『サイバーパンク:エッジランナーズ』と"語り手"について

幾人かの友人達に「観てみて」と言われていた『サイバーパンク:エッジランナーズ』をようやく観ました。一言で言えば後味に苦みのある耐え難き心境を迎えているわけなんですが、そんな今の感情が落ち着きを取り戻し凪いでしまう前に一度文字に起こしておき…

アニメにおける瞬きと感情、その芝居について

「目は口ほどにものを言う」とはよく言ったもので、それは物語を描くアニメーションの世界においても決して例外ではありません。言葉はなくとも表情や仕草で伝わるコミュニケーションの妙。それをより良く体現しているのが瞳の存在であり、それを取り巻く目…

ドローン撮影とアイドルMV、それとアニメについて

先日、現在六本木にて開催されている櫻坂46の展示会『新せ界』にようやく行くことが出来ました。各衣装やCDジャケット、MVに至るまであらゆるコンセプトについて触れられ、それが形態を持って彼女たちの成長過程と共に記されたまさに圧巻の展示会でした。展…

僕と作画と

アニメを観なくなってから大よそ3か月くらい。友人から借りた劇場版アイカツ!のBDを観たりはしましたが、それを除けば自主的にTVアニメ等をこんなにも長い間観なかったのはおそらく10年以上前だと思います。それは私がアニメを観始める前の時代です。深夜の…

アニメと自動販売機、その風情について

『ぼっち・ざ・ろっく!』5話のワンシーンについて - Paradism 先日更新した記事でもふれた『ぼっち・ざ・ろっく!』5話における自動販売機前のシーン。少女の心奥底に隠された感情の一片 (ひとひら) を照らし、その輪郭を浮き彫りにする舞台装置として自販…

『ぼっち・ざ・ろっく!』5話のワンシーンについて

「成長って正直なところよく分からない」。そんなひとりのモノローグと一連の流れから差し掛かるワンシーン。住宅街であろう道に煌めく看板と自動販売機の中を淡々と歩くぼっちの姿は、そんな変わり始めていく景色の中で心だけが追いついていかないその心境…

最近観たアニメの気になったこととか12

『明日ちゃんのセーラー服』7話。体育館の下窓から零れる光がフットライトの替わりとなって二人を照らしていたのが印象的でした。逢瀬。密会。秘密の共有。そもそもが各々の秘密を知り合う構成の話ではあっただけに、こういうカットが描かれたのは納得しかな…

『ぼっち・ざ・ろっく!』1話の演出について

ファーストシーンにおけるままならさ、孤独感、色褪せた世界の質感。そこへひとりの語りも合わさることで、このシーンから彼女の出自や当時の感情を知るのはかなり容易なことであったように思います。"独り" であることへの鬱屈とした想い。それを多角的な方…

22/7『曇り空の向こうは晴れている』MVについて

「死にたかった」という強烈なワードが印象に残りこびりつく、22/7の新曲『曇り空の向こうは晴れている 』 。しかし、その実情は "いつかはそこへ光が指す" ことを鮮明に記した生きるための道標 (みちしるべ) そのものでした。何処かで誰かが抱えているであ…

『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会2期』2話のワンシーンについて

嵐珠のスクールアイドルに対する姿勢を介し、改めて彼女のパーソナルな部分やスクールアイドルに対する自分たちの在り方を考え始めるようになったエマたち。アイドルの数だけ答えがある様に、各々の立ち位置や見てきたものの違いから生まれる "それぞれの想…

最近観たアニメの気になったこととか11

『カッコウの許嫁』3話。シーン展開というか、劇伴のつけ方やそれ以前の会話、カットの構成があってのものではあるんですが、やはりここの芝居は本当に素晴らしかったなと思います。劇伴の抑揚に合わせるよう差し込まれるノブを捻るカット、キュッというSEと…

『であいもん』2話、アニメにおけるバックショットとその先に視るものについて

両場面とも2話終盤で描かれたバックショットでしたが、各々が今話の行方を見守る様な質感を持っており、とても感動させられました。まず左のカットについてですが、和 (なごむ) と一果の馴れ初め、関係性を踏まえればとても得心のいくカットだと感じられます…

『明日ちゃんのセーラー服』1話の芝居、その視界に映るものについて

本作の要ともなる存在、セーラー服。作品タイトルとしても使われるそれがどれほどの意味を帯びているのかということを知らしめていたのが本話において描かれた着替えのワンシーンでした。母親から手渡される制服に静かに伸ばされる手と、向けられる視線。大…

最近観たアニメの気になったこととか10

最近と言うよりは、昨年末に観て印象に残ったものについて少し。まず『王様ランキング』9話。ドルーシとヒリングの過去が描かれる回想シーン。ドルーシの台詞にあったようにそれまでは不器用で、どこか子供に対しても高圧的な印象が抜けないヒリングの姿が描…

最近観たアニメの気になったこととか9

*1 『その着せ替え人形は恋をする』5話。五条君が喜多川さんに惹かれ始めていることを示唆するシーン。契機となったのはこれより前に描かれていた喜多川さんがにひっと笑うカットだったと思いますが、個人的により印象に残ったのはこちらのカットでした。当…

話数単位で選ぶ、2021年TVアニメ10選

今年のアニメを振り返る意味も兼ね、今回もこちらの企画に参加させて頂きます。 ・2021年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。 ・1作品につき上限1話。 ・順位は付けない。 集計ブログ様:「話数単位で選ぶ、2021年TVアニメ1…

テレビアニメED10選 2021

今年もこの企画に参加させて頂きます。放映季順、他順不同、他意はありません。敬称略含む。視聴した作品からのみの選出で、選出基準はいつもと同様 「とにかく好きなED」 です。 約束のネバーランド Season2 / 魔法 旅をするムジカとソンジュの日々の営みが美…

テレビアニメOP10選 2021

今年もこの企画に参加させて頂きます。放映季順、その他順不同、他意はありません。敬称略含む。視聴した作品からのみの選出で、選出基準はいつもと同様 「とにかく好きなOP」 です。 ワンダーエッグ・プライオリティ / 巣立ちの歌 誕生と卒業をモチーフにした…

『PEOPLE 1 “魔法の歌”』PVについて

アニメーションから感じる躍動感と感情、それらが総合し伝わってくる生命力。そういった言葉にしてしまえばとても陳腐で漠然とした、けれど確実に心を揺さぶられてしまう瞬間が私はとても好きです。画面の向こう側に居る登場人物たちがその世界の中で身体性…

『SELECTION PROJECT』の演出、向き合うことについて②

本来は先日の記事でまとめて書くつもりだったんですが、2話について書きたいことが多くそれなりの分量になってしまったので記事を分けました。基本は前回書いたことの延長です。ようは真剣な会話をするうえで向き合うことって大切だけど、それを映像からも丁…

『SELECTION PROJECT』2話の演出、向き合うことについて

前回描かれたオーディションから一転、祭りの後の静けさを伴い始まった2話。それぞれがそれぞれの葛藤を抱える状況にあって、それを寡黙に、けれど雄弁に語ってくれるような冒頭の映像の美しさがとても素敵に映りました。青空と逆光。その相反するようで表裏…

『先輩がうざい後輩の話』OP、竹下良平さんの演出について

主題歌の一節、ワンフレーズ毎に映像をはめ込み、組み立てていくような構成。楽曲の力や楽しさはもちろんありますが、それを何倍にも膨れ上がらせてくれる映像の華やかさとテンションの高さは、何だかそれだけで気持ちを昂らせてくれる良さで溢れていました…

『かげきしょうじょ!!』11話の表情と芝居について

終始芝居が良かった11話。中でも特に気になったカット、シーンについて。まずはAパート頭のお風呂のシーンですが、瞬間瞬間でドキッとするような端正な顔立ちが描かれていたのがとても良いなと思いました。元々のデザインが可愛らしく良い意味で情報量が多く…

最近観たアニメの気になったこととか8

『女神寮の寮母くん。』5話。傘を広げたら内側に夜空と月が描かれているっていうのがすごく良いなと思いました。月のパワーが満ちていないと遠出できないせれねに対する粋な計らい。なんだか『sola』を思い出すエピソードでもあったなと。あと貰った傘を広げ…

最近観たアニメの気になったこととか7

*1 『小林さんちのメイドラゴン』6話。才川のコミカルな性格と現実に根づいた芝居がとても好きでした。後ろに倒れてからそのまま足を上げた状態でカットが終わってもいいような場面ですが、ベンチへ足先が下りるところまでしっかりと描いていたのがツボで、…

映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』について

先週、鑑賞した『サイダーのように言葉が湧き上がる』。久しく素晴らしいボーイミーツガールを観たという感慨に浸れた本作ですが、その中で何よりも先ず良いなあと唸らされたのが、独自の世界観を獲得していたシティポップテイストのある背景美術でした。ビ…

最近観たアニメの気になったこととか6

『死神坊ちゃんと黒メイド』2話。魔女に呪いをかけられ他者に触れることが出来なくなった坊ちゃん*1が、愛する人を想い月をみる、というシチュエーションがとても儚く素敵だったなと。想い人であるアリスの存在と月が重なるような感覚を覚えるカット。近く…

『ラブライブ!スーパースター!!』1話とヘッドフォン、その演出について

全体的な映像のリッチさ、街の景観、見栄えなどがとても良く、観ていてとてもワクワクさせられた本作でしたが、そんな中で個人的に気になってしまったのが主人公・澁谷かのんが持つヘッドフォンの存在でした。なぜなら、本話においてはそのヘッドフォンを装…

『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』10話の演出について

この作品においては通底して描かれてきた "家族観"。それは今回のエピソードでも変わらず示されており、どちらかと言えばフラットな画面で構成されたAパート、Bパートの冒頭でもそれは強く感じることができました。彼女たちを一つの画面に収める巧みなレイア…

『小林さんちのメイドラゴンS』1話の演出、空の色について

全体の演出について、というよりは個人的に気になったポイントについて。まずはトールとイルルのアクション終わり、夕景のシーンについてですが、時間経過をしっかりと描いた上でその変遷がトール自身の感傷性に触れていく流れがとても素敵でした。それに加…