと思えるのです。それこそ愛のオーディションでの演技に私が心を奪われてしまったのだって、メタ的に、元を正せばその際の芝居作画の秀麗さに見惚れてしまったというそれだけの話。でも、それが良いんですよね。そこに物語が乗る。それがそのまま愛の "役者としての技量に見入ってしまった" ということに結びついていく。むしろそういう瞬間こそを観るために、私はアニメを観ているのかも知れません。

 

参考記事:『かげきしょうじょ!!』11話の表情と芝居について - Paradism

 

小林さんちのメイドラゴンS 10話 「カンナの夏休み(二か国語放送です!?)

f:id:shirooo105:20211231091241j:plainf:id:shirooo105:20211231091130j:plain

脚本:西川昌志 絵コンテ:小川太一 演出:小川太一 総作画監督:丸木宣明

作画監督:引山佳代、熊野誠也

 

「小林と喧嘩した」というカンナのモノローグから始まるのが叙述的で求心力のあった本話。蓋を開けてみればその本質は "帰る場所があることの温かさ" とその大切さにこそありました。何があっても笑顔で受け入れてくれる人が居るということ。そんな家族的な価値観を群像的に、新たな出会いによって改めてカンナが実感するというストーリーラインがとても素敵でした。また本作はある種の生活アニメであるという個人的な主張の裏づけとして提示したくなるBパートの生活描写は言葉にならないほど素晴らしく、この普遍的に思える時間こそが彼女たちの関係性と実在感を揺るぎないものにしていました。雨上がりの正午。バックショットと繋がる手から溢れ出る家族の在り様はまさに京都アニメーションの系譜。夏の質感、カンナの瞳に映る小林の姿まで含め、最高の幕切れだったなと思います。ライティングやレイアウト、カメラワークも冴え渡っていて、大好きな小川太一さんの演出回としてもベストエピソードとして挙げたくなるような挿話。観終える度に深く溜息をついてしまうような。そんな感無量さに満ち溢れていました。

 

SELECTION PROJECT 2話 「明日へ旅立つ少女たち」

f:id:shirooo105:20211120154217j:plainf:id:shirooo105:20211120160516j:plain

脚本:高橋悠也 絵コンテ:原口浩 演出:原口浩 総作画監督:杉田まるみ 

作画監督:澤井駿、納武史、ウクレレ善似郎、長尾圭吾、板倉健

 

オーディションの忙しなさから幾日か開けたある日の出来事。ある種、小休止的な。物語が進んでいく回というよりは物語が一度立ち止まるような雰囲気さえ感じられた本話ですが、そこで描かれていたのは鈴音が自らの想いと覚悟を再度自覚するための分岐路に他なりませんでした。あらゆるものと彼女が向き合い、今の立ち位置を自認していくシークエンスが幾度となく描かれていたのもその証左です。そしてそれは演出的な側面からも同様に表現されていました。向き合うことを強いる横構図。二人で一つのベンチに腰掛ける関係性の発露と、カメラワーク、木漏れ日の質感まで含め、そういった映像の支えがより彼女たちの心情を前面に表出させていたことは、まず間違いないでしょう。それこそ振り返れば本作はずっとそうでしたよね。それは物語的にも、演出的にも。何かあれば向き合い、語り合い、一歩一歩前に進んできた。だからこそ、ここでは本話を選びたかったというか。その足掛けとなり、物語と演出の基盤となった本話がやはりどの話数より印象的で、心に残りました。

 

参考記事:『SELECTION PROJECT』2話の演出、向き合うことについて - Paradism

 

やくならマグカップも 二番窯 17話 「どうしたの?十子先輩」

f:id:shirooo105:20211231084230j:plainf:id:shirooo105:20211231084225j:plain

脚本:荒川稔久 絵コンテ:神谷純、前田薫平、市村仁弥 演出:前田薫

総作画監督:吉岡彩乃 作画監督:金田莉子

 

兼ねてからふれられていた十子先輩と祖父の関係性。それを深堀りし、向き合い、改めて彼女の内面にもう一歩踏み込んでいった情感溢れる回。柔らかい表情や芝居の豊かさも素晴らしく、それらが十子先輩の心情を次第に浮き彫りにしていく過程まで含め、観ていてとても心動かされるものがありました。下校時の川辺の夕景シーンの良さは筆舌に尽くせず、いつもキリッと姿勢正しく居る先輩がどこか童心に帰る瞬間が描かれているのがとても好きでした。撮影の質感も素晴らしく、画面に映える光の塩梅はまさしく彼女の心そのもの。皆でお買い物にいくパートでは一期の主題歌が流れたりとスペシャル感があったことも記憶に強く残る一因となりました。

 

古見さんは、コミュ症です。1話 「喋りたいんです。」

f:id:shirooo105:20211231094957j:plainf:id:shirooo105:20211231094916j:plain

脚本:赤尾でこ 絵コンテ:川越一生 演出:川越一生

総作画監督中嶋敦子 作画監督:早川麻美、近藤瑠衣、小川茜

 

まるで穏やかな青春がこれから始まっていくような質感さえ伴っていたアバンでしたが、その実、本話が提示した物語の馴れ初めはとてもナイーブであり情緒的で、触れれば今にも壊れてしまいそうな感傷性を大きく伴っていました。想いを言葉にすることが出来ない古見さんの性格と、それとは裏腹に向けられる羨望の眼差し。そのギャップに痛みを感じてしまうほどに、後半における彼女の "言葉" が吐露されていくシーンは圧巻でした。けれど、だからこそ只野君が同じように "言葉" を発した*1あの瞬間、古見さんは喜びや驚きが入り混じった言い知れぬ感情を抱いたのだと思います。時折り起こる光のハレーションはそんな彼女の感情そのものだったのでしょう。序盤は零れ落ちる涙の様にも見えたチョークの粉が、二人の会話を祝福する桜の花弁のように見えてくる変遷も素晴らしく、あの空間で起こり描かれるすべての事象がもはや古見さんの感情に沿っているとまで思えたことが、なんだかとても嬉しかったです。OPへの入りも完璧で、あれがあって初めて完成する挿話といっても過言ではないでしょう。コメディタッチのパートも濃すぎずあっさりし過ぎずと、とても良い塩梅。もうこのままこの物語が終わってしまっても良いと思えたほどに、衝撃と感動を受けた挿話でした。

 

 

以上が、本年度選出した挿話になります。

 

今年もかなり悩みましたが、最終的には自分らしい選択ができたように感じています。どの話数も自信をもって大好きですと言い切れる挿話ばかりです。今年も本当に多くの素敵な作品に出会えました。関わったすべての制作スタッフ・関係者の皆様に大きな感謝を。本当にありがとうございました。来年もたくさんの素敵なアニメとの出会いがあることを願いつつ。また一年、健やかなアニメライフを送ることができればいいなと思います。

*1:チョークで黒板に音を立てた

テレビアニメED10選 2021

今年もこの企画に参加させて頂きます。放映季順、他順不同、他意はありません。敬称略含む。視聴した作品からのみの選出で、選出基準はいつもと同様 「とにかく好きなED」 です。

 

約束のネバーランド Season2 / 魔法

f:id:shirooo105:20211230013952j:plainf:id:shirooo105:20211230013956j:plainf:id:shirooo105:20211230013943g:plain

旅をするムジカとソンジュの日々の営みが美しいものであることを謳うようなエンディングフィルム。本編とは違いそこに描かれていたのは彩鮮やかな世界の在り様でした。どこか刹那的で、ふれれば消えてしまいそうな質感を伴いながらではありますが、残酷な世の理(ことわり)の中でそれでも生きていくことを後押ししてくれるような風合いを感じられたのは、本作を視聴していく中である種大きな支えにすらなっていたと思います。鬼であろうと、人であろうと。生きている。それを克明に記していた足元のカット、その靡きの作画と振り向き芝居の感傷性には未だ言い知れぬ感情を抱いています。それだけでも絵になる絵画的なタッチのBGやライティングも素晴らしく、定期的に観返したくなるエンディングです。楽曲も透明感があり、素敵でした。

 

参考記事:『約束のネバーランド season2』のEDについて - Paradism

 

ゆるキャン△ SEASON2 / はるのとなり

f:id:shirooo105:20211230014435j:plainf:id:shirooo105:20211230014504j:plainf:id:shirooo105:20211230014510j:plain

日が暮れ、家路につく。ただそれだけの風景を描いているに過ぎないエンディングですが、そこに本作のテーマ性が内包されているからこそ、きっとこんなにも感傷的になれてしまうのでしょう。日々の生活の中で私たちも普遍的にふれていたはずの行為。ですがその中にこそ季節を感じることの出来る幾つもの景色があり、出来事があったりする。例えばそれは陽の浅い冬だからこそ眺めることが出来る夕刻の夜空であったり、浮かぶ吐息の白さであったり、透き通るような空気の質感であったり。それをとても自覚的に、けれどこの世界で生きるなでしこたちにとってはどこか無自覚的に描いてくれているのが本当に素敵だったなと思います。離れている場所で同じ夜空を見上げるというのも良いですね。どこか一期5話を思い出したりもしました。空の表情の多さにも魅了されたり、あとはもう佐々木恵梨さんの曲が本当に好きなんだよなとか。『ふゆびより』に続き、特に今の季節はたくさん聴いてしまいます。

 

さよなら私のクラマー / 悔しいことは蹴っ飛ばせ

f:id:shirooo105:20211230015329j:plainf:id:shirooo105:20211230015308j:plainf:id:shirooo105:20211230015301g:plain

ただ直向きに好きなものと向き合ってきた少女たちの、その青春性の一片を感じられることに毎話とてもグッとさせられました。もちろん本作が取り扱うサッカーという競技に留まらず、どんなものでもそれは同じなのでしょう。それでも彼女たちには選んだものが在る。幾つもの服装に身を纏っていく希の、その最後がかのユニフォームであったことはどこまでも彼女がサッカーというスポーツを愛していたことの証左にすらなり得ていたはずです。差し込まれるサッカーの競技カットではロトスコープを用いたようなリアル度合いの高い作画。これがもう本当に堪らないというか、まさしく月日を費やしそこに賭けてきたからこそ得られる洗練された動きなんですよね。作画的な快楽ももちろんありますが、それ以上に想いだったりなにかしら宿るものがある様に感じられるというのは、やはりとても素晴らしいなと思います。

 

ゴジラ S.P<シンギュラポイント> / 青い

f:id:shirooo105:20211230025545j:plainf:id:shirooo105:20211230025916j:plainf:id:shirooo105:20211230025649g:plain

少しさばさばした感じの、けれどその中に強く残る少女性と可愛らしさ。一つ一つの芝居が彼女という人の人間性を表しているようで、好きだったなあと。本編では恐怖の対象としても描かれていた怪獣たちですが、銘からすればそれと同時に興味の対象でもあって。だからこそ若干、可愛らしくマスコット的な風合いで怪獣たちが描かれていたりするのがなんだかとても良いなと思ったりしました。バンドテイストの楽曲も最高。あとはやはり鈴木典光さんの作画の素晴らしさでしょうか。ありふれた言い方をすれば、奥行きがあり、実在感があり、それでいて人間味のある人物作画。エフェクトは至極。どこを切り取っても一枚の絵としての強さがある。ここに関しては詳しい方がどこかできっと語ってくれているでしょうから、多くは語りませんが。堪りませんよね。

 

シャドーハウス / ないない

f:id:shirooo105:20211230015755j:plainf:id:shirooo105:20211230015746j:plainf:id:shirooo105:20211230015807j:plain

ダークな雰囲気もありつつ、音楽の楽しさ、自由さを散りばめたような楽曲。だからこそ映像もこれだけテクニカルなことが出来るというか。一音一音へのアプローチがとても面白く秀逸で、毎回このエンディングを観るのがとても楽しみでした。シャドーと生き人形たちの関係性を暗示するような見せ方、世界観の反転など作品の根幹にふれるようなモチーフも多く、話が進むにつれ少しずつ謎が解けていくのもとても良かったです。ライティングも良く、フィルム全体の質感が凄く自分好みだったなと思います。

 

ぼくたちのリメイク / 可能性

f:id:shirooo105:20211230020436j:plainf:id:shirooo105:20211230020628j:plainf:id:shirooo105:20211230020510g:plain

恭也の中に残る想い出、映像が流れだすように始まるフィルムロール。部屋のBGなどが次々に映し出されるのはどこか一昔前の美少女ゲームオープニングやPVの風合いを感じさせますが、きっとそれは彼が歩んできた道のりを今一度刻み込むためでもあったのでしょう。四季が描かれていたのはその証左でしょうし、亜貴たち3人をカメラで追いかける様なファインダー越しのカットも、そういった演出ととても地続きなのだと思います。くわえて少女性を強く意識させられるような可愛らしく、まるっとしたタッチの人物デザイン・作画が本当に大好きでした。個人的には瞬きの芝居・作画のタイミングがツボ。コンテ演出作監など手掛けた市松模様さんって、一体どなたなんでしょうね。

 

かげきしょうじょ!! / 星の旅人 etc...

f:id:shirooo105:20211230021252j:plainf:id:shirooo105:20211230021257j:plainf:id:shirooo105:20211230021302j:plain

役者として青春を捧げる少女たちの力強さ、しなやかさ、秀麗さ。その全てがこのフィルムに詰まっていると言っても過言ではないでしょう。楽曲のテンション感も合わさり、きびきびと歩く芝居、スカートの靡きすらも凛々しく映ります。絵の秀麗さは言わずもがな。観ているだけ、聴いているだけで胸が熱くなるエンディングです。加えて、その回の主役を担った少女の名が毎話トップクレジットとなり、楽曲の歌唱を務めるという徹底ぶりには感動すら覚えました。歌詞もその人の感情に肉薄したものとなったりと、どこまでも物語の延長上にこのエンディングがあったことが凄く嬉しく、頼しかったです。毎話幕切れとともにこの楽曲のイントロが流れると背筋を伸ばしてしまうような、そんな緊張感さえありました。

 

真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました / みんなおなじ

f:id:shirooo105:20211230022317j:plainf:id:shirooo105:20211230022225j:plainf:id:shirooo105:20211230022239j:plain

爽やかなイントロと早朝の風景に心を鷲掴みにされてしまったエンディング。戦乱の世の中であっても人々は暮らしていくし、細やかでも穏やかな時間を過ごしていたりする。そんな当たり前の風景を本編から地続きに、けれどさらに美しく切り取り提示してくれたことがとても沁みました。ラストカットでは落ち切った砂時計が映り「これひっくり返してくれたらすごく良いな」などと考えていたのも束の間、まさしくその芝居が入った時には少し泣いてしまいそうになりました。刹那的ではなく、この風景がいつまでも続いていくと思えるような。そんな未来を想像させてくれる映像だったことが何より大好きです。余談ですが、このエンディングが切っ掛けでJyochoさんの曲をディグるようになったりしています。

 

SELECTION PROJECT / Only one yell

f:id:shirooo105:20211230021941j:plainf:id:shirooo105:20211230021705j:plainf:id:shirooo105:20211230021721g:plain

ほんのり香るシティポップテイスト。ですが楽曲はどちらかと言えば壮大さもあり、絵の美しさと絶妙にマッチしているのが大好きなエンディングです。可能性に満ち溢れた少女たちが関係を築き、足跡を残し、何者かになっていく物語。girls be ambitious。それをグッと凝縮したようなフィルムでしたし、真っ白な衣装、透き通るような青空はまさしくその代名詞だったのだと思います。BGも作画で描かれているようで、画面の統一感、色合いも類い稀さがあり抜群です。衣装のデザインも少しづつ違って "個" を意識させられるのがとても素敵。けれど回ごとに違いがあったサビ前での手を伸ばす芝居、人物は最終回で一つに。皆でここまで歩んできたことを強調する演出が感動的でした。

 

古見さんは、コミュ症です。 / ヒカレイノチ

f:id:shirooo105:20211230025422j:plainf:id:shirooo105:20211230104451j:plainf:id:shirooo105:20211230025439j:plain

孤独と焦燥。過去の古見さんを描きつつ、今に至るまでの一歩を描き出していたのがとてもエモーショナルで素晴らしかったなと思います。走る古見さんを描くというのはオープニングからも繋がっていて、彼女の心が身体を追い越していく様をまざまざと見せつけられているようでグッと胸が締めつけられます。教室の扉、その一線を跨ぐ瞬間を捉えるために真俯瞰で撮られたカットは特に素晴らしかったですね。回を経るごとに友達が増えていくのは粋な計らい。それとこれは憶測ですが、オープンエンドともに古見さんの幸福を願う人たちがそれぞれを手掛けた感触が各々のフィルムに残っていて、なんだかこちらまで幸せになってしまいました。映像に体温が残っているというか。古見さん、愛されてますね。

 

以上が今年のED10選となります。OPに引き続き今年はすんなり決まったような気がしています。終わってみれば例年通り、自分の好きが詰まった選出になりました。本編とはまた違う魅力の詰まった短編アニメーション。それでいて物語により深くまで潜らせてくれるものがあったり、楽しさを詰め込んだものがあったりと、たくさんの感情をもたらしてくれるエンディングって本当に素敵だなと改めて。最後に、関わられた全ての方々に感謝を。今年も一年、素敵な映像体験を本当にありがとうございました。

テレビアニメOP10選 2021

今年もこの企画に参加させて頂きます。放映季順、その他順不同、他意はありません。敬称略含む。視聴した作品からのみの選出で、選出基準はいつもと同様 「とにかく好きなOP」 です。

 

ワンダーエッグ・プライオリティ / 巣立ちの歌

f:id:shirooo105:20211228103337j:plainf:id:shirooo105:20211228103347j:plainf:id:shirooo105:20211228103329j:plain

誕生と卒業をモチーフにしたようなオープニング。楽曲そのものの感傷性に加え、空の青さや各々の日常風景をただ描くことに執着していたことがとても好みであり、本作にとっては大きな意味があったのだろうと思います。それこそ街を歩くアイとすれ違うねいる達の様子からは、どこかこれが本編を終えた後の世界であるかのようにも感じさせられてしまいます。出会いと別れ。けれど、その中で培い芽生えた感情や想いは "あなたにとっての真実" となり、糧となっていく。そんな本作のテーマ性を十二分に凝縮した映像だったのではないでしょうか。また歩道橋の上、アイが見た景色の美しさがどんなものであったのかを一切描いていなかったのが、個人的にはツボでした。その美しさはアイ自身の心の内にのみ存在するんだなとか。そういうの、堪らないですよね。

 

ウマ娘 プリティーダービー Season 2 / ユメヲカケル!

f:id:shirooo105:20211228093945j:plainf:id:shirooo105:20211228093958j:plainf:id:shirooo105:20211228094003j:plain

ウマ娘らしいわちゃわちゃした感じもありつつ、本作がとても大切にしていたであろう物語の根幹、そしてその根幹足る歴史への敬意を今回もまた感じ取れたことになにより胸を熱くさせられました。一期に引き続き二期でも史実を踏襲したレースシーンが描かれていたりと、ウマ娘という作品が抱く競馬愛には一片の陰りもありません。本編でも重きを置かれたトウカイテイオーメジロマックイーンの物語を主とした映像構成でしたが、ターフを駆ける二人の姿にはついぞ感傷的になってしまいます。些細な芝居、表情の一つ一つも素敵で、特にサビの「ほら!」の部分にインサートされる少女たちの幼気な笑顔が大好きでした。

 

ホリミヤ / 色香水

f:id:shirooo105:20211228095518j:plainf:id:shirooo105:20211228095348j:plainf:id:shirooo105:20211228095339j:plain

振り返れば、本編最終話でも描かれたような宮村たちが出会わなかった世界の可能性をこのオープニングでは示唆していたのかも知れません。フレームによって隔たれる各々の姿、季節感のずれはそれこそほんの些細な擦れ違いや思い違いで彼らが出会えていなかったことを示唆しているようにも感じられます。枠線をあみだくじの様に移動するテロップはギミック的に面白くもありますが、今思えばそんな偶発的で奇跡的な出会いをオブラートに包み描いていたのかも知れません。もちろん宮村が抱いていた孤独感への寄り添い方が冴え渡っていたように、群像的にそれぞれの想いをフレーム内に重ねていたのも素敵でした。しっとりとした楽曲に合う内省的な映像。石浜さんの仕事として観ても近年の中では一番好きなオープニングだったなと思います。

 

美少年探偵団 / Shake & Shake

f:id:shirooo105:20211228101151j:plainf:id:shirooo105:20211228101158j:plainf:id:shirooo105:20211229185816g:plain

梅津さんがディレクターを務めたオープンエンドとしては『それでも町は廻っている』に迫る最高の映像体験でした。あらゆる見せ方、芝居の置き方が本当にツボですべてのカットに堪らなさを感じてしまうほどの良さに満ち溢れています。また本編ではキーポイントともなる眉美の瞳に寄せた演出が多く見られたのも素敵で、楽しさや賑やかさの中にとても物語的な、彼女自身のパーソナルな描写が散りばめられていたのが好きだなと思える大きな要因でもありました。"美しさ" を語るこの物語らしいスマートさもありつつ、宇宙飛行士への夢を抱きながら、探偵団へ入ることで新たな夢を模索する彼女の軌跡を踏襲する様なドラマチックな見せ方もある。本当に無限に好きという気持ちが湧き出てきてしまうフィルムだったなと思います。あとこれは余談ですが、眉美が振り向くカット、2回で終わらず3回目まで入るのが個人的にめちゃくちゃツボです。

 

死神坊ちゃんと黒メイド / 満月とシルエットの夜

f:id:shirooo105:20211228100317j:plainf:id:shirooo105:20211228100329j:plainf:id:shirooo105:20211228100322j:plain

もう、掛け合いのように曲中で歌い上げられていることが全てなのだろうと思います。触れ合いたいけど触れ合えない。けれど確かに "ふれ合えている" ものがある。アリスと坊ちゃん二人の関係性と愛情の深さを強く感じ取れるオープニングであったことがなによりも嬉しかったです。時折り描かれたリップシンクもとてもよいものでした。ポップテイストな楽曲の音を意識したような遊び心に溢れる見せ方、テロップ芸も面白く、感傷に満ちた本編とは一味違う高揚感を存分に感じられました。バックショットの美しさはこの作品の強みでもありますね。二人の幸せを切に願わずにはいられなくなります。
 

小林さんちのメイドラゴンS / 愛のシュプリーム!

f:id:shirooo105:20211229153541j:plainf:id:shirooo105:20211229153642j:plainf:id:shirooo105:20211229153557g:plain

冒頭から「セルフオマージュだ!」と石原立也節を強く感じさせてもらえたあの胸の高鳴りは今でも鮮明に思い出すことが出来ます。楽曲を手掛けたfhánaのMVをオマージュしたであろう振り付けも含め、ちょっと面白いポージングがふんだんに盛り込まれているのがらしさもあり楽しくて。そんな中にトールや小林さんたちの感情的な部分もしっかりと置いていき、彼女たちの心を少しでも掬い上げようとしていることが伝わってくる演出の手つきが本当に素敵だなと思います。最後はしっとりとした夕景のシーンに時間を割いていたのも魅力。回転し、舞い降りてきた小林さんたち二人に向け、「おかえり」と言わんばかりの横PANとカンナたちの表情が映されるのがとても好きでした。

 

先輩がうざい後輩の話 / アノーイング!さんさんウィーク!

f:id:shirooo105:20211228101832j:plainf:id:shirooo105:20211021005513j:plainf:id:shirooo105:20211021085512g:plain

楽曲に溢れるフレーズの数々、音の一つ一つを生かし緻密に組み立てられた映像と音楽のうえで、強烈に彼女たちの実在感を感じさせてもらえるのがこのフィルム最大の魅力です。歌詞ハメなど含め遊び心も十分に溢れているオープニングではありますが、レイヤーの最前面にはまず物語があって、この世界があって、登場人物たちの存在がある。それこそこの映像を五十嵐ちゃんたちが主導して制作したようについ感じてしまう瞬間があるのも、きっとそういった世界観への注力による賜物なのだと思います。楽曲そのものも凄く素敵で、アップテンポのテンション感には、さあ始まるぞと毎回襟を正させてもらえたような気がしています。「Les’t go 社会人!」のフレーズはなんだか明日への気力にもなったりしましたね。竹下さん演出のオープンエンドとしても嬉しくなれる地続き感があったりして、色々な意味で心から良いなあと思えるオープニングでした。

 

参考記事:『先輩がうざい後輩の話』OP、竹下良平さんの演出について - Paradism

 

SELECTION PROJECT / Glorious Days

f:id:shirooo105:20211228104102j:plainf:id:shirooo105:20211228104226j:plainf:id:shirooo105:20211229210048g:plain

イントロやAメロが狂おしいほど好き、という楽曲面への信頼もありつつ、そんな楽曲に対しても決して引けを取らない力強い映像と物語の在り方がとても素晴らしかったです。各地から集まった少女たちの決意と、時に笑い、時には泣きながら次第に親交を深めていった彼女たちの軌跡。それはまさしく、曲題通りの "美しき日々" だったのだろうと思えるまでがこのフィルムの真骨頂です。天沢灯が振り向くカットから、鈴音と玲那の繋ぐ手へとオーバーラップしていくのが本当に好きで、このカットの繋ぎにこそ本作の主題って全部詰め込まれているよなとさえ思えてしまうのもなんだか好きなポイントです。加えて、自分は平山寛菜さんの描かれる絵や表情が凄く好きなので、それをこんなにも多く見させてもらえることがもう喜びでしかなかったりしますね。

 
86‐エイティシックス‐ / 境界線

f:id:shirooo105:20211228094639j:plainf:id:shirooo105:20211228094619j:plainf:id:shirooo105:20211228094646g:plain

ミリーゼ少佐の先を行き、仲間を追いかける側から追いかけられる側へと至ったシンが、それでも心象風景の中では少佐を追いかけ続けているようにも感じられてしまう映像の感傷性がとても強く刺さりました。少佐の姿がほぼバックショットでしか映らないのも効果的で、物語的にもどこか彼女の姿を探してしまう我々の視座をそこへと投影しているように感じられました。他の86のメンバーのものも含め、シンのT.Uカットは作画的にも感情的にもあまりに抜群で、毎話観る度にここのカットでグッとさせられてしまいます。戦いに赴く身しか持たない者たちの所在と行方。その危うさをこうも映像に落とし込まれれば感動しないはずがないのです。タイトルバックの出し方はおそらく今年一でしょう。少なくとも私が観てきた中ではそうです。その数列に込められたものの多さというか。視線が釘付けになる、というのはこういう時に使うのでしょうね。歌詞の強さにも唸らされるものがあり、聞き入ってしまうオープニングでもありました。

 

古見さんは、コミュ症です。 / シンデレラ

f:id:shirooo105:20211229160003j:plainf:id:shirooo105:20211229160022j:plainf:id:shirooo105:20211229190619j:plain

1話の終わりにこのオープニングが流れた時のあの感動は、二度と忘れないと思います。古見さんの感情やパーソナルな部分にこれでもかと言うほど寄り添いながら、彼女の未来にありったけの祈りと祝福を捧げるような映像美。情感を溜めるところでは溜め、楽曲のドライブ感に合わせグッと加速し、解放していく。本編では一歩一歩、少しずつ進んでいく古見さんですが、この場所でくらい彼女にはどこまでも駆け抜けていって欲しいのだと、そんな願いを感じずにはいられないフィルムになっていたと思います。ある種、序盤から見れば未来視に近いところもあったり。そんな予感に満ち溢れているからこそこんなにも嬉しくなれるし、より本編への没入感が増すのだろうなと感じたりしました。シティポップテイストな絵の映え感も凄く好きです。曲も大好き。まさしくマイオールタイムベストだと言いたくなるようなオープニングでした。

 

以上が今年のOP10選となります。今年はだいぶすんなり選べた感触があります。2つほど最後まで悩んでいましたが、最終的には自分で納得の出来る選出になったように感じています。本編とはまた違う魅力の詰まった短編アニメーション。時に作品の代名詞のように、時にはまたそれとは違った一面を見せてくれる鏡にもなる。オープニングって本当に良いものだなあと、改めて思いました。最後に、関わられた全ての方々に感謝を。今年も一年、素敵な映像体験を本当にありがとうございました。